展覧会の紹介

北海道・現代写真家たちの眼2001  2001年11月1日(木)〜25日(日)
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)

 いやー、 すっかり書くのを忘れてたなあ。
 このシリーズも今年で7回目。東川賞などこの手のイベントをプロデュースしてる勇崎哲史さんのセレクトで毎年開かれています。

 今回は、遠峰徹弥(網走管内湧別町)、佐藤憲悦(札幌)、岡本洋典(空知管内雨竜町)、菅原隆(旭川)、瀬戸隆夫、村上正次、酒井広司(以上札幌)の7氏が出品しています。

 でもねー、「青」ってくくりで写真家を7人選ぶっていうのも、けっこう無理があるというか、つらいんじゃないのかなあ。勇崎さんが苦労して選んでるのも分かるけど。画家なんかと違って毎年とか隔年で個展や公募展で作品を発表しているわけじゃないから「今年のベスト写真家」なんていうセレクトもできないだろうし。といって、テーマなしにえらぶっていうのもこれはこれで難しいんだろうな。

 それとさー、会場のパネルにいろんな文章が書かれているんだけど、勇崎さんの感想なのか、写真家自身の言葉なのか、分かりづらいぞー。はっきりいって、勇崎さんの感想なら要らないような気がするな。だって、見て難しい写真じゃないもん。作品理解に歴史的背景が必要ってわけでもないしさ。

 写真家の顔ぶれは、道内のことですから、いわゆるネイチャーフォトの分野から4人。それ以外の現代写真から3人。まあ、もっとぼけーっとした人が選考してたら全部ネイチャーフォトの人になっちゃってたかもしれませんから、これはこれでバランスの取れた人選ってことになってるでしょう。会場の統一感みたいなものはないですけど、まあ、それはぜんぜん構わないと思います。

 さて、能書きはこれくらいにして、それぞれの作品について、かんたんに述べておきます。
 さっきけちをつけたけど、選ばれた写真自体はさすがに見ごたえがありました。

 遠峰さんは1935年生まれ。流氷の写真家です。30年以上もレンズを向けてます。流氷が押し寄せてくる海岸に住む地元の強み、この分野では第一人者といって間違いないでしょう。道新から写真集も出てます。
 言葉にしちゃうと陳腐だけど、「自然の厳しさ」、あらためて痛感しましたねー。「凍るヒトデ」「吹雪の中の海鳥」なんて、よくもこんな過酷な環境でみんな生きてるなーって思うよ、ほんと。もちろん「凍る波」「氷球の壁」など、流氷のつくる造型の不思議さってのも見どころだけど。筆者は、自然の厳しさの方に目がいったなあ。

 佐藤さんも35年生まれ。ウインタースポーツの写真家として札幌オリンピックなどで活躍したあと、冬山など森林風景の写真に移行しました。98年に写真集「北方樹影」を出版しました。
 佐藤さんの写真って「おおっ、これが自然の驚異だ!」という感じじゃなくて、もう少し落ち着いた目で、森の四季の営みをじっくり見つめてるっていう感じだよね。今回は大木、老木の写真がよかった。円山公園の桂とか、黒松内の水楢…

 岡本さんは57年生まれ。地元(といってもだいぶ山奥だけど)の雨竜沼湿原をテーマにした写真で知られ、「北の写真家集団DANNP」などのグループを主宰するなど活発な活動を続けています。
 今回7人の出品者の中で、ほんとに青い写真を撮っているのはこの人だけですな。
 でもねー、やっぱ湿原をずっと見てきた人だけあって、きれいなんですよ。「湿原霧漂」なんて、印象派の絵みたいだし。「青の細波」なんかも、波を写したのに、CGよりも純粋な美しさっていうか。蛍の光跡をとらえた「夏夜の宴」。うっとりするなー。

 菅原さんは46年生まれ。どーでもいいけど、この人には会ったことないなー。
 青、というよりは、動物たちの生態を追っています。キツネやクマゲラ、シマリスたちが文句なしにラブリーな表情を見せていて、女子高生とかが「キャーカワイー」と言いそうな写真が多いです。面白かったのは、魚をくわえたカワセミ。だって、背後の看板に「池の魚をとらないでください」って書いてあるんだもん。

 瀬戸さんは65年生まれの最年少。東川で会ってるかもしれないけど、覚えてないなー。もしお会いしてたらごめんなさい。
 この人はモノクロで、人物写真です。どこが「青」かっていうと「青春」です。若い人が若い人を撮ると、けっこう陰のある思わせぶりな写真になることがあるけれど(ただ周りの人を撮っただけのコギャル写真は論外)、瀬戸さんは明るいんだよなー。無理の無い明るさ。
 とくに、札幌の中心街のホコテンで、たぶんマーチングバンドかなんかの時だと思うんだけど、若い女性がサキソフォンを首から下げて舌を出してる一枚があるんだけど、これ、いいなあ。瀬戸さんの写真のトレードマークになるんじゃないかと思ったくらい、印象的な作品でした。

 村上さんは55年生まれ。勇崎さんのパネルでは「青の街」ってなってるけど、青い写真はあまりありません(^.^)。ほかの人より壁面が狭いのが気になるなー。
 出ている写真は、9月にスタジオで開いた個展「PIX他己愛」のときと同じ。空だったり、大通公園のプロレスだったり、女性だったり。ただ、選び方で、いろんな物語が浮かび上がってくるのが不思議です。

 最後は酒井さん。60年生まれ。グループ展「写真の交差」の常連だったので、見覚えのある方も多いかもしれません。ハッセルブラッドを使ったモノクロの風景写真です。
 風景とはいえ、酒井さんの写真ほど、絵はがき的な写真から遠いものはないでしょう。じゃ、つまらないかと要ったらそんなことは全然無くて、北海道らしい広大な風景をとらえているのです。雪原。海。山。森…。いわば、無名の風景です。
 しかし一枚ずつに、撮影地の緯度と経度、撮影時間の数字が、題名の代わりに付けられています。その数字を読み取るとき、無名の風景は急に固有性を帯びて私たちの前に立ち現れてきます。その差が、酒井さんの写真の面白さではないか、とも思います。
 

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