啓介はシアワセだった。
拗ねてみせたら涼介が甘やかしてくれるからだ。
毎晩入浴後、啓介の部屋に遣ってきて毛虫に刺された箇所に薬を塗ってくれている。
白い指先に軟膏をとって丁寧に擦り込んでいく優しい仕種。
うっとりと見とれてしまう。
「じゃあな、足出して寝ても構わないから、お腹だけには蒲団かぶってろよ」
「…うん」
「おやすみ、啓介」
額にキスをして寝かしつけてもらう。
「おやすみ」
カユいのは厄介だったが、これならば治りが遅くともイイや、なんて思いながら啓介は擽ったそうに蒲団の中で笑った。


「…治るまであいつに救急箱は預けられないしな」
あっという間にあの部屋の何処かに埋もれて出てこなくなるに違いない。
「ま、治るまでだし、あいつは回復力早いし、いいか」
定位置へ救急箱を収めると涼介は自室へ引き上げていった。
弟の甘い心、兄知らず。
兄はけっこう、ヒドイのである。

 

 

 

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