リスク社会論第5回

多数性というリスク(続)

2009年11月4日

志田基与師

 

1.政治革命と産業革命(すでに終了)

 

2.類似による連帯から有機的連帯へ

 

エミール・デュルケーム
 

 

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(1)環節社会と高度な分業の社会

 他者(の成果)に依存することは、二重のリスクに直面することである。

そのリスクとは、1)信用できない他者を信用してしまうこと;2)信用できる他者を信用しないこと。

リスクをとらなければ、社会の範囲は縮小し、われわれの生活は平均的により貧しいものとなる。

市場社会、グローバリゼーションの問題は、すでにずっと昔からあった。(→囚人のジレンマ、レモン)

 

(2)アノミーとアノミーの諸類型

 連帯・規範は、予測可能性・計算可能性(berechenbarkeit)を意味する。調整ゲームあるいは右側通行。

 他者の行動が予見できないこと、感情的紐帯が失われること、同属感情の欠如はアノミーの一種である。

 アノミー的自殺/犯罪の社会的機能/ワイドショーによる状況の定義。

 

 

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 マートンによれば、文化的目標と制度的手段が両立しないとき、人はアノミーに陥る

(マートンのアノミー概念はとりあえず社会心理学的なものである)。

アノミーは逸脱行動をもたらす。たとえば、官僚制の「形式主義」もその一つ。

ルールやマニュアルを作っておけば人々はそれに従う、ということは、ない。

 →厳罰主義の落とし穴
     →ラベリング(レイベリング)理論
     →予言の自己成就。

   →コンプライアンスにかんする教訓
  他者が多数であるということは、こうした逸脱のチャンスを急速に大きくする。

   →アイデンティティ? →自己実現?

  その反対に、他者が自分と同等か自分の延長であると感じられる社会は健全である
     →アノミーの対義語としての連帯

 

(3)準拠集団と相対的不満

 コミュニケーションが「多数」であるように

 社会の階層化・社会のセグメント化は不安定の原因となる。
     →生活の基盤が異なる他者は、「赤の他人」「傍若無人」

 

(4)「囚人のジレンマ」と「しっぺ返し戦略」:信頼

 囚人のジレンマは、こちら参照Liberal Paradox その一

 

  目に見える「仲間」から目に見えない「仲間」との連帯/リスク。
     生産者の「見える化」、消費者の「見える化」?

 

3.不確実なコミュニケーション

 

 (1)通じているのか? どうすれば通じるのか?

  通じていることの日常性と、通じないことの恐怖。

  通じている/通じていない、を判定する客観的根拠、確実な証拠を我々は持たない。

そうした確実性や証拠そのものがコミュニケーションの一部であり、何かを知るにはその前提が必要。

ルール懐疑主義は無限背進に陥る。

 

  筒井康隆「最悪の遭遇」

 

   

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(2)文脈

 コミュニケーション「能力」? 「力」はリスクをヘッジしたものである。

  「文脈」がなければ、何も通じない。「文脈」を無視すれば、とんでもないことが起こる。

  コミュニケーションは、メッセージと文脈(メタメッセージ)とを同時に伝えるものである。

  文脈は必死に再生産していないとすぐにへたってしまう。

 

 (3)文脈の両立?

  コミュニケーションの非常に重要な要素が、他者に対する説得(同じ文脈に立ち、メッセージを受容すること)である。

  となれば、メッセージが両立しないだけでなく、文脈の両立不可能性も大きなリスクとなる。

  →山本七平「空気の研究」。

  近代的な「普遍的で一様な文脈」こそ本来不可能であって、「リスク社会」はその不可能性があらわになったというだけ?

  →近代的な文脈を相対化する社会学。

  効果的なコミュニケーション戦略構築の必要性。それにはコミュニケーションについての「哲学」が必要。

 (4)もっとも不確実なものは実は「自己」である。

 

 

 

課題テーマ:リスク社会について (Theme Paper “On Risk Society”)

 (1)メールで志田まで送って下さい(E-mail to Shida)。件名に「リスク社会論」あるいは「Risk Society」と明示すること。

 (2)内容にふさわしい適切なタイトルをつけて下さい。参考引用文献については適切な形で明示することが必要です。

(3)その他の規制はありません。(No other regulations

(4)締め切り、20091231日(Dead line Dec. 31st. 2009

 

 

参考文献

 アクセルロッド『つきあい方の科学』ミネルヴァ書房

 ガルブレイス『不確実性の時代』講談社学術文庫

 デュルケーム『自殺論』岩波文庫

 デュルケーム『社会分業論』講談社学術文庫

 ベック『世界リスク社会論』

 マートン『社会理論と社会構造』みすず書房

 『岩波講座リスク』

志田基与師(個人HP)