作品10 「利尻富士遠望」 A Dairy Farm with Mt. Rishiri in the Background F30号

  日本海側を稚内に向けて北上すると、左側前方に独立峰の利尻富士が視界に入る。日本の風景の中で類例をみない「海に浮かぶ山」といってよい。この絵の中の牧舎と利尻山との間には厳然たる日本海が横たわる。この地は一面、ササ地と草地が広がる大酪農地帯であり、白黒斑のホルスタイン牛が短い夏を惜しむように草をはみ、酪農家も冬の乾草の刈り取り調製に忙しい。冬はまさに寒風吹きすさぶ荒涼たる大地に変貌する。この地にとって過ぎゆく夏が一年のうちで最も光り輝く季節と思うのである。

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