廊下で寝ていた前夜、ベッドに戻って寝たものの5時前に目が覚める。
飲みすぎで顔がむくんでいる。シャワーでも浴びようと思ったけどお湯が出ない。
洗濯物をたたむ。食欲は無いけど朝食にしようか。ホットサンドとコーヒーを準備して食べ始めた頃、朝焼けの空が目についた。真っ赤。なんて綺麗なんだろう。
カメラを持って外に出る。飲みすぎでむくんだ顔に冷たい風が気持ちイイ。まだ7時前だ。
朝日はアッという間に白んだけれど空気が美味しいので、そのままお散歩する。
どこから来たのか首輪の無いワンコが寄ってきて私の後を付いて歩く。
ドゥーテ・アカーサ(お家へ帰りなさい)・・・私の顔を見上げながら付いてくる。
毛色は黒と茶、ハスキーみたいな顔した短足の小型犬。
他の散歩中の犬とはちあわせしても、おとなしく私の足元に寄り添う。本当に私の飼い犬みたいでカワイイ。犬と散歩なんて子供のとき以来だ。
もともと犬は好きではなかったのにルーマニアに来てから大好きになった。 ルーマニア人は誰もが動物好きで野良犬まで可愛がる。犬もまた賢くて聞き分けがよく愛嬌がある。ルーマニアでは犬に限らず馬、牛、羊、豚、鶏、ブラショフでは熊までも、動物と人間の生活が密接なためか生き物に親近感を覚えるのだ。
ワンコ同行で散歩は続く。
電灯をつけて走るトロリーバス、かたわらではバス通りだというのに放牧された馬が2頭、草を食べている。ブチブチ食いちぎる音だけ、冷たい空気の中で聞こえる。
スタンドバーの横を通り過ぎると立ち飲みしていた男たちが叫んだ。
「ウイテ・マ、ドゥーテン・プーラ・メア!」(赤面用語)
じゃかましいわ。ほっといて!気持ちのいい散歩の途中だってのに・・・ さぁ、おいでワンコ