夏見正隆のソノラマ作品
     「レヴァイアサン戦記」と「わたしのファルコン」


「レヴァイアサン戦記」 

第1巻「帝都東京分裂」(1994年9月刊行)より2年にわたってかたられてきた本シリーズもついに完結。

 東日本共和国(山多田大三)の世界征服の野望により勃発した異星の超兵器争奪騒動も多大な犠牲を
だしながら(一応の)終息を迎えました。異星の知生体との接触から「究極戦機」への誕生まで、ちと拙速
すぎるキライもあったけど・・・ま、いいか。でなきゃ、何巻かかるかわかったもンじゃないですからね(笑)

その究極戦機のカツヤクと、葉狩真一の開発した生物化学兵器「ラムダファージ」の威力により、さしもの
レヴァイアサンも壊滅。めでたし、めでたし
と思いきや、「ファルコン」同様、続編が構想中らしく読者としては楽しみなことです。
 にしても、第5巻で明らかにされた西日本帝国の腐敗ぶりたるや、物語の前半部で語られていた東日本
共和国の悲惨さに比しておさおさ劣るものでない印象をうけました。こうなると、「ネオ・ソビエト」女帝のこと
ば(第4巻155ページ)がいやに説得あるものとしてひびいてくるのはある意味で当然かもしれません。異
星の知生体が何で「ネオ・ソビエト」を選ばなかったのか、いちど「本人」の意見を聞いてみたくなったりする
のですがねぇ。
 以下は、本シリーズ全5冊のタイトルおよび刊行日。
  
第1巻 「帝都東京分裂」 (1994年9月15日)
第2巻 「東日本共和国侵攻」 (1995年1月15日)
第3巻 「激突!西日本帝国」 (1995年7月15日)
第4巻 「女王蜂出撃!」 (1995年11月15日)
第5巻 「レヴァイアサン殱滅」 (1996年11月15日)


夏見正隆「わたしのファルコン」 

 全5巻でもって、一応完結・・・というのは、どうやら「第2シーズン」が構想中のようだからである。
ラストもそれっぽく終わってる。第5巻が刊行されて、はや半年。なかなか、再開する気配がない。
僕としては、続きを待ち望んでいるのだけどなぁ。

 ストーリーとしては、日本が太平洋戦争を戦況有利なうちに米国との講和にこぎつけ、戦後の混乱
期の中で日本が東京の真ん中でまっぷたつに分断された戦後世界の物語、いうならば、パラレル・
ワールド・テーマの作品といえるだろう。ご存知のように、この「ファルコン」は同じ作者の「レヴァイア
サン戦記」の補完的作品、というか後日談の位置にあるのだが、その作風は少々違っている。

 自分の好みとしては、「ファルコン」の方があっている気がする。ごく普通の女の子たち(一人は女優
だから、そうふつうでもないだろうが)がひょんなことから異星の超兵器のパイロットに選抜され、地球
の平和のためにしなくてもいい苦労をするハメになるというお話・・・なのだが。
そんなに深刻なストーリー展開でないのがいい。
地球を救うために超兵器(「究極戦機」)でもって死地へと赴こうとするヒロインの女の子にむかって、
彼女の上官である女性自衛官が引き留めるシーンがあって、ぼくはそこが好きである。
「もっと自分をだいじにしなきゃだめだ。状況にながされて、死ににいくことはない」と。
 こういうじつにヒューマンなせりふが言えるキャラは素敵だと思うし、またそういう存在を許容する組織
ってのもいいなぁと思うのだ。
この物語に登場する自衛官たちは、正直云って、「こいつらなんぞを国防の任につかせといてだいじょう
ぶか?!」と考え込まざるをえない連中ぞろいなのだが、ま、そこが本シリーズの魅力の一つとなってい
るのは確かであろうと思う。

 でもネ。ほんとに「ファントム無頼」を愛読書にしている自衛官って実在するンだろうか。いたらいたで、
怖い気がするのですがねぇ(笑)

 1960年、千葉県うまれというこの作者。趣味は航空機の操縦というキャリアを生かした筆力から独特
の小説世界を生みだし、読者を魅了している。
作品としてはソノラマ文庫から処女作品「レヴァイアサン戦記」「わたしのファルコン」につづき「海魔の紋
章」(全4巻)がある。
近年ではトクマノベルスから「僕はイーグル」シリーズを刊行。注目をあつめている。
そして、先日発売された「たたかう!ニュースキャスター」。かって、刊行されたソノラマ文庫版に加筆・訂
正したノベルスバージョンがある。
現在、もっとも注目されるエンターテイメント作家の一人である。
                        (2001,11/23)