邦題「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

原題「Harry Potter and the chamber of secrets 」

2002/12/1@MOVIX倉敷


評者   

評価  

ひとこと

ほーく

  前作からの成長なし

<コメント>

 続編の売り上げも好調、映画化第1作も予想通り大ヒットと、追い風のなかで公開されたシリーズ第2弾。今作品の評価の要は、「進歩なし」である。
 前作の評をご覧いただきたいのだが、長所である「子供が喜びそうな映像」は今回も快調であるものの、難点として指摘した点、つまり、あくまで原作に忠実、脚本に緩急なし、が解決されていない。
 しかも今回は、エピソードを詰め込みすぎ、1シーンが長すぎるとの印象を受けた。これらの原因が主にどこに起因する物なのかは、別に語りたいと思う。
  キャスティングに付いて。ダニエル君@ハリーが既に声変わりを始めており次々作で降板と寂しい限りだが、今回も無難に演技をこなし、エマ@ハーマイオニーは相変わらずかわいいし(違)、ルパート@ロンがやっと役柄が安定してきておりうれしい限り。ベテラン助演陣も安定感があり、安心出来る。リチャード・ハリス@ダンブルドア校長の逝去には哀悼の意を表したい。ケネス・ブラナー@ロックハートの滑稽な演技は是非堪能していただきたい。
 と言うことで、今回もファンタジーの復権の牽引役として、この作品を「3」と評価したい。

 とまあ、ここまでは個人的な嗜好とある程度距離をおいて述べたつもりである。これからは少々批判めいた文章になるので,原作及び映画のファンである方は読まないほうが賢明である。

 ということで、キャスト&スタッフ一覧は、こちら

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こころの準備はいいですか?

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 まず、そもそもわたしはこのシリーズの原作が好きではない。また、映画において欠点となっている点の大半は原作に起因していると思っている。もちろん、映画化したときにそれを補えなかったということで映画製作スタッフにもその責任はあるだろう。
 さて、どこが好きでないのだろうか。それは端的に言えば3点。1に、マグル(魔法が使えない人間)界に対するあからさまな(否定的な・不快な)描写である。ハリーの伯父一家の醜悪な事、おびただしい。彼らの人物造形は、ハリーがいとも簡単にホグワーツを心のふるさとにするための装置なのだが、彼らがでてくるだけで吐き気がするほど不快な感じがする。それは彼らの持つ属性(魔法が使えない→魔法使いを畏怖する)に起因するのではなく、彼らの人間性の問題なのである。2作目ではあまり、マグルは出てこないが、概して好ましい描写でないと思われる。
 2に、クィディッチのルールの不備と競技性の低さである。今回でも,見事に露呈しているのだが、この競技の得点バランスの悪さには、めまいがするほどである。現存する各種スポーツも長い年月をかけて変遷してきたので、成立(原作者が創作)して間もないクィディッチが洗練されていないのは致し方ないとはいえ、あの競技をあんなルールで展開されてはせっかくの特殊効果で繰り広げられるゲームも退屈で仕方がないというものだ。
クィディッチが映像化されるときに目玉になるのは当然であったので、できれば映画製作段階でなんとかもう一工夫してほしかった。優秀な(はずの)他のプレイヤーが気の毒でならない。尚、クィディッチについての好意的な解釈を試みている方々もいるようである。
 最後の3点目、工夫のない謎解きが流れを分断している。第1作目の、チェスのシーン。同じく第1作目の、映画では省略されたパズルのシーン。第2作目の、秘密の部屋の謎、日記の謎、彼の正体。まわりくどい上に魅力的ではないその回答。すべて省略しても構わないほどの出来である。
 さて、この3点の欠点に付いては、ほぼ原作者の設定が原因である。そして、それを気づいていたのか気づかなかったのか、そのままに映画化した映画製作スタッフ、彼らも同罪であろう。わたしは、すでに主張しているように、クリス・コロンバスには「子供が喜びそうな映像」を演出する才がある、と思う。問題は、それ以外のところである。それがどのあたりまで脚本家・原作者・制作者・監督に左右されたのかなのだが、一鑑賞者のわたしには知る由もないのである。ただ、この3点が克服されない限り、わたしのなかでの評価は「3」どまりであるだろう。

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☆ヤマ@間借り人の映画日誌さんの評は、こちらへ(ネタバレ!)


主演 ダニエル・ラドクリフ@ハリー・ポッター
共演              エマ・ワトソン@ハーマイオニー・グレンジャー、ルパート・グリント@ロン・ウィーズリー、ケネス・ブラナー@ロックハート先生、ロビー・コルトレーン@ハグリッド、リチャード・ハリス@ダンブルドア校長、アラン・リックマン@スネイプ先生、マギー・スミス@マクゴナガル先生、ジョン・クリース@ほとんど首なしニック、ウォーウィック・デイビス@フリットウィック先生、リチャード・グリフィス@バーノン・ダーズリー(ハリーの叔父)、フィオナ・ショー@ペチュニア・ダーズリー(ハリーの叔母)、ハリー・メリング@ダドリー・ダーズリー(ハリーのいとこ)、マーク・ウィリアムズ@アーサー(ロンの父)ジュリー・ウォルターズ@モリー(ロンの母)、トム・フェルトン@ドラコ・マルフォイ、ジョエイソン・アイザック@ルシウス(ドラコの父)、ディビッド・ブラッドベリー@フィルチ、クリスチャン・コールソン@トム・リドル、シャーリー・ヘンダーソン@嘆きのマートル、ジェマ・ジョーンズ@マダム・ポンフリー、ミリアム・マーゴーリズ@スプラウト先生、サリー・モーティモア@マダム・ピンス
監督 ※クリス・コロンバス 
原作 ※J・K・ローリング著「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
脚本 ※スティーブ・クローブス 
衣装 リンディ・ヘミング
美術監督 ※スチュアート・クレイグ
撮影監督 ロジャー・プラット
音楽 ※ジョン・ウィリアムズ
編集 ピーター・ホネス
OST 未購入。
パンフレット 泣けるほど情報量が少ない。@700円
2002年作品 2時間41分
参考URL 公式サイト:http://www.harrypotter.com

※は第1作に引き続き担当していることを表す。


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