閑話休題、コーヒブレイクにしましょう。 ここに掲載したちょっとトリビアでおかしいKiyoの名言(迷言?妄言?)コラムは、「ことば」をテーマにしています。1〜7は労組機関誌に執筆したものです。            

1. ためになる新聞      29. 漢字検定           
2. 「製作」と「制作」のボーダレス 30. 「ついては」「おいては」一考

3. お米の新聞

31. 耳が遠い  
4. 「ヶ」考 32. お米の銘柄名       
5. 遺憾である 33. 2004年上半期心に残る川柳選 
6. スチュワーデス  34.人は虫         
7.  35.牛は万物の代表 
8. 悪  文 36.嫌われた漢字
9.  悪魔のキッス 37.鳥肌がたつ            
10. 横文字  38.七つの子          
11. ね こ  39.2004年下半期心に残る川柳選 
12.外来語言い換え    40.キヨシです 
13..脂肪牛?、死亡牛? 41.やかん
14. ウズラのトリビア        42.踊り字
15. 馬 鹿          43.「断つ」と「絶つ」          
16. 踏み込み式牛舎   44.煙草      
17.  役不足  45. 沈魚落雁 
18.  万障繰り合わせの上   46.中国牛市
19.  以 上           47.人気がブレイク?
20. 心に残るトリビア英単語(その1)     abandon(アバンドン)  48.グンジさんの採点
21心に残るトリビア英単語(その2)  shrimp(シュリンプ  49.ワイルドきよちゃん  
22. あいさつは川柳にしたら送別会  50.食糧と食料、給飼と給餌
23. 踊る大選挙戦        51.小学生の牛の絵と作品名 
24. トリビア=ムダ知識?  
25.  いじめにあうコラム     
 26. 交ぜ書き熟語一考(その1)    
 27. 交ぜ書き熟語一考(その2)   
 28. 2003年心に残る川柳選   

      ためになる新聞       1999.11

  10月,娘の中学校の文化祭にでかけた。学級新聞をみる。これがおもしろい。四十すぎの中年男が,人目もはばからずゲラゲラやっていると,何事かと数人の父兄ものぞき込む。そして「クックッ」「へへへ」私の中学時代は,「青春とはなんだ」「これが青春だ」などの青春ドラマが全盛で生徒をぐいぐいひっぱって行く熱血教師が理想像であった。それが今は「金八先生」にみられるように,教師は生徒と同じ目線の親しみやすい友達,仲間,相談相手になることが理想のようである。この学級新聞にもその傾向が読みとれる。生徒は先生を適当に持ち上げたり,茶化したり,先生も怒りもせず適当にあしらったりている。このやりとりがおもしろい。役に立つ記事などないのに,新聞のタイトルが「ためになる新聞」でもこういうおかしさや楽しさはわが組合機関紙にはないような気がする。組合記事一辺倒では限界か。一考を要するところである。目次に戻る

     「製作」と「制作」のボーダレス     1999.11

 11月14日付け某紙朝刊を読む。休刊のお知らせの囲みに「きょう14日は新聞製作を休み・・・」が目に入る。あれ,新聞「製作」は「制作」ではなかったか。辞書類で調べると,製作は「道具や機械などを作ること。一般に工作を含む」に対し,制作は「特に美術品や文学作品などをこしらえること」とある。両方とも「など」が入っているので,仕分けが難しいが,製作は実用的なものを,制作は創作的なものを指しているようだ。機械製作や絵画制作などは間違いようがないが,新聞の場合は,ロール紙を用意し,記事などをいれ,印刷,裁断作業を経て新聞という製品を作るのであれば「製作」であろう。一方,新聞の中には著作権に関わる人の考えや主張,あるいは記事の配置,取り上げ方といった新聞各社各様の創作的要素もあるので「制作」が適してるのではないか。 さらに共同通信社発行の新・記者ハンドブックの「せいさく」を調べる。用例として,新聞,映画は「製作」で,TV番組は「制作」と書いてある。朝刊の表記が誤植でないのは了解できたが,TV番組が「制作」で,映画が「製作」というのは了解できない。気になってしょうがないが,こういう適否不詳の場合は,「こんな漢字も知らないのか」といわれるのを覚悟の上で,「せい作」とした方がいいのかも。目次に戻る

      お米の新聞      1999.12

   昨年11月6日,小3の息子の授業参観に出席した。1クラスの人数が26名,私が小学校時代は40〜45人だったので,少子化の波を実感する。廊下に,米農家を取材して各自作成した「お米の新聞」がはってあった。この記事の表現がおかしくて,またほほえましい。「のこったわらをどうするか」に対し,「牛を育てている所で,フンとこうかんする。そしたら田んぼにいれる。フンはお米のためになり,わらをおいておくばしょがひつようない」見事な資源循環の法則をこれほどわかりやすく述べた例を私は寡聞にして聞かない。「台風がきてお米がたおれたらどうするか」に対し,「風がふいて,それも強い風がふいたら,お米を助けることができないから,強い風はふくにまかせるしかない」米を助けられないなんて,大人ではまねのできない表現である。「虫の食った米はどうするか」に対し,「虫が食っちゃった米は,人間が食べてもだいじょうぶです。朝ごはん,昼ごはん,夕ごはん,ぜんぶ食べちゃえ−」そんなヤケクソにいわれると逆にちょっとこわいぞ。こうしたわかりやすく,明るく,開放感があり,遠慮のない記事は,大人になるほどできなくなる。その結果,労働組合の教宣講座に参加する。 目次に戻る

        「ヶ」考       1999.12

  1ヶ所,1ヶ月という表記はよくみられるが,これは箇の別体として个という字があり,この字の崩し字が「ヶ」と勘違いされて使われた経緯がある。▽現在では読みどおり1か(ヵ)所,1か(ヵ)月と書くのがフォーマル(正しい)であり,全国紙やNHK等−民放のテロップや娯楽週刊誌ほど「ヶ」表記が多いのは興味深い−も後者で統一されている。問題は,「羊ヶ丘」「関ヶ原」「八ヶ岳」などの地名である。また「ヶ」がなくなった地名もある。東京の「世田谷区」は遠い昔「世田ヶ谷区」と表記していた記憶がある。これらの地名も「羊が丘」などと表記するのが私は妥当だと思うのだが,自治体でそのように呼ばせているということで了解しておいたほうが良いであろう。へたに自治体にかくあるべきと問い合わせても「この忙しいのに,あーた一体なんですか」とそこの職員に暇人扱いされそうある。たぶん。 目次に戻る

       遺憾である        2000.1

 官庁・会社用語で代表的なのが,この遺憾という言葉である。不祥事などが生じた時,「遺憾である」といった場合,「不祥事が起こったのは残念だが,私には関係や責任はありません」という語感がある。「おわび」や「ごめんなさい」という本来の意味を感じない。 また遺憾という言葉の特性は,これを使うのが比較的社会的地位の高い人であり,大臣級か大会社の社長級が使うとなんだかキマッテしまうのである。私ごときが「遺憾である」なんていったら,シャレにもならないし,ただただ笑われるだけである。 しかし,これは職場内に限ってであり,家庭の中でこうるさい家人の文句や要求をはぐらかすのにもってこいの言葉でもある。組合用語である「節目節目」と「前広に」を入れて,事例を三つ示すので,今晩からでも実践しよう。「あなたお風呂の掃除してくれた。やってくれなきゃ困るじゃない」ときたら「それははなはだ遺憾である」。「お父さん,子供の勉強みてちょうだい」ときたら「節目節目でみることにする」。「あ−あ,今月も大赤字。何とかしてちょうだい」ときたら「遺憾であり,節目節目で前広に検討する」。 目次に戻る

    スチュワーデス      2000.1

   最近,この語源を知ったが,これをすでに知っている人はかなりの博識である。「stewardess」のstewardは,古くは「atigweard」と書き,「atig」は豚小屋,「weard」は見張り人を意味し,語源は「豚小屋の女性見張り人」となる。古代では家畜管理は重要な仕事であったため,主人を世話する人に転化したそうなのだ。 畜産の仕事をして20有余年,このことを知らなかったのはうかつであり,内心じくじたるものを感じる。そうか,スチュワーデスはこれまでわれわれ客を豚として扱っていたのか。 そうならば,今度,飛行機に乗るときは敬意を表して次のように返事をしよう。「お客様,着席ベルトをお締めくださいませ」「ブーブー」。「お客様,お茶かコーヒーはいかがでしょう」「ブーヒー,ブーヒー」。 目次に戻る

             2000.2

 青春は人生の春にたとえられる。中国の故事によれば,四季をつかさどる神として,青竜(セイリョウ)神は春,朱雀(シュジャク)神は夏,白虎(ビャッコ)神は秋,玄武(ゲンブ)神は冬の神とされている。青春は,春の青竜神にちなんでできたといわれている。これらの神はそれぞれ東・西・南・北を守る神とされ,大相撲の青・白・赤・黒の房を各方向に垂らすのもこの理由による。しかし,この前テレビで大相撲をみていたら,青房が緑房になっていた。とすると青春は緑春か。緑春といわれると春の萌ゆる草地をイメージするが,聞き慣れない分,ちょっと変だなあ。 目次に戻る

    悪  文         2000.5

   中二の娘が国語の模擬試験の結果が悪かったという。成績を見せてもらう。設問中の論説文の出来が悪い。興味がわき読んでみる。あぶら汗がでそうである。文章構造が複雑である。一つの文を2,3度読んでやっと理解できる。次の文を読むと前の文とのつながりがとれない。なんとか最後まで読んだが,最初に何が書いてあったのか忘れる。筆者は何をいいたいのか,何か暗号を解くように精読しないとよく意味ががとれない。文意を考えながら車を運転すると事故でも起こしそうである。そういえば,10代の頃にこうした文章に時々悩まされた遠い記憶がある。「文章はヒトに理解されるように書くことが必要。これは悪文」とやったら,その後,文章題ができないとすべて「これは悪文」といいだして困ると女房から苦情がきた。あわてて「正解をみてその思考過程を研究せよ」と訂正した。だが,白とも黒ともつかない輪郭のはっきりしない抽象画のようで,多義的解釈を許さない,受験者を苦しめる?目的の文章と,時に格闘しなければならないのは,少し気の毒に思う。 目次に戻る

                 悪魔のキッス      2001.4upload

 作物の品種名には魅力的であったり、おもしろいものがある。米では「あきたこまち」とか「ひとめぼれ」とかは、上品でおいしそうである。この前スーパーで「コシヒカリ」を買いに行ったら、思わず「ひとめぼれ」の方を一目惚れして買ってしまった。「どんとこい」なんていう米も聞いたことがあるが、いかにも病気に強そうで、雨風にも倒れない強いイメージではないか。▽過日、花や野菜の通信販売カタログをみていたら、大根で「○△総太り」なんてすごいのがある。「総太り」なんて、うかつに女性の前で言おうものなら、勘違いされて、セクハラ扱いを受けそうである。極めつけは、とうがらしの品種で「悪魔のキッス」なんて言うのがある。おそらくこのとうがらしを食べると、からくて、くちびるがヒリヒリして、まるで悪魔にキスされたように感じるに違いない。▽他にもいろいろあるが、このカタログをみると、下手な漫才よりもおもしろいし、また妙に感心するのである。 目次に戻る

                                      横文字         2001.4upload  

  奇妙な性癖がある。相手があることばを多用したり、話癖があると気になってしょうがなく、その使用頻度を数えたり、わかりにくいことばはその意味に気を取られるのである。以前、某講演で、「あの−」を話の冒頭につける方があり、その数を勘定してしまい、そちらに気を取られ、話の中身の方はさっぱりであった。また「スキーム」という横文字を使い始めた講演者に対し、条件反射的にその使用回数を数え始めたが、「スキ−ム」なんてよくわからないことばなので次第に腹が立ってきた思い出がある。最近「スキーム」は「計画」と日本語でいいましょうとどこかの審議会が公表した。大きなお世話と思う方もいるかもしれぬが、基本的に賛成である。少し難解な横文字の使用は、インテリぽくって、かっこいいのであるが、相手によく話を理解してもらおうと思えば、あまり使ってほしくないと思う。かかる性癖を持つ私にとっては助かるのである。 目次に戻る  

                 ね こ          2001.4upload

 ねこがよく眠るのはねこ好きの方ならご承知のとおりであるが、ねこのねは寝の意味なのだそうである。ねこの古称は「ねこま」といい、これはねこが奈良時代に高麗(こま)を通じて入り、「こま」という名がつき、寝てばかりいるので「ねこま」となり、「ま」は魔に通ずるというのでなくなり、「ねこ」と落ち着いたそうである。動作係数(覚醒時間/睡眠時間)という指標があり、動物種によって決まっている。ヒトで2.0、ねこで0.23といわれている。拾ったわが家のネコも1日18〜20時間は寝ている。このぐらい寝ないと生理的に調子が悪いのだろう。わが職場でも時にねこの話題がでるが、生まれ変わったら飼い猫−野良猫ではない−になりたいというのが一致した意見である。周りに遠慮しない、ストレスを感じさせない自己流の生き方に憧れるからである。 目次に戻る

                外来語の言い換え     2003.9upload 

 国立国語研究所が外来語の言い換えの中間案を発表した(2003年8月)。外来語は官庁の白書から選定したそうである。そういえば官僚は新しい横文字を使い始めるのが多い。ただ初めて使われると、密室で突然スカンクに屁をこかれたように、面食らったり、驚いたりする。ワークショップ(研究集会)は、「働く」と「店」の語彙から、最初は作業着やつなぎの販売店をイメージしたものである。受験時代に覚えた記憶もないコラボレーション(共同制作)は、無骨な語感で、突然使われると、字句通り怒られているようである。ユビキタス(時空自在)なんて日本語で言われても意味不明である(調べたところ、いつでもどこでもネットによってコンピュータが使える環境を示す概念)。▽これら定着度が低い外来語は、不明なときはこっそり辞書で調べるなど面倒であり-ほとんどの人がどういわけか使っている本人に直接意味を問えない-、あまり使わない方がいいと思う。▽だが一度意味がわかれば、日本語よりもイメージできるので、外来語好きな人は言い換えることはないだろう。不明な人の簡易辞書と言うことか。 目次に戻る

                            脂肪牛?、死亡牛?        

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    学生の頃、畜産学の受講中に「しぼうぎゅう」という言葉を初めて聞いた。「ぎゅう」はウシであるのは容易に推察できるが、頭に付く「しぼう」が不明である。「脂肪牛」、「死亡牛」(まさか)などと連想したものだが、使われた前後の話の論理とつじつまがあわない。その後、農家の人の中でも使う人がいたが意味不明のまま年月が流れた。最近、話の前後から、種雄牛(「しゅゆうぎゅう」と読み、人工授精用のたねオス)を指すようだと思い、人に聞いたところ「種牡牛(しゅぼぎゅうorしゅぼうぎゅう)」とのことである。牡は雄のことである。もう一つ不明でずっと後にわかった「ぼとく」という言葉、これは「牡犢」と書き、雄子牛のことである。これら二つの単語は、昔の畜産の本でよく記述されたようだが、今は古い畜産人が話言葉でしか使われなくなったので、初めて聞く方は意味不明となる。何もかも人に聞くのは私は好まないが、これらの言葉に限れば「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」か。 目次に戻る

                              ウズラのトリビア        2003.9upload

  TV番組「トリビアの泉」で放映(2003.9/17)された「ウズラ(鶉)の卵殻の斑紋は指紋と同じように個体ごとに決まっている」という事実は瞠目した。畜産の世界にいながら、全く初耳だったからである。さらに番組の中で養鶉場にいって確認する場面で、またうなった。確認映像ではない、ナレータがいった養鶉場の読みである。「ヨウジュンジョウ」、すなわちウズラは「ジュン」と音読みすることだ。ためしに周りの10名ほどに問うたが、誰も答えられなかった。ウズラを漢和辞典で確認したら「鶉居」という熟語に遭遇した。「ジュンキョ」と読み、「ウズラの居所の一定しないように住居の定まらないこと」とある。ウズラの居所が一定しないという行動生態もまたまた寡聞にして聞かないが、なにやら私のような単身赴任者のことを指しているようで苦笑した。「住所不定無職」は「鶉居無職」と言い換えができるし、「私はあちこち転勤して鶉居しています」と自己紹介して相手の反応を見るのもおもしろい。不明なことは遠慮なく聞く子供は別として、私を含めいい大人は「?」と思いつつも、「ジュンキョってなんですか」とは多分聞かないからである。 目次に戻る

                馬 鹿   2003.9upload

  畜産大事典(養賢堂)の索引検索中に「馬鹿」という言葉が目に入る。該当ページをみると、中国に馬鹿という赤鹿のことが解説してある。この馬鹿は「バカ」ではなく「ウマシカ」と読む。馬に似たところは片鱗もない鹿で、中国ではそのツノを漢方薬として利用するために、繁殖牧場が多くあるという。日本では若者などが「馬鹿野郎」を省略して「バーロー」をよく使う。この馬鹿(ウマシカ)の中国語読みの一つが「バーロー」。日本では文語でも口語でも罵倒される意味の名を持つ気の毒な動物(家畜)である。中国と日本とで漢字の意味が異なるまれな例として記憶にとどめ、今後「バカ」の漢字表記はやめようと思う。     余談:ちなみに雌牛は、スペイン語で「バカ(vaca)」という。 目次に戻る

                                    踏み込み式牛舎    2003.10upload
  この牛舎がどういうものか久しく不明であった。踏み込むというと、刑事達が犯人の住むアパートになだれ込み、犯人を取り押さえる映像を思い起こさせ、なにやら警官隊が牛舎内に入り込み、がさ入れしているようなイメージを連想したものである。これは放し飼いの牛群が生活しているふん尿で汚れた寝床に、人がおがくずやわらなどの敷き料を上に重ねていき、牛に踏み込ませていく牛舎を指すようである。このことばは時折り聞くのであるが、不思議のことに畜産大事典や畜産用語集といった専門書にも記載されていない。代わりに踏み込み盤なることばが記載されていて、牛舎に入る前に置く靴の消毒槽のことを言うのであるが、これは逆に聞いたことのない、なじみのないことばである。同様に「追い込み式牛舎」というのもある。 目次に戻る
役不足          2003.10upload

   カーラジオを聴いていたら、「役不足」という言葉は、70%の人が使い方を間違っているという。「その仕事は私には役不足です」のように「役不足」をへりくだって「力不足」の意味でいうのは誤りであるという。Kiyoもその70%に入っていたようである。国語辞典で調べると「@役めに不満をもつこと。A役めが軽すぎて、能力を発揮できないこと」のように使うのが正しいことになる。だが、「役不足」という言葉をすべての人が正しく使うことはないから、これからはめったに使えないね。「私には役不足」といった場合、力不足なのか役めが軽いことを行っているのか、「あなたには役不足」と人から言われても、ほめられてるのやら、けなされているのやら、混乱するからである。日本人の謙譲の美徳の陥穽におちた言葉である。   余談:’04.6.23放映の「トリビアの泉」でトリビア「役不足は誉めことば」がだされ、一人だけ20へえで他の四人は0へえだった。知っている人は知っている。      目次に戻る

万障繰り合わせの上       2003.11upload

    会議や集会の出席、参加を呼びかけるのに、標題の枕を付ける人がいる。「もし」を怠りなく考えるゴルゴ13的性格をもつ私に言わせれば、不遜であり、無理な注文である。もし、その時刻に牛に蹴られたりして、面会謝絶のような重体になったときでも、出席しなくてはいけないのか。尾籠な例では、食あたりを起こし、トイレの中で苦しんでいてもパンツを脱いだまま駆けつけなくてはならないのか。不思議なことにそのような集まりにでて、万障繰り合わせない欠席者が結構いて、呼びかけた主催者が後で詰問しないのは、なんでだろう(どこかできいたような・・・)。でも私ほど、万障繰り合わせの上、日々生活を送っている人もまれであろう。平日は万障繰り合わせの上、出勤し、休日は万障繰り合わせの上、絵を描く。万障繰り合わせの上、駄じゃれをとばし、居眠りをし、ボオーとする。このコラムを書いているのも万障繰り合わせの上である。自分で自分をほめてあげたい(どこかできいたような・・・)。                     目次に戻る

以  上           2003.11upload

   口頭で「以上」と言うのは別として、末尾に「以上」と付いた文書をもらうと、ちょっとむっとする。見ればわかることである。過日、大相撲ですでに土俵を割った相手にだめ押しをした外人横綱が観客からひんしゅくをかったが、「以上」はだめ押しに相当する。それにあえて「以上」という必然があるのなら、同様に文書の冒頭に「以下」といれるべきではないか。「以上」に相当する英語があるのだろうか。みたことがないので、和英辞典で調べると、「以上」の項の上に「異常」の項が目に入る。なるほど「以上」は「異常」でunusual の意味でとるのが最も了解しやすい。  以上         目次に戻る

心に残るトリビア英単語(その1)   abandon (アバンドン) 2003.11upload

   この abandon (意味は、見捨てる、やめる、放棄する)を知っているのは、大学受験を経験した50歳代を中心に結構多いのではないか。当時、受験生の英単語バイブル、「赤尾の豆単」第1ページの冠詞 a の次ぐらいに記載された単語である。この豆単のはしがき「1ページから順番に忘れても忘れてもぼろぼろになるまで何度も覚えて、最後は覚えた端から食べちゃって下さい」という趣旨の過激な励ましのもとに、頑張るのであるが、機械的暗記に耐えられず、また1ページ目に abandon なんてあるから、妙に記憶に残るものの、その意味どおり早くも挫折し、そのまま大学入学も abandon された御仁も多いに違いない。何しろ大学入試問題はおろか社会に出てからもとんとお目にかからず、警察に指名手配を要請したいほどの単語だが、最近、高齢化や離農で耕作をやめた農地、いわゆる耕作放棄地を abandoned field としているのを目にし、やっと観念して私に自首してきたかとほっとした。「会社にリストラされた」というよりも「会社に abandon された」という方が単語の本来の意味を適切に示していると思うのだが、受動態で使うと悲哀感が漂う言葉である。ひるがえって、私も単身赴任4年目、家族から abandon されそうである。           目次に戻る

心に残るトリビア英単語(その2) shrimp(シュリンプ  2003.11upload

  高校時代、英語の授業中、私語をする生徒を指し示し、教師が黒板にshrimpと書いた。本人を含め皆が呆気にとられていると、その意味を私に問うたので、あわてて辞書をひいて「エビ」と答えると、「そんな手帳みたいな辞書じゃだめ。図書室にある研究社の英和中辞典で調べておきなさい」と言って、授業を続けた。後で調べると、shrimpは、(1)小エビ、(2)いじけた小人(チビ)、とるに足らないもの、とあり、後者の(2)の意味でいわんとしていることがわかった。通常、授業中に騒ぐ生徒に対し、教師は、無視するか、怒鳴るか、チョークをとばすあたりが相場であるが、なかなか粋で心憎い対応である。おかげでその教師の顔とこの単語のトリビアな意味を今でも心に残っている。以前(今も?)カップラーメンか何かで商品名「シュリンプヌードル」が売られていたが、私には「いじけた、とるに足らないラーメン」のイメージが強く、未だ食したことがない。   目次に戻る

あいさつは川柳にしたら送別会   2003.11upload

  昔、転勤で全場送別会に出たとき、転勤・退職者が一人ずつあいさつすることになった。始まって30分程アルコールが入っていためか、会場の100名余の出席者は各自、周囲と歓談にふけり、騒然たる雰囲気に包まれた。一人3〜5分、順番に在職時の思い出などを話していたが、誰も聞いている風もない。逃げ出したくなったが、とうとう自分の番になったので、冒頭「皆様聞いていますか」、会場「ザワザワ」、仕方なく声をちょっと大きめに「オーイ」、会場「ザワザワ、ガッハッハ」、さらに大きく「ヤッホー」、会場「ザワザワ、ゲロゲロ、アププー」、あきらめて「どうもありがとうございました」とお辞儀をして引き下がった。その瞬間、10名位が私をみて爆笑している。なんだ聞いている人がいたのかとちょっと驚いた。他日、爆笑した一人が私に、「簡潔でなかなか感銘の受けたあいさつでしたな」と笑っていた。オーイだのヤッホーで感銘を受けたとは恐れ入ったが、そうならば次にかかる状況になった時は、次の川柳でもひねって簡潔にもっと感銘させてやるか。「騒然と烏合の衆のうそ哀し」     目次に戻る

踊る大選挙戦    2003.11upload

  政権公約選挙といわれた2003年11月9日の衆院選、その開票速報番組タイトルはすごかった。NHKの「衆院選2003開票速報」を対照として、民法各局は、どこぞの映画タイトルにひっかけた標題のほか、「票決!ライブ2003風はどちらに吹いた?」「”激戦”バンキシャSP」などバラエティ番組顔負けの布陣であった。

3時間もすれば開票が進み大勢が判明するものを、視聴率競争を勝ち抜くためか、各局とも冒頭から出口調査による当確情報を流し、「真紀子の目白邸から新潟の実家まで車で3回しか曲がらない」なんてトリビア情報を流している。まるでお祭りである。おかげで翌朝寝坊して、あわてて万障繰り合わせの上出勤したのはよいが、靴が黒と茶のちんばであるのを職場の何人かに見つかり「なかなかおしゃれな靴で」と皮肉られた。政治は政(まつりごと)で祭り事を語源とするともいわれるが、まさに現代版祭政一致の踊るまつりごとである。     目次に戻る
トリビア=ムダ知識?   2003.11upload

  知っていてもしょうがないムダ知識をトリビア(triva)といい、これを品評する番組が「トリビアの泉」(以下「トリビア」)である。だが知っていてもいい、ためになる知識もある。たとえば「ベルリンの壁は一人の男の勘違いで崩壊した」なんて、この番組の裏番組のタイトル「その時歴史が動いた」(以下「歴史」)といってもいい。実は'03/11/19に放映の両番組、ともに勝海舟をとりあげている。「トリビア」は「勝海舟は犬にキンタマを噛まれて死にそうになったことがある」、一方「歴史」は「江戸城無血開城 勝海舟VS西郷隆盛」である。「トリビア」によると、勝は子供の頃野良犬にキンタマを噛まれ、「犬死に」しそうになった。「歴史」によると、江戸城を総攻撃する西郷に幕臣の勝が説得して中止させ、近代日本をスタートさせた。勝はキンタマを噛まれ大出血して、一方江戸城を無血開城させたとは、何か因果がありそうでおもしろい。「歴史」によると、勝は西郷に対し「君ほど私を知るものはいない。私以上に君を知る者はいない」と碑文に残したという。ならば西郷は明治日本の夜明けがなかったかもしれぬ勝のキンタマ事件を知っていたのか、勝は後に自称した西郷隆盛の名が親父の名前(注釈)であるのを知っていたのだろうか。注釈:「トリビア」によると、西郷の本名は隆永であり、明治政府が官位を授けるために西郷の知人にその名を問い合わせたところ、知人は間違って親父の名の隆盛を知らせた。西郷はそのまま隆盛と名乗ったという。          目次に戻る

                  いじめにあうコラム            2003.11upload

   昔、労働組合の機関紙に、ここに掲げた名言(迷言?妄言?)コラムを書いていて、当時、中学生の娘にその感想を聞いたことがある。腕を組みつつ曰く「結構おもしろいけど、こういう笑われて弱点をさらけ出すような文章は、逆にバカにされ、いじめにあう」と、鼻をならした。「笑われ、バカにされるかもしれないが、労働組合に入っているからいじめられないよ」とはぐらかしたが、娘のことばは、昨今の学校でのいじめに対する対処法を鋭く突いているともとれる。おそらく学校では弱点を見せぬよう目から鼻に抜けるように振る舞っていたのであろう。弱点さらけ出しの私と違い、きっと将来は凛(りん)としたたくましいおばさんになるにちがいない。           目次に戻る

                              交ぜ書き熟語一考  (その1)       2003.12upload

   新聞の記事などは常用漢字の使用を原則としているが、「破たん」や「山ろく」など常用漢字表にない漢字(表外漢字)を平かなで表記する交ぜ書き熟語をみると、字体が、ズボンの後ろポケットが裏返しではみ出し、こんにちはをしているようで何ともかっこ悪い。と日頃思っていたら「破綻」「山麓」にルビ(読み仮名)をふる表記がいいと地元の新聞記者氏が提案してくれた。この新聞を読むと、確かに「山ろく」の代わりに「山麓」にルビを使用しており、Kiyoもこちらの表記がいいと思う。かなは「仮名」で仮の字である。常用漢字でない漢字は仮名表記にせず、あえてルビをふる表記も一考を要する。ただ例外もある。たとえば「糞尿」は「ふん尿」の表記がいい。「糞尿」とすると、なんとも実体をリアルに想像させ汚物感漂う表記だからである。     目次に戻る

           交ぜ書き熟語一考(その2)     2004.1upload

 ’04.1/15付け某地方新聞によると、文科省の諮問機関が、小学校教科書で「成長」を「せい長」などと表記する交ぜ書きをやめ、ルビを活用して、小学校卒業までに常用漢字を読めるように提言したという。前のコラムで述べたように、「せい長」というと、字体が格好悪く、時に大人は意味がとれなかったりするのである。基本的に提言は賛成だが、ついでに児童の氏名は小学校低学年までに漢字で書けるように指導したらよい(否、親がやるべきか)。昔、小学生の息子が書いた習字で、[早さかはる貴」と格好悪い交ぜ書き署名をしていて、習字のできよりも大変気になった思い出がある。  注釈:この地方新聞は'04.4/1から、記事を読みやすくするため、交ぜ書き語70語を読み仮名付きで漢字表記すると報じた。日本新聞協会用語懇談会の論議を踏まえてのことという。         目次に戻る

                        2003年心に残る川柳選         2004.1upload
   昔は新聞といえば、四コマ漫画を真っ先にみたものだが、中年を過ぎてから川柳欄に興味がうつるようになった。川柳は、一つはペーソスと人間愛、二つは風刺と笑いとに大別される。私の場合は、善良で人のよさを感じる前者よりも、世相を皮肉り、毒のある笑わせてくれる後者の川柳が好きである。さて2003年新聞で出会った私の心に残った「風刺」と「笑い」の秀逸川柳を一つずつあげよう。「百姓の世襲候補は手を挙げぬ」・・・'03年11月の衆院選で自民党の世襲議員が全議員の30%強となり、世襲が政治の活力や機能を低下させるとの批判がでる。だが農家は後継となる候補さえも少ない現状。議員も農家も新人リクルートを積極的に募る環境づくりが必要か。「パンストをはく人かぐ人かぶる人」・・・「かぶる人」とは一般に銀行強盗を思わせるが、その前の「かぐ人」が変態性癖を想像させ、「かぶる人」もその性癖の揺曳(ようえい)を感じ、大笑いした。この句をみると、そろそろボケてそそかっしい私が、帽子の代わりにパンストをかぶり出勤してしまいそうでちょっと怖いのである。             目次に戻る
                                             漢字検定    2004.2upload
  本屋で漢字検定の本を見かけたので、社会人レベルである準一級の問題集を買って挑戦してみた。読みは比較的できるが書きはかなり難しい。常用漢字では、リンゴ、ミカン、ブドウとカタカナ表記で可だが、漢字で書けというと無理である。「憂鬱」(ゆううつ)などの鬱の書取(一体画数はどのくらいだろう?)はまさに憂鬱である。「牟然」(ぼうぜん)はウシが鳴く様子を意味するが、広辞苑にも記載がなく、呆然となった。畜産人でこのことばを知っているのは まれであろう。今やワープロで簡単に漢字に変換できるので、正確に書けなくとも特に日常生活に支障はないが、結構ボケ防止にいいように思う。普段お目にかからない漢字や特殊な訓読みなど、今は惨憺たる成績だがいずれ検定試験に挑戦してみるか。  目次に戻る
                              「ついては」「おいては」一考 2004.4upload

   昔、私の処女論文原稿の校閲で、咳唾(がいだ)、珠(たま)を成す上司から「・・ついては」「・・おいては」の表記の「おいて」「ついて」の意味を問われ、削除を求められた。確かに削除しても意味が通る場合が多く、以来、無駄な冗長なことばとしてこれらは極力使わないようにしている。これらは官庁の文書や研究論文で特に多用されているお役所的文語表現とみられるが、私はむしろ話の中の「あのー」や「そのー」などのように次に言うべき事を考え準備する間をもたすことばと同じ口語表現と考えている。この考えについてはあなたはどう考えますか。目次に戻る

                                      耳が遠い      2004.4upload

   最近、耳が遠くなったように思う。自分に都合の悪いことも聞こえにくいので、聞こえないふりをする必要がない分ありがたい。ただ都合のいいこともありうるので、そのことを願って聞き返す。これでわかれば問題がないが、脳の老化もあり、理解できないこともある。二回以上問い質すのは、ちゅうちょする。相手がいらいらしてくる可能性があるからである。80歳近い私の父は、私以上に耳が遠いのか、私が話すと何度も「えっ」「なに」「ほえー」というので、しばらくすると私自身もいらいらしてくる。だが待てよ。考えてみれば私が父に話していることはどうでもいいたわごとである。であれば聞くのは1回だけにして、わからなければわかったふりをするか。このような心構えでも確かに私の生死はおろか、生活にきわめて支障を来したことはこれまでないのだから。 目次に戻る

                                お米の銘柄名       2004.5upload

   最近、小売店で「ササニシキ」を見かけなくなったと思ったら、作付け面積首位の「コシヒカリ」37%に対し、「ササニシキ」は1%と急激に姿を消しつつあることが、農水省の米穀資料(H16年)でわかった。北海道にいる頃によく食べた「きらら397」(作付け4%)も「ななつぼし」(同1%)などに作付け転換され、新旧交代が進んでいる。米は昔の「農林○号」のような味気ない品種名から、「ひとめぼれ」「あきたこまち」「ふさおとめ」など乙女系と、「ヒノヒカリ」「ほしのゆめ」「ゆめあかり」などロマン系が主流で、カタカナ、ひらがな名の多いのが共通している。また山形の「はえぬき」、熊本の「森のくまさん」なんてのもある。「森のくまさん」とは童謡にもそんなタイトルがあったように記憶しているが、意外性があり、これでお子様ランチでも作って食べてみたいね。               目次に戻る

                     2004年上半期心に残る川柳選    2004.5upload

   2004年上半期も新聞などに載った笑える毒舌川柳が目白押しであった。まずは「ドンマイと声が飛び交う手術室」・・・経験不足の医大医師による手術が発覚、こんな声が飛び交ったのか。内視鏡の取り扱い説明書いわゆる取説(とりせつ)を見ながらの手術、「取説を準備できたか手術室」(Kiyo作)ともいえるが、正直、患者を我が身に置き換えれば空恐ろしい。ほのぼのと「ドンマイとそっとささやくダイエット」(Kiyo作)というのはどうか。「未納者を一人減らしたコマーシャル」・・・有名女優をCMを起用したのはよいが本人が不払いしていた。その後、「政治家は未納増えても法案通す」(Kiyo作)幕引きに。▽「サラリーマン川柳コンクール」(第一生命主催)で2万55百句の第一位『課長いる?』返ったこたえは『いりません!』」・・・じわーとくる面白さで秀逸。「課長」を置き換えて、どこでも誰に対しても即使えるね。▽ほかに「妻の声昔ときめき今動悸(どうき)」「恋仇(がたき)譲ればよかった今の妻」・・・明日にでも使えそうだが、言ったら最後、益々冷めた夫婦関係になりそう。                               目次に戻る

                                              人は虫              2004.7upload

    漢字を調べると、違和感のある漢字群に出会う。まず魚(うお)偏だが、鮎(あゆ)、鯛(たい)、鮒(ふな)などはわかるが、鰻(うなぎ)、鰐(わに)、鯨(くじら)はこれでいいのかな。さらに虫偏で、虻(あぶ)、蜂(はち)、蚊(か)、蝉(せみ)はいいとして、蛙(かえる)、蠣(かき)、蛤(はまぐり)、蝦(えび)、蝮(まむし)、蛇(へび)は考え込む。虫を漢和辞典で調べると、虫の象形文字はまむしの形をかたどるという。蝮、蛇は少し了解したが、さらに驚くべき記述が目に止まった。虫は動物の総称にも使い、人はなんと「裸(はだか)虫」と異称するとのこと。▽身勝手な行為を「虫がいい」というが「人がいい」という反対の意味でも使えるね。▽また「毛虫って大嫌い」などとのたまう女性の皆様。人も同じ虫であるという現実を無視(むし)しないで、今度、庭などで彼らをみたら優しく声をかけようね。台所でごきぶりを見つけても叩いちゃ駄目。逮捕されるから。

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                                     牛は万物の代表              2004.7upload

 牛偏の漢字は、その構成部分の解字から、その意味を容易に類推できる表意文字といってよい。

▽「牟(ぼう)」は、牛の鳴き声で、ムの下の牛がムオーと鳴く感じである。「牢(ろう)」は、家畜をかこう小屋から罪人が入る獄(ひとや)へ。「牧(まき)」は、牛を繁殖、飼養する場所である。「犠」と「牲」はいけにえを表す。「牽」はつなで引く。 「犇(ほん)」は、驚いて走る、ひしめくの意味で「奔」の古字である。さらに次の二つは面目躍如たる牛偏漢字である。「特」は、一群の中で目立つ種牛から、他に例がない、とりわけ優れたさまをいう。「物」は、色あいの定かでない牛で、一定の特色がない意から、いろいろなものを表し、牛はものの代表との意味合いもある。「特」と「物」は同じ牛偏で対照的な意味にも関わらず、牛が優れた万物の代表と帰結できるのである。牛を知ることは万物を知ることであり、牛の絵を描くのは万物を描くことである。思いの外、意義深いことである。勝手ながらそう考えると、これまでの人生、幸せな気分になる。                                  目次に戻る
                                嫌われた漢字            2004.7upload

   尾籠な内容でもあるので、まずは食事中にこのコラムを読むのは避けたほうが・・・▽糞屍呪癌姦淫怨痔妾蔑は、人名用漢字に追加する見直し案(2004.6法制審議会公表)に対し、市民が削除を求めたベスト否、ワースト10である。「縁起が悪い」「不潔」「ひわい」「否定的」「非常識」「公序良俗に反する」が主な理由。▽そのためか漢字のリアル感をなくすため、私たちは、「糞」を「フン」、「癌」を「ガン」、「痔」を「ぢ」などと無意識に仮名表記するケースも多い(漢字で書けない方が多いか)。▽「交ぜ書き熟語一考(その1)」のコラムでも「糞尿」は「ふん尿」表記を薦めたが、この「糞」は削除意見729通のうち383通を占めた最も嫌われた漢字である。この「糞」は「くそ」とも読むのも不潔感、汚物感を誘うのだが、他に「屎(くそ)」がある。両漢字とも構成部分に「米」があり、「食べた米と異なるもの」あるいは「食べた米のカス」の意味(会意的解釈)が読みとれる。さらに漢和辞典で調べると、構成部分の「異」は両手でちり取りを持つ形を表し、「米」は「釆(へん)」で、(へん)が転じて(ふん)となり、放り棄てる、畑に播く意の語源を持つ。ちり取りで放り棄てれば嫌われる運命だが、畑に播けば肥料になり、食料生産に貢献する。嫌われた漢字の復権は人の利用のあり方にある。                目次に戻る

                                 鳥肌がたつ          2004.9upload
   アテネ五輪のTV放映で、観客、選手、中継のアナウンサーからこの「鳥肌がたった」という表現が多く聞かされた。私の世代以上では、「鳥肌がたつ」とは、寒さ、恐怖、不快感に対していうものと相場が決まっていて、換言すれば、「ぞっとする」「身の毛がよだつ」のイメージが強く、感動した時に使われると「えっ?」と思うのである。実際、感動して生理的に鳥肌が立つ人がいることも聞いたことがあるし、また比較的若い人が使い、TVアナウンサーまで使うのであるから、次第に認知され、将来は本来の意味が消滅して、たぶん感動の換言表現のみに使われていくのであろう。ただ、めったにないことと思うが、もし私の絵に対して、「鳥肌がたった」という感想をいう人があったら、私としては鳥肌がたつほどではないが、どのような反応をしてよいか困るのである。目次に戻る
                               七つの子                2004.9upload

   某漫才コンビが、童謡「七つの子」の「〜可愛い七つの子があるからよ〜」の歌詞は、カラスの寿命は10年程度なので、7歳の子は人間の寿命だと50歳のおっさんに相当し、親離れしないカラスに笑いの突っ込みを入れていた。七つの子とは7歳ではなく7羽の子と思っていたので、調べたら諸説飛び交う奥深い意味があるようである。生態学的には、カラスは7羽の子を産まず、産卵は4〜5個で、雛は2〜4羽といったところ。またカラスの子は7年間も巣におらず半年程度で巣立ちする。寿命は、年齢の手がかりとなる歯や鱗(うろこ)がないので不明だが、繁殖年齢の10倍という説に従えば20〜30歳が限度という。カラスではなく、むしろ七つの子は人の子になぞらえ、昔は子供の死亡率が高く7歳まで生きればひとまず安心といった親心を表現したとか、7歳の子に問われた親が、カラスも山にあなたと同じような7つのかわいい子がいると諭したとか、この童謡を作詞した野口雨情が7歳の時に母とわかれた、などと分析されている。なるほど、人の子になぞらえた感情を歌ったものかと思ったら、野口の出身地である北茨城市のJR駅前の歌碑には、7羽のカラスの子が描かれているという。どうなってるの。         目次に戻る

                2004年下半期心に残る川柳選         2004.12upload

   川柳は世相を反映する。2004年下半期も世相に寸鉄釘を刺す川柳が多くあった。温泉偽装と熊出没の川柳が記憶に残ったがやはり熊出没か。▽「隣の客はよく柿食う熊だ」「柿食えば銃がなるなり里の秋」(朝日川柳)・・・早口言葉と有名俳句をもじったもの。台風の影響で、山の木の実が不足し、里に熊が出没。滋賀県では夜間、熊が民家の柿の木に登り、柿を食う映像が。▽それにしても10回におよぶ台風は日本列島で大暴れ、傷跡を残して、その後何事もなかったように温帯低気圧になる憎々しさ。「台風に謝罪の言葉はないのかね」「台風に損害賠償できないか」(Kiyo作)。▽「オレオレ詐欺にひっかかる摩訶不思議」(万能川柳)・・・「オレオレ」といわなかったからひっかかったという笑える・・・否笑えない被害例も。あわてて警察は「振り込め詐欺」「なりすまし詐欺」などと命名。かくいうKiyoも昨年寸借詐欺にあった。うかつに他人を信じられない世相を憂う。             目次に戻る

            キヨシです         2004.12upload         

  最近、ヒロシという元ホストの自虐コントが流行っています。「ヒロシです。まめな性格を目指してるのに、ストーカーと呼ばれています。ヒロシです。誰でもいいから彼氏がほしいという彼女に振られました。ヒロシです。さわっていないのに手をかぐと草の臭いがするとです。・・・ヒロシです。ヒロシです」私もやってみます。「キヨシです。実家では道に犬や猫が車にひかれて死んでいますが、ここではタヌキが死んでるとです。キヨシです。実家では野良猫が庭に遊びに来ますが、ここではイノシシが遊びに来るとです。キヨシです。ここではスーパマーケットをデパートと呼んでいます。キヨシです。この前食堂で定食を食って、ふと視線をテーブル横の窓辺に向けるとゴキブリホイホイがおいてあり注)、食欲をなくしたとです。・・・・キヨシです。キヨシです」          目次に戻る

注)この食堂は、客の食べ物にゴキブリが混入するのを防ぐために、客が視角的に確認できるよう万全の衛生対策を行っている点だけは脱帽する。

                               やかん               2005.01upload

   漢字を勉強しているとこれまで知らなかった漢字を知って少し感激することがある。私にとって表題の単語がそれで、書取りがわかりますか。「やかん」は漢字で「薬缶」と書く。薬缶はもと薬を煎じる用途に由来するが、これまで仮名表記でしかみたこともなく意外であった。そういえば、蒸気機関車の警笛を思わせる、沸騰すると音が鳴る便利な改良型やかんもあった。蒸気圧がかかる密閉構造の必要性から水を入れるふたがなく、注ぎ口から水をいれる。なぜかボディが緑や赤で塗られ、やかんではなく笛吹ケトルと称していた。つい最近まで湯沸かしはガスとやかんで行うのが相場であったが、電気ポットに魔法瓶が合体した省エネ型電気保温ポットの利用が増えているようだ。私もその利用者の一人でもうやかんは持っていない。栄枯盛衰、便利な家電ポットの前に、やかんはいずれ死語と化し消えゆく運命にあるのだろうか。  このままではあかん、やかんに愛の手を。       目次に戻る

                踊り字  2005.05upload
  山々とか代々木とか、繰り返し表記で使う「々」は、漢字ではなく記号(符号)である、と最近知った。これまで読みが不明で、ワープロで変換しようにもできなかったが、「同じ」とか「繰り返し」とか入力すると変換候補「々、〃、ゝ、ゞ、ヽ、ヾ」としてこれら繰り返し記号が出てくる。これらは「踊り字」とも言い、同音の語を重ねた「きらきら」なども「踊り言葉」という。「踊り」とはどういう意味か。辞書で調べると、踊りは「何かに操られて行動する」とあり、前の字に「踊らされる字」と理解すればよいのだろうか。そういえば踊り字の字体の大きさは、ちょっと小さく遠慮がちである。かといって「代々木」や「佐々木」など固有名詞をおそらく「代代木」「佐佐木」と書いたら間違いなのであろう。過去に文部省から踊り字をできるだけ使わないよう通達があったそうだが、最近、「和牛放牧のすヽめ」という冊子の表題を見かけた。私は「〃」をよく使う。年をとるほど日常初めて体験することが少なくなる。今日の私の生活は昨日に〃、明日もたぶん今日に〃であろう。
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                           「断つ」と「絶つ」  2006.01upload
   某雑誌に酒やタバコを「断つ」と「絶つ」とでは意味が違う旨の解説記事が載っていた。「断つ」は願掛けなどで一時的に中断する、「絶つ」はやめて以後続かない意味合いがあるそうである。なるほどかって同僚や先輩が酒やタバコをやめると宣言しておきながら、しばらくしてこっそり再開するのを見て、なんと二枚舌の意志の弱い人かと思ったものだが、「酒を断つ」といっていたのね。でも「絶食」は一時的中断である「断食」と同じ意味である。また自ら命を絶ったとしても、未遂ならば命を断ったと訂正を要するし、「断絶」なんて、絶の方がはるかに強い意味だが、断と絶が対立的ないさかいをして、一時的中断か否か意味不明の熟語にも見えてしまう。 主観的考えの強い区別であり、聞いてる方はその人の性格などから判断するしかないから(暇ならどちらの漢字でいっているのか尋ねてもよいが、たぶんキョトンだろうね)、書取テストで もだされたら、どちらを書こうとも正解というのが妥当なところか。目次に戻る
                       煙 草  2006.03upload
  20歳の頃、たばこを吸いながら読書中、「煙草」という言葉を見つけ、「けむりぐさ」って一体何だろうと思ったことがある。数ヵ月後これがたばこの漢字表記であることを知り、 言い得て妙と新鮮な感動を覚えたことがある。先日、昭和40年代に流行った警備会社のTVドラマの初回をDVDで見たが、煙草を会議室だろうが、路上だろうが、あたりかまわず吸っているのは、今から見ると改めて驚きである。 初対面の人に話のきっかけをつくる格好のせりふでもある「ちょっと火を貸して下さい」なんて今ではちょっと見られない光景である。たばこはアクセサリーでもあり、かっこよく市民権を得たおおらかな時代。受動喫煙が社会問題となり、職場の会議室が禁煙になり、私も何回かの禁煙宣言(この場合たばこを断つ)を経て、30歳代の病を機に医者におどされ、もうたばこは吸っていない。▽なのになぜだか娘 や息子に煙たがれているのは何でだろう。目次に戻る
                  沈魚落雁  2006.03upload
  漢字検定準1級レベルの四字熟語は、実生活でほとんど使用しない熟語が多い。「鵬程万里」「魚目燕石」など、標題の「沈魚落雁(ちんぎょらくがん)」もその一つ。魚が沈み、雁が落ちるほどの美人を指す。この場合、魚が沈み、雁が落ちるほど、根暗、早食い、早起きなどと勝手にたとえてもいいようだが、一応美人のことを指すので、以前近くの女性に使ってみた。どのような漢字を書くか教えたが、キョトン。今晩辞書でも引いて、その意味に感動し、次の日にチョコでももらえるかと期待したがやはり無反応。辞書を引く習慣がないの だろうね。この「沈魚落雁」、人では美人でも、魚や鳥は逃げ隠れることから、美の基準は様々であるというのが元々の意味だそうである。広く美術一般に通じる深い意味もある熟語である。       目次に戻る
                 中国牛市  2006.06upload
  最近、新聞の経済面で標題の見出しが目にとまった。一瞬、以前住んでいた島根県で和牛の共進会でも始まったかと思ったが、記事を読むと中国の株式市場が熊市場から牛市場に移行して賑わいをみせているという。熊市場とは株価が下降するベア相場であり、牛市場とは株価が上昇するブル(雄牛)相場をさすそうである。これは熊は前足を振り下ろす、牛は角を上方につきあげる動作に由来する。記事の写真に、上海証券取引所前の雄牛銅像の角を満面の笑みでなでる投資家が掲載されていた。株の世界でも、牛は株主の待ち望む強気の相場を示すありがたい存在なのである。ちなみに株価がもみ合って上下する相場をホッグ(豚)相場という。  目次に戻る
               人気がブレイク? 2006.08upload
  近年、人気などが「ブレイクする」という言葉が定着しつつあるが、ニュアンスから人気が沸騰(急上昇)することを 言っているケースが多い。だがブレイクはbreakであり、人気が破壊する,むしろ人気が下がる意味ともとれる。ブレイクが上なのか下なのか私には初めて聞くと混乱する表現である。英和辞書で調べた結果、上であれば「ブレイク・アウト(break out)」、下であれば「ブレイク・ダウン(break down)」と言えば間違いがない。辞書の意味内容から、どちらかといえばマイナス指向で使われる傾向 だが、数少ない異彩を放つ、比較的使われる語として、ブレイク・スルー(break through)がある。 飛躍的な進歩、画期的な発見を意味するが、個人の心理面でも、いい考えがなかなか浮かばない時にぱっとひらめいたり、論理的に説明できたり、解決策が出たりすると、まさにブレーク・スルーの局面であり、青天に向けて竜が上昇するような 舞い上がる至福の瞬間でもある。
            グンジさんの採点  2006.09upload
  子供のころ、ボクシングやプロレスといった格闘技のTV観戦に熱中したものだ。ボクシングの試合では、 各ラウンドの後に「グンジさんの採点では、10−10で引き分け」とアナウンサーが告げ、CMに入る。このグンジさんを、私は採点をする職制を指している と長らく思って いたが、ボクシング評論家である郡司信夫氏と知ったのは、9年前に彼の死亡記事をみたときである。記事によると、ボクシングの経験もなく、デビュー戦や前座試合でも丁寧な採点をしていた と知られざる一面を紹介していた。 また氏の出身は宇都宮であり、栃木県に多い名字でもある。TV映りをみたことがないことや、昔の地方行政官たる官職名である響きが、長い誤解を生み出した。今、ボクシングがブレイク・アウト し、カメちゃんはビッグマウスほど強いのかわからなくなったが、さて前の試合の郡司さんの採点は・・・
           ワイルドだろーキヨちゃん   2012.06upload
 最近、スギちゃんという芸人が大人気で、その中のネタの一つが身につまされた。スーパーの開店前から半額シールを貼られるのを待ち、レジでその商品の半額シールをはがして出したという。時間の無駄だった、ワイルドだろーという落ち。▼キヨちゃんは夜9時半にご近所さんのスーパーで半額シール食品購入の御常連様である。そうか、スギちゃんは私の行為をアンワイルドというのだな。ならばワイルドなキヨちゃんの一端を見せてやるよ。その1「キヨちゃん、半額食品を買うことにじくじたるものを感じ、自作のパソコンで作成した倍額シールを半額シールに貼り直してレジに出してやったぜ。これで小売業界発展するぜ。スーパーワイルドだろー」▼その2「キヨちゃん、会議で相手の言うことが理解できないので、ボイスレコーダーを買って会議でつかうことにしたぜ。あとで再生したとき、なぜか自分の声が気持ち悪いのと、自分の発言が最も意味不明であることがわかり、最近では会議の後でそのまま録画ファイルを削除しているぜ。ワイルドだろー」▼その3「キヨちゃん、戸籍抄本を郵送でとりよせるのに本人確認書類が必要というので、ご近所のスーパーで使うポイントカードをコピーして送ってやったぜ。でもよく考えると本当に抄本を送ってきたらどうしようと最近は夜よく眠れないぜ。ワイルドだろー」
             食糧と食料、給飼と給餌   2017.12
  
               小学生のウシの絵と題名   2017.12