勝手に鑑定「鉄道入場券」
明治期に発行されたものが貴重と評価されるのは、特急券や単なる乗車券と同じですが、入場券を勝手に鑑定する場合には @発行時期と入場料金、Aパンチの有無、B駅間の格差などの要因も考慮しておかなければなりません。
1.発行時期と入場料金
まずは、駅を固定して、発行された年代順に入場券を比較してみましょう。昭和3年に開業した東京駅を例にとり、発行された入場券を古い順に並べたのが下表です。非常に不完全なリストではありますが、概ね、古いものほど
残存枚数が少なく、貴重と鑑定される傾向が見られるのは、他の切符と同様です。
T8 A型 拾銭 右書き | 大正末期〜昭和初期 A型 十銭 左書き | S12 A型 10銭 | S16 B型 10銭 |
S26 B型 5円 赤地紋 | S26 B型 5円 | S27 B型 10円初期券(旧字体使用) | S27 B型 10円2期券 |
S40 B型 10円(赤刷券) | S42 B型 20円(赤刷券) | S53 B型 60円(カメレオン作戦) | S54 B型 100円(カメレオン作戦) |
上表で古いものよりも新しい方が貴重なのは、S26赤地紋5円券とカメレオン作戦だけ。一番古い”T8拾銭右書き券”が一番貴重なのには変わりありません。東京駅のように、今でも入場券を売っている駅については、以上のような傾向がみられますが、廃止、改称、無人化などの理由で、入場券を発売しなくなった駅の場合は、どうなんでしょうか?
次に示すのは、昭和40年12月25日、岩室に駅名改称された和納駅入場券のビフォア&アフター。
40.8.13 和納 | 40.12.24 和納(最終日) | 40.12.25 岩室(初日) |
3枚とも赤線10円券。最終額面の最終日付にこだわる正統派の入場券収集家が多いため、最終日付の”2”が、恐らく一番人気かと鑑定されます。が しかし、それほど不人気な駅ではなかったとはいえ、ローカル線小駅の赤帯入場券は残存枚数が少ないため、”1”と”2”の評価には、さほどの差はないようです。”3”は、切符鉄ちゃんにとっては、コレクション価値皆無の赤帯入場券ですが、昔々の国鉄では「モッタイナイ」の精神で、資源を大切に利活用していたことを示す貴重な証拠資料かもね。
上例は、最終日券と 同じ額面のその他の券との比較でしたが、最終額面よりも安い額面の券と最終日券とでは、どうでしょうか?
40.8.14 柚木 赤線10円券 | 42.8.31 柚木 20円券(42.9/1廃止) | 37.5.14 三留野 赤線10円券 | 43.9.30 三留野 20円券(改称最終日) |
上の2例は、20円時代に廃止、改称された駅の最終日券と赤線10円券。勿論、最終日券は貴重ですが、「入場券は赤一条でなくっちゃ」という団塊の世代以前の収集家の間で、赤帯入場券は今もなお、根強い人気があるらしく、最終日券と同じくらいの値段で取り引きされているようです。下は、昭和44年10月1日、西広島に改称された己斐駅の入場券で、左から順に、赤線10円券、白券20円券そして駅名改称最終日の30円券。同様の理由で、一番不人気なのは、恐らく、20円券。最終日30円券と赤線10円券の人気は、同程度かと鑑定されます。
41.3.2 己斐 赤線10円券 | 43.11.24 己斐 20円券 | 44.9.30 己斐30円券(改称最終日) |
2.パンチの有無
昔々のその昔、先輩から「パンチ無し入場券を集める輩は鉄道ファンの風上にも置けない」と指導された若かりし chabin は、パンチ無し入場券を持ち帰るたびに後ろめたい気分に襲われたものでした。あれから四十有余年、切符屋さんのご意見は「入場券にパンチは禁物」で、”パンチ有り”は”パンチ無し”の1/3から1/10と鑑定されると聞いて、もうビックリ!
船川 パンチ無し | 船川 パンチ入り | 甲斐大泉 パンチ無し | 甲斐大泉 パンチ入り |
雑餉隈 パンチ無し | 雑餉隈 パンチ入り | 押角 パンチ無し | 押角 パンチ入り |
が しかし、パンチ無しにこだわりすぎて、パンチ入り券の購入を躊躇していると、押角みたいなチョー不人気駅の赤帯入場券には、二度と再び お目にかかれないかもよ。
3.駅間の格差
使えない鉄道入場券の価値は、どの駅で発行された切符かで、大きく違うといわれます。いわば、駅間格差が存在するようです。これを、特急券に於ける特急列車の格差(?)と比較してみましょう。
1.常備特急券2等 第1列車(つばめ) | 2.常備特急券2等 第9列車(さちかぜ) | 3.小倉駅10円入場券 | 4.筑前芦屋駅10円入場券 |
1と2は、単なる特急券についての常識問題の第2問に出題したうちの2枚で、共に列車番号が印刷された東京印刷場発行の二等車用斜め三条特急券。列車番号が”1”(下り「つばめ」)か”9”(下り「さちかぜ」)かの違いを除けば、殆んど同じ様式の切符です。この時代の特急券は、デザインが素晴らしいので、収集家に人気があります。特に、「さちかぜ」の常備券は残存枚数がとても少ないため、手に入れるのが難しい希少券ではないかと鑑定されます。でも、現状では、両者のお値段に10倍の格差はないようです。
一方、3と4は、門司印刷場の10円1期入場券で、駅名の違いを除けば、殆んど同じ様式の切符。3は、最近、切符屋さんの即売会で売れ残っていたのを200円で購入した入場券。4は、
50年ほど昔に chabin の家族が原価10円で購入したものだけれど、もし、これを切符屋さんが5万円の高値で売ろうものなら、この駅に思い入れのある入場券鉄ちゃんや転売を目論む業者様達の間で激しい争奪戦が繰り広げられる恐れがあるかも。その駅間格差は実に200倍以上?
他にも、特急券を流用した裏面赤三条入場券や赤線10円券用紙を流用した赤一条20円券など、入場券の価値を左右する要因にはいろいろとありますが、これ以上、ダラダラと勝手な鑑定を続けていると、年を越してしまいますので、またの機会にさせて頂くことにして、この辺でお開きにしたいと思います。長い間、chabin
の独断と偏見と見た目によるデタラメな鑑定に お付き合い下さいまして、誠に有難うございました。良いお年をお迎え下さい。