展覧会の紹介

第17回北の日本画展 2002年5月13日(火)〜19日(日)
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
2002年8月2日(金)〜11日(日)
千歳市民ギャラリー

(敬称略)

 道展・日本画部の会員、会友、入選者が年に1回開いている展覧会。

 全体的には、一昨年の疲れが出品者にのこっていた?昨年にくらべると、力作が多かったような気がします。
 作品はすべて額装で、軸装や屏風はひとつもありませんでした。
 それでは、なんのくふうもなく、見た順番に(^_^;) 

 千葉繁(後志管内倶知安町)「蒼空翔」。
 ぜんたいを群青のトーンが支配してます。悠揚たる山容を前に、タンチョウとおぼしき渡り鳥が飛んでいきます。大きな太陽(あるいは満月)。金粉がちりばめられています。スケール感ある光景です。筆者はこういう群青が理屈ぬきにすきなので、おおいにうっとりして見ていました。

 谷地元麗子(札幌) 作品名失念
 近年多い、ひげの濃い若い男性をモデルにした一作。むんむんと男くさいっす。札教大在学中。

 千葉晃世(札幌)「ポプラ」
 これくらい画風をひんぱんに変える人もめずらしいと思います。今回は、青を背景に、金粉をまきちらしてポプラの木を表現しています。点やしぶきの分布だけで、樹影をあらわした、ちょっとめずらしいこころみ。

 川井坦(札幌)「樽前」
 ことしはいいです。すごくシンプルな風景画。前景をひろくとって、ひろがりを出しています。

 中野邦昭(札幌)「暑寒別岳早春」
 夜景のシリーズ。しばらく札幌が多かったのですが、今回は、暑寒別岳を遠くのぞむ小さなまちを、縦長の画面に描いています。手前に海がありませんから、深川、沼田など、空知の地方都市を、高台からスケッチしたのでしょう。題は「早春」になっていますが、ぜんたいが雪に覆われ、日没後の静けさが支配しています。筆者の好みから言うと、札幌のような大都市よりこっちのほうがいいですね。ひとつひとつの家にともる灯りが、なんともいえず郷愁を誘います(札幌では数が多すぎるし、派手さがでてしまう)。風景自体がありふれているのも、かえって効果をあげていると思います。丁寧に描きこまれた木立ちも、すてきです。

 吉川聡子(札幌)「東の風」
 鳥を手に抱いて、木の高いスツールに腰掛けて、向こう側を見ている女性。壁には、レオナルド・ダ・ビンチの素描を連想させる羽根などの絵が貼ってあります。こう書くと、たしかにモティーフはいつもの吉川さんとおなじなのですが、画面全体はだいぶ整理されてきた印象があります。

 陳曦(札幌)「四号員の扉」
 ずっと中国の少数民族を正面から描いてきた陳さんが、古めかしい建物の扉を題材にしています。木、鉄などの質感の描写はさすがで、堂々とした存在感をただよわせています。

 北口さつき(札幌)「ひと」
 存在感ある人物といえば北口さんの地黒の裸婦も相当なものですが、今回は着衣の女性です。長いワンピースの模様と、背景の文様とが、相互に入り混じりあって、日本画における装飾性というものをかんがえさせられる一作になっています。

 佐藤綾子(札幌)「くらし」
 そうかあ、こういうタイトルをつけるかあ。描かれているのは、さやえんどうとふきん、金属の器だけです。豆のさや剥きかなにかをしている、日常のささやかな一こまです。筆者は、この作者にはもう長いこと会ってませんが、出品作に制作したその時その時の感情が露呈するタイプなので、いつも作品を見るのをたのしみにしています。この絵を見る限りでは、平凡な日々のくらしにいちおう満足しているのではないでしょうか(そうであってほしい)。

 朝地信介(留萌)「棲まう場所」
 期待の新人。無人の、無機的な都市を、日本画のマチエールで描くというミスマッチが面白い。今回は、一時期テレビでよく見た「長銀ビル」のような、凹凸のある未来的な高僧ビルが画面を埋め尽くしています。

 平向功一(札幌)「CASTLE IN THE AIR」
 小さな木馬が登る螺旋の塔が画面の中心。洋画ふうのマチエールと、抑えた色調は変わっていませんが、背景に古星座図をもってきたあたりは、これまでの寓意画路線から、いくらかロマン派的な方向にむかいつつあるのかもしれません。小品ひとつで即断はできませんが。

 このほか、袴田睦美、益山育子(以上札幌)、安永容子(恵庭)は、正面から植物をとらえていました。今橋香奈子(札幌)は、今後がたのしみ。竹澤桂子(札幌)は、あいかわらず若々しいです。

 (2002年5月24日)

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