8.深名線の鑑定

 三丁目の夕日の時代の深名線は、大勢の鉄道員が働く 実に立派な鉄道路線でした。が、しかし、飯田線や飯山線と並んで、入場券の売れない不人気な駅が多かったことを新春ネットツアー2008でご紹介しました。当時の赤線入場券がネットオークションに出品されようものなら、目玉が飛び出るほどの高値が付くのは必定と思われます。どのくらい貴重なのか、その発行枚数を知りたくなりますよね。そんな時の強い味方が、駅年表様のHPで公開している昔々の鉄道統計年報。切符の素人 chabin が独断と偏見と見た目と鉄道統計年報を駆使して 昭和30年代に無人化された蕗ノ台、白樺、西名寄と昭和20年代に廃止・改称された宇津内、初茶志内の発行状況を大胆不敵に鑑定してみましょう。

駅名 入場料金(円) 残存赤線入場券 備考
S34* S35 S36 S37* S38* 発行時期等 発行日付 券番
蕗ノ台 16.10/10開業、39.4/1無人 0 50 0 155 50 10円札幌1期 S38.2.17 0048 秘境日高三股のHP
白樺 16.10/10開業、36.4/1無人 20 50 10円札幌1期 S35.9.25 0015
西名寄 12.11/10開業、36.4/1無人 57 0
(参考)
雨煙別 6.9/15開業、 60 20 10 320 60 10円札幌1期 S40.4.19 0018
天塩弥生 12.11/10開業 305 70 20 280 70 10円札幌1期 S41.4.15 0025
*:S34、S37、S38は旅客雑収入

 上表は、蕗ノ台、白樺、西名寄の昭和35年度と36年度の入場料金を示したもの。この表をもとに、次のような推理をしてみました。

(1)昭和34年度からチョー不人気になった蕗ノ台駅

 S34〜36年度の3年間に僅か5枚しか発行されなかった蕗ノ台。
秘境日高三股のHPによれば、S37年度も ほとんど売れていなかったということなので、10円券はS27〜34年度で41〜42枚、S35〜38年度で6〜7枚と推理されます。その後、無人化(S39.4.1)迄の1年間に高々10枚とすれば、50〜60枚程度しか発行されなかったことになります。

(2)10円券の発行枚数が20枚に達しなかった白樺駅

 無人化の前年度(S35年度)に発行された5枚のうち、少なくとも2枚は同じ日付(S35.9.25ヨ)であることが分かっています。
0015の券には赤鉛筆のチェックがない(この日最初に売れた券ではない)ので、当日、0015よりも若番の券が1枚以上は売れていたことになります。仮に、残る3枚全てが0015の後に発行されたとしても、10円券は18枚しか発行されなかったことになります。ところで、ご存知の方も多いと思いますが、同じS35.9.25に発行された蕗ノ台の10円券が複数枚生存しています。両駅では、S35年度の発行枚数が共に5枚で、少なくとも2枚が同じ日付(蕗ノ台が昼、白樺が夜)という摩訶不思議な偶然の一致が認められるんです。もしかして、入場券鉄ちゃんかあるいは鉄道関係者が、その日の午後、蕗ノ台で5枚、日が暮れてから白樺で5枚、礼儀を尽くして購入したと推理したくなる切符の素人 chabin でした。

(3)入場券コレクターが辿り着けなかった西名寄駅

 10円券の生存が確認できていない幻の駅・西名寄は、無人化の1年前に1枚も売れていませんでした。蕗ノ台と白樺で5枚づつ買い占めた入場券鉄ちゃんは、どうして西名寄を買い占めなかったのでしょう? 考えられる理由は二つ。一つ目は、白樺で買い占めた時 夜になったため、そこで買い占めを終えてしまった。二つ目は、
名寄行き18時39分発下り最終列車に乗り、西名寄で途中下車したその時、既に無人化されていたか(*)、あるいは発売を拒否されて、買い占められなかったというものですが、こんな実に良くない推理は 如何でしょうか? 

*:西名寄の無人化日は、北海道鉄道百年史によればS36.4.1ですが、
深名線「その時、有人駅」のchabin鑑定ではS35.9.15(一般運輸営業廃止日)ですので、9月25日には駅員さんがいなかったかもね。

駅名 入場料金(円)
S12 S13 S14 S15 S16 S24* S25* S26* S27*
宇津内 16.10/10開業、24.4/1廃止
初茶志内 12.11/10開業、26.7/20天塩弥生に改称 1 2 8 3 2 233 110
(参考)
雨煙別 6.9/15開業、 2 239 70 140 90
蕗ノ台 16.10/10開業、39.4/1無人 219 344 90 530
白樺 16.10/10開業、36.4/1無人 1 120 112 15 0
天塩弥生 12.11/10開業 125 50
西名寄 12.11/10開業、36.4/1無人 2 2 150 137 60 70
*:S24〜S27は旅客雑収入

 上表は、宇津内と初茶志内の戦前(S12〜16年度)と戦後(S24〜27年度)の入場料金を示したもの。これによって、宇津内と初茶志内の5銭券の発行枚数を以下のように鑑定することができます。

(4)「宇津内駅の5銭券」 もしかして発行されたかも?

 鉄道統計年報に宇津内が登場するのは、入場料金「―」(1円未満)のS16年度。もしかすると、数枚の5銭券が発行されたかもしれません。S24年度以降は駅名が記載されていない(S23年度迄に無人化された?)ので、5円券の発売はあり得ないかも。

(5)手塩弥生の10倍以上も売れていた「初茶志内駅の5銭券」

 開業からS16年度末迄の間に320枚以上の5銭入場券が発行された終着駅・初茶志内は、手塩弥生に改称して 単なる普通の駅になったその時から、チョー不人気駅に転落してしまいました。色鉛筆のチェックがたくさん入った
S41.4.15発行の10円券は、なんと券番0025。改称のS26年7月からS40年度末迄の15年間に僅か24枚しか発行されませんでした。初茶志内5銭券の10分の1以下だったんですね。昔々の鉄道統計年報は、手塩弥生や雨煙別の10円券は蕗ノ台の半分も発行されなかったことを伝えてくれるホントーに強い味方ですね。

【参考】

 西名寄は、S12年度からS16年度の間に40枚以上の5銭券が発行されているので、5円券や10円券よりも生存している可能性が高いかもしれません。白樺も、開業したS16年度だけで1円(5銭券20枚)を売り上げていますから、10円券よりも発行枚数が多かったんですね。

深名線の実にイイカラカンな推理、如何だったでしょうか。入場券鉄ちゃん、深名線ファンのお役に立てれば幸いです。でも、これまで通り、鑑定は、chabin の独断と偏見と見た目を駆使したデタラメなものですので、全く信用できません。いつものように、この鑑定結果から生じる いかなる損害と儲けに関して、chabin は一切の責任を負わないものとし、ご覧頂く方もこれを了承するものとします。