讃美歌280番 「わが身ののぞみは ただ主にかかれり、」

■作詞者エドワード・モート(Edward Mote、1797-1874)はロンドンで生まれ、少年時代から悪の道にふみ込んでいたが、ある牧師の影響を受けて回心しバプテスト教会の会員になった。しばらく職人として働いた後、バプテスト派の牧師となり、26年間、牧会に勤めた。

この讃美歌の作詞の経緯については、次のように書かれている。(CyberHymnal)

「ある日、“キリストの固い岩にわたしは立とう、他はすべて沈んでいく砂のようだ――On Christ the solid Rock I stand、 All other ground is sinking sand。”のコーラスが聞こえてきて、すぐにこの讃美歌の歌詞の数行を作った。次の日曜日の集会に、ある教会員の夫人が病床にあり、見舞って欲しいと頼まれ、その教会員の家に見舞いに行った。その教会員は集会に出向く前に、何時も讃美歌を歌い、聖句を読み、祈りをして出かけるのだと言って、讃美歌を探したが見つからなかった。そこで、先ほど作った讃美歌をポケットから取り出し、教会員と一緒に歌った。病床の夫人は非常に喜び、その讃美歌のコピーが欲しいと言ったので、家に帰ってその続きを作り病床の夫人に届けた・・・・」とのことで、病床の夫人に大きな慰めとなったとのことである。

■歌詞の引用聖句は、「讃美歌」では、コロサイの信徒への手紙1章27節となっている。「この秘められた計画が異邦人にとってどれほど栄光に満ちたものであるかを、神は彼らに知らせようとされました。その計画とは、あなたがたの内におられるキリスト、栄光の希望です。」

一方,CyberHymnalでの引用聖句はマタイによる福音書7章25-26節である。「雨が降り、川があふれ風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。」讃美歌略解では“邦訳は曲に合わせるため、今回大々的に改変された。”とあるが、日本語訳が英語の原歌詩から大きく異なっているとは思えない。

■作曲者William Batchelder Bradbury1816-1868)は、米国においてLowell Mason1792-1872)についでポピュラーな賛美歌作曲家である。そして,賛美歌を中心とした無料の歌唱学校を作って子供の合唱の指導を行い、米国の公立学校(パブリック・スクール)での唱歌の授業を設ける一つの動機となり、又、米国における音楽学校の設立の機縁を作ったことでも有名である。若くして音楽の才に恵まれ,又、上述のLowell Masonというよき指導者にも恵まれ、讃美歌の作曲の分野だけに留まらず、讃美歌集の編集出版、ピアノの製造など音楽全般の分野で大きな貢献をなした。

ボストンでの合唱指導の後、ニューヨークに移り、バプテスト教会のオルガニストを勤め、1847年より2年間、欧州(ドイツ、英国)に留学、帰国後、再びニューヨークで歌唱の指導,歌唱教師の指導,歌曲集の出版等に尽力した。生涯で59冊の讃美歌集や、その他の歌集を編集、出版し、彼の歌唱学校で1,000人以上の子供を指導した。

単純でしかも旋律が美しい彼の作品は今日でもなおひろく米国人の間で愛唱されている。

■日本基督教団編集の“讃美歌”では、354番「牧主わが主よ、まようわれらを」(Shepherd)、461番「主われをあいす、主は強ければ、」(Jesus love me)など14曲を採用しており、これはLowell Mason25,John Bacchus Dykes1821-1876、英国人)の18曲についで多い。

 

背景のmidiは新たに作成しました。

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