おまけ

 

 

 たわいもない会話を交わしながら待つこと十数分。注文した料理が運ばれてくる。
 可愛らしい絵の描かれた食器に盛られた、色鮮やかな料理。チキンライスの上の旗や、うさぎりんごに刺さった星型の楊枝に、啓介がきらきらと目を輝かせる。
 そんな弟を見つめる長男は、ひどく満足そうな顔をしていた。母親である自分ですら、向けられた覚えのないような、満ち足りた、笑み。
 ――無理もないか。
 改めて振り返れば、医師としての仕事と、病院の経営に忙しく、なんでもそつなくこなす長男に、弟の世話を任せっぱなしにしていた自分に気付く。
 広い家に、兄弟二人きりで取り残してきたようなものだ。多少相互依存が強くても、しかたのないことだろう。
 ――もっと大きくなれば、自然と兄弟離れもするでしょう。
 そう考えた目の前で、啓介が不思議な動きをした。
 自分のスプーンでチキンライスをすくうと、それを自分の口元でなく、兄の口元に差し出したのだ。満面の微笑み付きで。
 またも茫然と見守るしかない自分の前で、さすがの長男も驚いたような顔をした。

 だが、それも一瞬のこと。次の瞬間には、それこそ惚れ惚れするような綺麗な笑みを浮かべて、弟の差し出すスプーンを口に含んだ。そして明らかに期待を込めて待つ弟に、同じように、スプーンを差し出す。
 そしてそれは、二人の皿が綺麗に片付くまでずっと続いたのだった――。


 周囲をはばかることなく、二人の世界を展開する我が子たちを前に、やはり育て方を間違えたと彼女が頭を抱えたのは言うまでもない。

 


今度こそおわる。

 


 

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