邦題「パンと植木鉢」
原題「Un Instant d'Innocence」フランス語?「パンと植木鉢」ではない←マキトモさんのつっこみ(笑)
評者 |
評価 |
ひとこと |
ほーく |
2 |
ややこしすぎるんだよー。付き合う身にもなってくれー(笑) |
マキトモ |
2 |
何重もの入れ子構造の、高尚で大変凝った筋。世評は高いが割引(人によっては忍耐)が必要だ。娯楽作ではない。 |
<コメント> |
自身の起こした警官襲撃事件を元ネタにマフマルバフがドキュメンタリー映画を撮影する、という劇中劇な大筋を背景に、マフマルバフ/刺された元警官/警官役の少年/カムフラージュ役の少女の4者の「劇中内現実」と「劇中内演技」が、各人の思い出や思惑含みでイラン情緒豊かなバザールを舞台に錯綜する。全部見終わって、あとから思い出し直して、やっと監督の狙いが飲み込める。観客に対して、非常に挑戦的な作品だ。 以下に本作の退屈な点をいくつか、 @思わせぶりな脚本上の仕掛けがたくさん仕込まれているが、「その場での反応を狙ったボケ」の割には切れが悪く(微笑ましいと言う人もいる)、「後々への伏線」の割には押し付けがましく、今一つピンと来ないから、とまどってしまう(警官の制服を注文に手間取るシーンなど)。削ったほうがシナリオが引き立つ演出、というか無駄な仕草が多い。 Aこの手のメタな作品では重大な戦力となるはずの、「小物の象徴的な扱い」が雑。 B賛否が分かれるのは、主役の元警官役の、まるで規律の洗礼を浴びた形跡のない、警官臭くない田舎風な演技だろう。気難しく頑固で、ずうずうしい、中途半端な彼の人間臭さが、脚本の流れに水を差す、というのが私の抱いた印象。 Cラストシーンを除いて、映像には別に大した工夫はない。意外なくらいオーソドックスな絵。 D登場人物の感情がストーリーに反応/反発/発酵しない。ストーリーには結構起伏があるのに、登場人物の喜怒哀楽の揺れがほとんど描かれていない(これは誰も指摘していないはずだ)。「出てきたまんまの人物像」を妙にキープする。 複雑な筋書きの割に、総じて刺激に乏しい本作だが、彼の国の国情に照らして考え合わせてみると、思春期の少年少女が手も触れ合わんばかりの距離で見詰め合ったり、会話したり、バザールを駆け回ったりするだけで、イラン的にはドキドキする映像「=絵になる」なのかもしれない。この辺は憶測だ。日本も昔は、原節子と笠智衆が畳に正座しているだけで、結構悪くないムードだったからなぁ。 本作を貶している評を、お目にかかったことがない。それどころか、ベタ褒め評、ベタ褒め紹介文ばかりなのは何故だ? 昔のゴダールのように、取りあえず褒めなければならない存在なのだろうかマフマルバフ。本作の美点は参照サイト(無断リンク)を読まれたし。 蛇足ながら、彼の妻や娘も映画監督をしているという。先日(2001年3月)、最年少監督というマフマルバフ娘が北野武に「日本の古い映画には良いのがたくさんあるんだから、しっかり見なくちゃ駄目よ」という趣旨の説教をしている映像が芸能ニュースで流れた。いやはや元気なお嬢さんだ。今思いついたが、北野武にも、自分の週刊誌編集部襲撃事件をネタに劇中劇をやって欲しいものだ。もちろん武軍団総動員で、軍団各位の現実と妄想と絶叫が深夜の六本木(←推定)に錯綜する…。キャラクター的には、こっちの方が絶対面白いはず。深夜、泥酔した勢いで焼肉屋からフォーカス(文春だったかな?)編集部へと雪崩込んでゆく竹刀木刀を持った武軍団の群れ/絵になるぞ…。いや「パンと植木鉢」には関係ないですね、失礼しました。 |
出演 | モフセン・マフマルバフ、 アリ・バクシ、アマル・タフティ ほか |
監督 | モフセン・マフマルバフ |
脚本 | モフセン・マフマルバフ |
撮影 | マームード・カラリ |
音楽 | マジド・エンデザミィ |
OST | 未購入 |
1996年作品 | 78分 |
http://www.bekkoame.ne.jp/~darts/pagej352.html
http://www.eigajyuku.com/mahu.html
http://kawara-ban.plaza.gaiax.com/00/00072702.html
http://www.elle.co.jp/premiere/reviews/r000916.htm
http://www.watch.impress.co.jp/movie/roadshow/contents/20000721_01.htm
http://www.mars.dti.ne.jp/~youkai/bnstars/stars41.html#04107