馴染んだ涼介の肌が掌に心地好い。
これ以上ないくらいに優しく扱って、ぎりぎりまで焦らす愉悦が啓介の背をも微かに震わせる。
「……ぇす、けっ…」
これから齎されるであろう刺戟に慄いて名を呼ぶ声までがあえかに掠れる。
「アニキ…」
耳殻の裏側に唇を押し当て囁いただけでも涼介の息を大きく乱す様が愛おしくて手の動きを滑らかにした。
毛虫騒ぎから二日たって漸く涼介とすることができて、これまでのツケを一気に払ってもらうつもりである。
浮き出た鎖骨に噛み付き、息を呑んで跳ね上がった胸筋を唇で宥めた。
普段は白く冷たい肌が自分の手で燃える様に熱く薄紅に染まってゆくのが堪らない。
「!……け、すけっ…あし…!」
「んー? ちゃんとカワイがってやるから…」
「ちが…、右っ!」
「? 何?」
「かゆ…っ、電気、点けて…っ」
強い力で押し戻されて、啓介は渋々ベッド下のセンサーライトに足を伸ばして触れる。
行儀が悪いと窘めを受けるかと肩を軽く竦めたが、何の言葉もなくて訝しげに涼介を振り返った。
「…アニキ?」
「啓介…バカ、お前のせいだ…」
明かりに晒した右の足、赤くなって腫れ始めた箇所が二箇所。
毛虫がくっついたと騒いだ場所。
「お前が、血行良くしたせいで痒みがでたんだ…!」
「な、どういう理屈…っ?!」
「もう今夜はしない。痒いから」
ベッドの足許の方へ追いやられていたバスローブを身に纏ってベッドを降りた。
「えー?! そんなっ…アニキはドコいくの?!」
「一階行って薬取ってくるんだ。それまでにお前、自分の部屋戻っておけよ」
「そんなっ、ヒデェ!」
ドアを開けようとノブに手を掛けた涼介がベッドの上で泣きそうな啓介を肩越しに見遣った。
「…しょうがねぇな………じゃあ、俺の足に薬を塗る栄誉を与えてやるか」
「?! それのほうがオニアクマだぜ?! アニキっ!!」
叫びも聞かず涼介は階下へ下っていってしまった。

 

 


 

「啓介FANに殺されそう」と出し渋ってらしたのを

無理言ってUPさせていただきました。

(ごめんなさい、仁礼様)

でもこれはこれで可愛い遣り取りだと

思うんですけど。

いかがでしたでしょうか?

<あずさ>

 

 

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