このページは、人が牛を管理する視点からの情報コラムです。
1.牛の捕獲法        16.サイレージ               
2. 電気牧柵      17.乾 草                    
3. 搾  乳             18.ロールベールサイレージ   
4. マッサージブラシ    19.飼料イネ
5. スーパーカウ       20.クローン牛
6.つなぎ飼い式牛舎  21.里地・里山放牧
7.放し飼い式牛舎   22.シバ草地放牧   
8.ミルキングパーラ  23.ふん尿処理  
9.牛房式牛舎     24.たい肥    
10.サイロ        25.液肥          
11.搾乳ロボット      
12.耳 標          
13.トレーサビリティ            
14.削 蹄         
15.粗飼料と濃厚飼料
1.牛の捕獲法                2003.9upload
 放し飼いの牛をどう捕獲するか疑問に思う方があろう。飼い主と親密につき合い、信頼感があれば、簡単に捕獲させてくれるが、一戸あたりの飼養頭数が増え、親密な接触が少なくなった昨今はそうはいかない。特に搾乳など人との接触が多いおとなしい乳牛にくらべ、肉用牛である和牛は捕獲に一苦労する。狭い枠場に大勢で追い込み捕獲するのが一般的だが、人手を借りずに放し飼いの牛群を一網打尽に捕獲する管理器具がある。自動ロック式連動スタンチョン(写真)という。スタンチョンとは「首かせ」の意味である。えさ箱の手前に連動スタンチョンを設置し、牛の好きなえさを入れると、スタンチョンに頭を入れて、食べようとして頭を下げると自動ロックされ、首かせ状態になり、捕獲される。以前は、首かせ状態、すなわちロックするのは、飼い主が手動で行っていたが、昭和50年以降、四国で牛による自動ロック式が試験的に使われ、以降全国に普及した。電気牧柵とならび、優れた家畜管理器具の一つと思う。  目次に戻る
2. 電気牧柵                             2003.9upload
   電気牧柵(写真)は、放牧地を簡易なポール杭で囲い、それに電牧線を張ったものである。牛が電牧線に触れると電流が流れて感電し、それを触れることを避けるために脱柵しなくなる。私も2回ほど誤ってさわり、牛に用がある以外はこれには近づかないようにしている。ずいぶん昔に発明されたと聞いているが、最近、とみに脚光を浴びているように思う。離農や高齢化により、雑草化した耕作放棄地や遊休農林地などに牛を放牧する試みが行われており、設置が簡単にできる電気牧柵が使われるようになったからである。また脱柵させないことは入柵させないことであり、イノシシなどの獣害防止のために、田畑の囲い込みに利用されている。電線は一般に二段張りであるが、大人の牛で電気牧柵に馴致した牛であれば一段張りでも十分である注)。問題は、草が伸びて電線に触れると漏電するので、適宜下草の刈り払いの必要がある点にある。電源は車の12Vバッテリーのほか、充電不要な太陽電池(ソーラ)式も販売されている。      注)京都府畜技セ碇高原牧場の試験成績(2003):肉用成雌牛は60、90、120cmのいずれの高さの一段張りでも脱柵しない。支柱間隔は2m間隔から6m間隔にしても大丈夫。子牛は高さ60cmと90cm(あるいは120cm)の二段張りが必要で、リボン式ワイヤを推奨(牛にとって目立つため興味深く寄ってきてよく感電し学習効果が高い)。 目次に戻る 
3. 搾  乳                         2003.10upload

    観光牧場ではよく乳牛の手搾り体験をさせているが、牛とふれあうことが目的で、一頭の乳量が15〜50kg/日となり、一戸で数十頭も搾乳すると、手搾りではとても間に合わない。実際の酪農家はミルカー(搾乳機)という機械を使う。牛の4つの乳頭にステンレス製のカップをはめる。カップの内側はゴムでおおわれ、カップとゴムとの中空部分を、真空状態に交互に繰り返し、ゴムをふくらませたりへこませたりして、乳頭内にたまった乳汁を絞り出す構造である。酪農家は一般に一日2回搾乳するが、牛舎内で一日の全作業の半分の時間を費やす。さらに省力化のために、無人の搾乳ロボットがオランダで開発され、90年代から日本にも数十台導入されている。今にアイボのようなロボット乳牛が出てきそうな昨今の近代化の波である。 目次に戻る   

4. マッサージブラシ          2003.10upload
   人は手や孫の手などの道具を使って、かゆいところをかく。牛の場合は自分でできないので、囲いの鉄柵などに頭などをこすりつけたりする。そんな牛のご要望にお応えして、マッサージブラシ(写真)、コンビネーションブラシとも呼ばれている)なるグッズがある。縦型ブラシと横型ブラシからなる逆L字型をしており、鉄柵などに設置して使用する。これがあると牛が喜んで利用する。特に頭や尻の上をよくこすりつける。尻の上を横ブラシにこすりつけて尻を左右に振る姿はほほえましくもやや滑稽でもある。利用は頭に限られるが、ベニヤ板に人工芝を貼り付けたもの(写真)でも有効である。生産性にあまり影響がないと思われるので、肉牛農家や酪農家で使っているのをあまり見かけないが、牛からみれば、是非設置してほしいグッズと思うのである。 目次に戻る  
5. スーパーカウ        2003.10upload

 スーパーカウと言っても空を飛ぶわけではない。年間2万kg以上を乳を出す、普通の乳牛(カウ)の2倍以上の産乳能力を持つホルスタイン種乳牛のことをいう。2002年度で110頭余り報告され、大部分が北海道で飼われている。うち50頭余が道東の十勝である。最高は3万kgを超える牛がいるという。スーパーカウが出現するのは、ここ数十年の著しい平均的産乳能力の向上が背景にあり、年間平均産乳量は1960年代の4〜5千kgから2003年現在の9千kgにまで達している。Kiyoは1980年代中頃、北海道で8千kg級以上の乳牛を高泌乳牛と称し、精力的に研究を行ったが、当時のスーパーカウは年間1万kg以上を称していた。記録はいつまで伸びるか、問題はその飼い方にある。 目次に戻る

6.つなぎ飼い式牛舎           2003.10upload

  酪農家で普通に見られる牛舎である。牛(搾乳牛がほとんどである)を一頭ずつ収容する区画をストール(stall)といい、別名ストール式牛舎ともいう。牛は各ストールにつながれて飼われるが、そのつなぎ方式は主にスタンチョン(stanchon)とチェーンがある。スタンチョンは、いわゆる首かせで、チェーンでつながれるよりも自由度が低いが、牛の脱着が楽である。作業者は、牛のところに行き、給飼や搾乳(乳搾り)を行う。個体別給飼、発情や異常の発見しやすさ、他の個体同士の競合や闘争の防止など、多くの利点がある一方、省力面で劣り、多頭数飼養に向かないことから、大規模酪農家では、次に紹介する多頭数飼養に向く放し飼い式牛舎に移行しつつある。 目次に戻る 
7.放し飼い式牛舎            2003.10upload
 囲いの中に牛(搾乳牛がほとんどである)を群れ(集団)で放し飼いする牛舎で、別名ルーズバーン(Loose barn)という。囲いの中で牛は給飼や給水を受けるが、囲いの中に全面に敷き料を置き、どこでも横臥休息できるフリーバーン(和製英語、踏み込み式牛舎or Loose barn with littersが適切か)と、囲いの中に列状に配置したストールに牛が横臥休息するフリーストールバーン(Free stall barn)の二種類がある。牛はミルキングパーラ(搾乳室)に出かけて搾乳される。大規模酪農家を中心に、わが国の総酪農家の10%がこの方式を採っている。 目次に戻る 
8.ミルキングパーラ           2003.10upload
 放し飼い式牛舎と対となる搾乳専用室をいう。放し飼い式牛舎の牛群は、通常朝夕2回の搾乳時間になると、待機室に集合し、順次パーラにに入場して搾乳される。パーラは1m程度の深さの溝(ピット)がある異床式が普通で、作業者はそこに入って搾乳するために、立位姿勢で楽に作業できる。清潔で効率的に搾乳でき、大規模経営向きである。搾乳時の牛の並び方、牛の出入りの仕方で、いくつかの種類があるが、最近、牛の後ろから搾るおもしろいパーラも導入されている。 目次に戻る
9.牛房式牛舎            2003.10upload

 牛舎内を柵で囲った複数の牛房(ペン)に牛を放し飼いする方式をいう。分娩牛、種雄牛などは単飼房で、育成牛、繁殖牛、肥育牛、乾乳牛などは群飼房で管理される。後者の群飼房方式は追い込み式牛舎とも呼ぶ。換言すれば「追い込み」とは群飼いのことである。乳牛よりもむしろ搾乳のない肉用牛や育成牛に対して使われる牛舎である。この追い込み式牛舎ということばは、何を追い込むといえば牛であるのはわかるのだが、一般に意味不明でKiyoも当初わからなかった。ただこの意味がわかると、牛群を牛房に追い込んで、省力的に労働生産性を高める方式の牛舎であることがわかる。牛が横臥休息でき、互いにふん尿で牛体が汚れないよう、ぎりぎりの頭数密度で管理される方式である。      目次に戻る

10.サイロ                                2003.10upload

    畜産でいうサイロとは、密封して乳酸発酵させた材料草、いわゆるサイレージを保存する容器状の構造物である。多くの人は、レンガ、軟石、コンクリート、鋼鉄でできた塔型のサイロをイメージすると思う。だが材料草を密封できる構造であればよいので、地面に溝を掘り、材料草を入れシートで覆い、重しをのせ密封する溝型(トレンチ)サイロや底面、三側面をコンクリートなどできた水平型地上サイロ(バンカーサイロ)、などの横型のサイロ、また地下にコンクリートの縦長構造の地下角型サイロなどバラエティに富んでいる。さらにラップサイロといって、草をバウムクーヘンのようにロールにしたものをストレッチフィルムで幾巻きにも梱包密封したものもある。これは機械でワンマンでできる利点があり、平成にはいってから急速に普及している。   目次に戻る
11.搾乳ロボット             2003.10upload
  これまでの機械搾乳は、人が牛の乳頭にカップを付け、搾乳機(ミルカー)で搾乳して終了後、それをはずす作業が必要であった。搾乳ロボットは、牛が好きな穀類などのエサを入れて牛を誘導し、乳頭をセンサーで検索し、乳頭カップを装着し、自動的に搾乳した後、乳頭カップを自動的に離脱させて、牛を退出させる。人型ロボットを想像されるが、ボックスタイプが主流で、国内では、2003年現在約100台(世界では約2500台でうち1000台強がオランダ)が導入されている。導入目的は、規模拡大や省力をねらったもので、これまでの搾乳が家族労働であったものが、ワンマンで行えるメリットがある。ただ、すべての牛がこのロボットで搾乳出来るわけではなく、乳頭や乳房の形状が悪い(たとえば乳頭同士が狭い、乳房がたれている)と、センサーで乳頭カップを装着できないし、神経質な性格の牛や乳の出が悪い牛は、ロボット搾乳では不適格で、人が別途搾乳する必要がある。また維持管理上の注意や経費が必要であり、異常乳の発見など解決すべき問題も多い。      目次に戻る
12.耳 標                     2003.10upload
 牛の耳にイヤリングのような札を見た人も多いだろう。これは耳標(「じひょう」と読む)といい、英名はイヤータグという。主にプラスチック製で形、色、大きさは様々で、これに番号が刻印されているか、あるいは管理者が番号を記入して、個体識別用に用いる。2003年から牛肉のトレーサビリティ(生産流通履歴情報)開示のため、バーコード付きの10桁の識別番号を印字した耳標装着が義務づけられた。この耳標は両耳につけることになっており、従来の管理者個人の耳標が隠れて見づらくなったのはちょっと問題である。もう一つ耳刻といって、家畜の耳に切れ込みを入れて、その切れ込み位置によって個体識別を行う方法もあるが、豚や山羊などの中小家畜に多く、牛では行われていない。個体識別にはほかに家畜の皮下にICチップを埋め込んでそれを読みとる方法も近い将来普及するだろうが視認できないのが問題でもある。  目次に戻る
13.トレーサビリティ           2003.10upload

   トレーサビリティとは牛の出生、生産、流通の履歴情報の追跡ができることをいう。BSE(狂牛病)事件や牛肉偽装事件の信頼回復策として、牛の両耳に10桁の個体識別番号を刻印した耳標をつけ、その情報を伝達する法制度を2003年6月に交付した。この個体識別番号により、生年月日、性別、品種、母牛の個体識別番号、管理者の氏名、飼養地、異動日、異動内容、とさつ、死亡情報といった履歴が確認できる。この個体識別番号の台帳は、(独)家畜改良センターで作成されていて、次のホームページ:http://www.nlbc.go.jp/  を開いて番号を入力すれば、履歴を検索できる。200412月からは国産牛肉の商品ラベルにも識別番号が記載されるので、品種や飼養地などの情報を消費者が知ることができ、安全・安心な国産牛肉を購入できる機会が得られる。また農水省は、松阪牛など銘柄牛について、最も長く飼養された場所が銘柄の地名と違う時はその県名を表示することを義務づけたり(たとえば松阪牛「岐阜県産」)、輸入牛で3か月以上国内飼養すれば「国産牛肉」と認めていたがこれを廃止することも決定している。    目次に戻る

14.削 蹄                2003.11upload
  牛の蹄(ひずめ)は月に5〜10mm程度伸び、特に蹄の先が伸びやすく、過長蹄となり変形する。通常、地面で歩くことで適度に削られるが、運動不足で伸張したり、蹄の形が崩れたりするので、年2回を目安に削蹄が必要である。放置しておくと、蹄病や姿勢が不良になったりする他、乳量低下や増体不良となるなど生産面にも悪影響がでる。 削蹄は農家自身でも行えるが、人やネコの爪切りのように簡単ではなく、慣れないウシは暴れたりするので、枠場に固定して行う必要がある。体力と技術を要する仕事であり、プロの牛削蹄師がいる。不詳だが、米国では削蹄専門の学科を持つ大学と二つの専門学校があると聞く。      目次に戻る
15.粗飼料と濃厚飼料         2003.11upload
  牛の飼料は一般に標記のように分類する。粗飼料は低密度でがさがあり低栄養の飼料で、牧草、野草、稲わらなどの草類をいい、調製された乾草、サイレージはこれに含まれる。一方、濃厚飼料は高密度、高栄養の飼料で、とうもろこし、大麦などの穀類、ふすまなどをさす。もちろん低密度で高栄養、または高密度で低栄養の飼料もあり、どちらかに分類しかねる飼料もあるので便宜的な分類だが、現場の農家から学会にいたる畜産の世界では広く使われる分類である。牛に給与する飼料の栄養濃度は、粗飼料と濃厚飼料との構成比で決定されるので、生産性の高い牛には、栄養濃度を高め、濃厚飼料の高い構成比で給与される。従来、濃厚飼料は多くが輸入飼料で、粗飼料は自給飼料と位置付けられていたが、最近は粗飼料である乾草や稲わらの輸入が増えている。          目次に戻る
16.サイレージ              2003.11upload

   水分含量の高い牧草や飼料用とうもろこし(デントコーン)等をサイロに密閉保存して乳酸発酵した飼料をサイレージという。いわば草の漬け物で保存性に優れている。空気に触れないようように圧密にする必要があるため、密閉保存する際は草を短く切断する。牛へ給与する草は、(1)青刈り草、(2)放牧草、(3)乾草(干し草)、そして(4)サイレージ、がある。元々(1)、(2)は草が茂る春から秋までの季節に利用し、(3)、(4)は草が茂る季節に刈り取って調製保存した飼料で、冬季に給与する飼料であった。だが(1)、(2)は草の生育段階で栄養含量が異なることや、牛の能力向上により栄養不足になることもあり、(3)は雨が多い日本で乾燥がうまくいかないなどの問題がある。そこで1年を通してサイレージを給与する方法(通年サイレージ給与)が普及している。サイレージはサイロで作られた草に由来するので、塔型のサイロを思い起こす方もいるだろう。だがもともと地面を掘って草を入れ密封する方法がはじまりで、埋草(まいそう)と別称する人もいる。                   目次に戻る

17.乾 草                   2003.11upload

   草を刈り取って、そのまま給与するいわゆる青刈り草は、その都度刈り取りして給与するために多労である。また刈り取り時に草の栄養成分が異なる問題がある。そこで適期に一度に刈り取り、保存性を高めて調製した草として乾草とサイレージがある。水分含量12〜15%の乾草は、いわゆる干し草のことであるが、干し草と呼称する農家や関係者は少ない。乾草は、刈り取り時期が日本の梅雨に重なり、天日乾燥時に降雨にあうと栄養成分が低下し、牛の嗜好性も落ちるので、品質のいい乾草をつくるのはなかなかむずかしい。そこで輸入乾草の利用やサイレージ調製に振り向けられる傾向がある。乾草はがさがあるので、圧縮成型したり、梱包して保存する必要がある。梱包(ベール)方法は、直方体のコンパクトベール、ロール状のビッグベールがある。                       目次に戻る

18.ロールベール乾草       2003.12upload
   牧草地にバウムクーヘンのように草が巻かれているのを見かけた人もあろう。これがロールベール乾草である。昭和50年に入り、それまでの箱形のコンパクトベール乾草に変わり、急速に普及した。箱形のコンパクトベールは、草地でコンパクトベーラで作られたベール(梱包)を荷台に載せたり、貯蔵場所に保管するのに、人力に頼る重労働であるのに対し、ロールベールはその過程が機械化され、ワンマンでできるのが普及した背景にある。当初ロールベールも1.2×1.2mと大きく、ビッグベールとも呼ばれたが、その後狭い草地向けのミニロールも開発、市販されている。     目次に戻る
19.飼料イネ   2004.3upload
   わが国は、米の生産調整により、100万haが水田として使われず、うち60万haが麦や飼料作物などが作付けされ、40万haが遊休水田になっている。そこで牛飼養農家の粗飼料自給率を向上させ、耕種農家と畜産農家とが連携する理念のもとに、ここ数年、遊休水田に栽培可能な飼料イネを作付けする取り組みが助成のもとに行われ、平成15年度で5000haと急増している。飼料イネは、飼料向けの専用品種がいくつか育成され、サイレージ向けに調製されており、稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ)とも別称されている。今後さらに普及させるには、乾草などの既存の飼料にくらべ、栽培技術の向上による単収の増加やコストの低下が求められる。   目次に戻る
20.クローン牛  2004.4upload
 クローンは互いに遺伝的に同一な個体を指し、植物では、挿し木や球根など無性生殖による増殖個体もクローンである。家畜のクローンは、(1)受精卵に由来する細胞からクローンを作出する受精卵クローン、(2)体細胞に由来する細胞から作出する体細胞クローン、とに分けられる。(1)は人工的に一卵性双子を生産する技術であり、牛では米国で1987年に世界で初めて、日本で1990年に成功し、H15年現在わが国で約690頭誕生している。(2)は、1996年に英国で、有名なクローン羊「ドリー」が、牛では1998年に日本で、世界で初めて誕生し、H15年現在わが国で約370頭誕生している。クローンは、遺伝子の操作・改変を行うものではなく、安全性に問題があるという指摘はないが、(2)については、さらにデータ収集や取り扱いを検討中である。(1)由来の肉や乳等の生産物は、日本を含め各国とも市場に出されているが、(2)は市場に出荷、販売はされていない。クローン技術の問題点として、死産と生後直死が多い点が上げられ、今後の技術改善が必要とされている。 目次に戻る

21.里地・里山放牧    2004.4upload

  民家裏、果樹園跡地、桑畑跡地、転作・休耕田など中山間の居住地域で牛を放牧することを里地・里山放牧という。高齢化や過疎で増加している荒廃地や遊休地を有効に活用し、環境改善や、放牧による省力化を目的としている。必ずしも本来の放牧地を利用するわけでないので、軽量で婦人や高齢者でも設置しやすい電気牧柵を利用する。牛飼養農家が遊休地や荒廃地を草刈りを目的に牛を貸し出す「出前放牧」など生産目的以外の放牧も含まれる。牛は手間のかからない子取り生産用の肉用妊娠雌牛を放牧するケースがほとんどである。    目次に戻る

22.シバ草地放牧         2004.5upload
   シバは牛の放牧によって形成される安定した短草群落である。草丈が短く生産性が低くみえるが、再生力が旺盛で牛の採食に耐え、乾物率が高く生産力は意外に高い。土壌栄養が低い条件で安定化し、施肥をすると生産量は2-3倍に増えるが、他の植生に移行する傾向にある。またシバを維持するには、放牧密度(単位面積あたりの放牧頭数)を適正に保つ必要があり、0.5〜1.5頭/haがよい。新たにシバ草地を造成する場合は、種子による発芽率が低いので栄養茎を植えて増殖させる。近年の牛の放牧衰退で減少しているが、低投入、低コスト、省力で牛を飼うことができ、傾斜地での土壌保全能力が高く、ビロードのような美しい景観は再評価されていい。目次に戻る

23.ふん尿処理     2004.10upload

 わが国で一年で排せつされる家畜ふん尿は、9400万tで、うち乳用牛3100万t、肉用牛2600万tである(H11年度)。処理法はたい肥化と液肥化とに分かれる。乳用牛では、(1)ふんと尿に固液分離し、ふんはたい肥、尿は液肥、(2)ふん尿と水分調整材(オガコなどの敷き料)を一緒にしてたい肥、(3)ふん尿を一緒に液肥、に処理する。たい肥は流通可能だが、液肥はできないので、還元する土地面積が広い北海道では液肥処理が多く、北海道以外ではたい肥化処理が主流である。肉用牛は(2)の方法が主流である。     目次に戻る

24.たい肥         2004.10upload

  家畜の生ふん(尿)に酸素を供給して、ふん中の好気性微生物の活動により、糖類、デンプン、タンパク質など有機物を分解させ、作物に悪影響を及ぼさない土壌改良資材や有機質肥料にすることをいう。酸素を供給をしやすくするために、おがくずなどの副資材を混合して、適宜切り返しを行い、通気性をよくする必要がある。たい肥は元々家畜ふん尿を含まない藁、落葉、野草などをたい積、発酵したものを指し、厳密には厩肥と称するのが正しいが、近頃、畜産関係者はたい肥を厩肥の意味で使っている場合が多い。  目次に戻る

25.液肥          2005.01upload

 ふん尿を牛舎の地下貯蔵室に落下させて泥状化発酵させる処理、またはふん尿を固液分離して搾汁液を発酵させる処理で、スラリーともいう。ふん尿を空気に触れさせる曝気(ばっき)を行いながら撹拌する好気的発酵により、液温の上昇、臭気の軽減、黒褐色、pH8〜9にして腐熟を進行させる。広域流通できないので広い還元圃場の確保のほか、散布時の臭気の防止、傾斜地や降雨時の流亡防止など周囲の環境への配慮が必要である。               目次に戻る