邦題「PARTY7」

原題「PARTY7」


評者   

評価  

ひとこと

ほーく

この毒を全身に浴びよ!

マキトモ

ファッション、小物がちょっと凝っているだけ。予告編だけ見れば半分は用済み。石井克人を好きな人が念のため見ればいい。

<コメント>

 映画は(映画評も、だが)、見る人によって味わい方が異なり、それにつれて、評価にも相違が生じる、という原則論を踏まえた上で、私は本作を、主に生理的見地から酷評させて頂く。本作について好意的な論評も、いくつかのサイトで読ませて頂いたし、本作の放つ独特のエネルギーに好意を抱く人が存在するのは理解できる。私マキトモが本作を拝見したのも、当サイト管理人であらせられる、ほーく様の絶賛に拠るのだが、どうも私個人と本作「PARTY7」との間には、致命的な相性の悪さが横たわっているようだ。

 本編には、一応ストーリーらしきシナリオの流れが存在する(オチも付いている)が、それは、さして重要ではない。本作は、灰汁強き登場人物たちの、その場その場での「振るまいの妙/意思の不疎通の妙」を味わうタイプの映画である。だが、その登場人物同士の対話が、残念ながらイモだと言わざるを得ない。総会話量の約4分1は、

@「分かったよ」VS「本当に分かったの?」

A「本当に分かったよ」VS「どうして分かったって言い切れるの?」

B「分かったって言ってるでしょ」VS「めんどくさいから分かったって言ってるだけでしょう?」の類の連続。

 つまりネタと人物が違うだけで、延々、同類な会話の蒸し返し(もちろん確信犯的に)。「あぁ、またか」という感じだ。そして肝心のネタ(ネタバレすまない)というのが、

「空からウンコが降ってくる/お前ハゲだろう/覗きは楽しいネ/だってキミは処女だって言ってたじゃないか(絶叫)」…etcと、悲しいくらい芸が無い。

 また会話に行き詰まると、すぐガン飛ばして、会話相手を怒鳴ったり、ドついたりする。このへんの、ブチ切れたモン勝ちな気風は、テレビのバラエティコントを、(テロップ/効果音/アドリブ抜きで)そのまんま画面に持ち込んでいるみたいで、脚本の貧しさにはウンザリだった。

 冒頭のアニメシーンはカッコイイという声多数だが、ズームインしたりズームアウトを多用し、アングルを流してゆく手法がTVアニメでは珍しい(というか予算がかかる)だけ。内容的は、スマイル全開(ヤブ睨み&歯茎むき出し)で、ピストルを乱射したり踊りまくったりする、というテンションに頼った退屈なものであった。銃を乱射する直前にスマイル全開顔がドアップになるのだが、そのアップの際の歯茎が、何度思い出しても気持ち悪い(このへん生理的見解です)。ただ、色数を極限まで押さえ、コントラストを強く打ち出したアメコミな色調は、ま、クールと言えるのだろうな。アニメは本編とは別の作品である。

 本作は、決して手抜き映画ではない。監督&スタッフの煮詰った意図が、画面の隅々まで反映された野心的な作品だ。会話の(強引に噛み合わせを外したような)齟齬、揃いも揃って救いの無いバカなキャラ、監督と±5歳の日本育ちの男でないと反応困難なクセの強いグッズやセット、取って付けたようなベタなオチ…ことごとく確信犯である。愚かで下品な人物をゴッタ煮にして笑おう、という監督の狙いが、明確かつ濃厚に反映された点は、まぁ日本映画界に一石を投じた、のかもしれない。が、いかんせん下心が剥き出しで(今更、アルマーニの偽物→「アルマーネ(本物)」で笑えと言われても困るのだ)、後味は悪い。

 比べるまでもないが、ネーミングセンス、お下劣、ギャグ、会話の齟齬、カメラアングル、ことごとく、「クレヨンしんちゃん劇場版」が上である。

(マキトモ)

 いやあ、マキトモさんに論破されて、どーしようもないんだけど、せめてこの映画がツボにはまった者のひとりとしてこの作品を弁護しないとね。
 この作品を楽しいと思う客層はつぎのようなところに惹かれるのだと思われる。
 1に石井克人ファンのやや盲目的な層。たぶん、わたしはこの層だと思う(爆)。特に、石井克人には、「鮫肌男と桃尻娘」で虜にされたクチだ。この全編から放たれる毒といったら、観る側からすると一種のマゾヒスティックな興奮を味わえる。
 2に、そこに加えられる、過剰なまでに個性的なキャスト陣。我修院達也ファンや浅野忠信ファンなどがそうだろう。
 3に音楽と映像(アニメーション的技法含む)の融合。
これらのどれかに捕まった哀れな者達は、嬉々として映像や音楽をむさぼり、その奥底の毒に染まっていく。それを自覚しているのとしていないのとどちらが重症なのか・・・。でも、次回作が出たらまた観ちゃうんだよなあ。

(ほーく)


出演(PARTY7) 永瀬正敏@三木シュンイチロウ、浅野忠信@オキタソウジ、原田芳雄@キャプテンバナナ、堀部圭亮@ソノダシンゴ、岡田義徳@トドヒラトドヘイ、小林明美@ミツコシカナ、我修院達也@若頭
共演 島田洋八@出崎親分、大杉漣@精神科医、松金よね子@坂上のおばちゃん、津田寛治@深ヅメ(白クマ)、森下能幸@森下、岡本信人@オキタリュウジロウ
監督 石井克人
脚本 石井克人
絵コンテ 石井克人
編集 石井克人・土井由美子
アニメーションディレクター 小池健
キャラクターデザイン 小池健
アニメーション制作 マッドハウス
撮影 町田博
照明 木村太朗
録音 森浩一
美術 都築雄二
造形 原口智生
効果 坂本典之
Visual Effects OMUNIBUS JAPAN
音楽 ジェイムス下地
OST 購入済み。お薦め度5
2000年作品 104分

参考:http://www.cs-tv.net/pia/200011/m001142.html