職探し
(私なりの職探しに関するアドバイスを書いてみたい)

最も理想的なことは言うまでも無く、十分な言葉が使えて、手に何だかの技術と経験を持っていることだ。しかし、残念ながらそれを20代の人間に求めることは酷なことだ。ましてや日本の教育方針を考えると、学校を出たばかりの人間で、実社会ですぐに通用する。それも海外で通用する人間が育っているようには思えない。そうなると一番理想的なのは、数年この国で何だかの分野で仕事に就いて、多少でも実践を積んだ後の方が良いということになる。

だが、いかんせんそれでは、最も旅をする良いタイミングの時期を外すことになる。それはあまりにもつまらないことだ。だから,、ここでは飛び込んでいって何とかなりそうな仕事について書いてみようと思う。ただ、分かってはいると思うが、仕事を探す、仕事を取るということは、現地の人間の仕事を奪うことに繋がっている。そのことを十分理解しておいてほしい。後は本人の行動力。それに尽きる。


大陸的ジョーブ・ハンティング

日本のような小さな国ではまずお目にかかることはないが、大きな国、オーストラリアだとかアメリカのような国に行くと、ピッカーという仕事を専門にしている人がいる。ピッカーを日本語に訳すと摘み取り人、収穫人とでも言うことになろうか。国中の農場を渡り歩き、農作物の収穫に従事している人達で、フルーツのピッキングをしている人はフルーツ・ピッカーと呼ばれている。

大きな国では北と南、東と西で大きく気候が違うわけだから、年がら年中その国のどこかの地区の農場で、何だかの作物が収穫されている。また、農場の規模も大きく、収穫期になると大変な数の労働者が必要となり、それがこういった収穫専門の仕事を生んでいるわけだ。彼らは1つの地域で数ヶ月の収穫の仕事に従事し終わると、次は遠く離れた別の地域の農場に移動して働く。それを年がら年中繰り返している。

例えばオーストラリアのビクトリア州中心部。私が一時いたシェパートンという街の周りには数多くのりんご園、洋ナシ園があるが、ここに来るピッカー達は最初の1月半はりんご。それが終われば次に洋ナシの収穫で1月半を過ごす。そして、収穫シーズンが終われば今度は北のクイーンズランド州などに移動して行き、トマト、砂糖キビ、ジャガイモなどのピッキングに入る。

オーストラリアだけをみてもこの他、サウス・オーストラリア州のワイン用ぶどうの収穫等、1年を通じて国内のどこかでピッキングの仕事はある。また、アメリカにしても事情は同じようなもので、りんごのワシントン州、ぶどうのカリフォーニア州、マサチューセッツ州などなど、食料自給率が高く、農作物の生産率の高い大きな国には、こういった仕事は天候不順がない限りあるのである。

私の場合、アメリカに関しては不法滞在していた関係で職安に足を踏み入れることはしなかったが、オーストラリアに関していえば、国内の各職安でこのピッキングの情報は取れていた。確か職安のカウンターで、各州、各地区のピッキングの時期、収穫品目等の書かれたリストが貰えたと記憶している。後は自分でそこに出向くだけなのだが、そうなると一番の問題は何といっても足と宿舎になる。

想像できると思うが、大きな国の農場はとにかく規模がでかい。それが町から何マイルか離れて点在している。だから足は必ず必要になる。ただ、宿舎に関しては、ピッキングのメイン・シーズンに入っていて、その農場にさえたどり着ければ何とかなる可能性はある。というのも、こういったシーズン中にピッカーを多く集める必要がある農場では、簡単な宿舎を設けているところが以外に多いからだ。それが利用できれば安上がりということはいうまでもない。ただし何もしてはくれないが。

ついでに書いておくが、こういった国内を転々として働く人達は大体がモーター・キャンプを利用する。向こうのモーター・キャンプにはキャンピング・カーが常設してあって、誰でも長期で借りることができる。小さなショップあり、ランドリー、シャワー等何でも揃っているので大変快適である。勿論テントを持ち込んでもこれらの設備は利用できる。

フルーツのピッキングは大体が2、3ヶ月のものである。これを過ぎれば次の仕事に再チャレンジしなければならないのだが、ひとつだけすぐ近くにチャンスがあることも書いておく。それは一大農場地帯には必ずそこで取れた作物を加工する工場があるということである。果物や野菜の缶詰工場は意外と多い。この仕事は申し込みの順番で仕事が貰えるが、意外とおいしい仕事だ。働く意思があるなら必ずついでに調べてみることを進める。

ワーキング・ホリデーのビザを持っているなら、オーストラリアの工場関係の仕事は大変魅力的といっていいだろう。先にも書いたフルーツなどの缶詰工場以外にも、牧畜の盛んなクイーンズランド州などに行けば、加工肉の工場でもやはり申し込み順番制で仕事を取ることが可能だ。あとウエスト・オーストラリア州などに行けば魚の加工工場などもあるが、いづれも共通していえることは、朝早くから工場に出向いて並び、早めに順番を取ることが肝心ということだ。

もし不法で仕事を探すのなら、大きな国の地方というのは以外に目に付きにくいものだ。それが一番の利点ではあるが、反面出向く時の足の問題があり、金にはなってもきつい仕事が多い事があげられる。多少きつくても目的のためと頑張れる気持ちと機転が大事と思っておいてほしい。そういえば私達が旅をしていた頃、北欧にある仕事でひとつ良い話があった。

ノルウェーの北部。私はノルウェーにはいたがここまで上がっていないのではっきりした地名は分からないのだが、たぶんナルビック周辺に魚の加工場があり、何人かの日本青年達はここで世話になっているはずである。オスロから大変離れているのと、地方の小さな町で労働人口が少ないため、以前は不法でも良い賃金で働かせてもらえたということである。経済が安定している反面、自然が厳しい場所での職探しは意外とメリットが大きい。こういったおいしい話は長期の旅をしている仲間から入って来る。

それともうひとつ石油産出国での仕事だが、これもうまくいけば実入りが大きい。特に建築、土木関係のエンジニアの経験があれば狙ってみる価値はある。ただし、仕事の場所が俗に言われる陸の孤島。要するに砂漠の真ん中での仕事になるから精神的にきついのと、仕事を取るまでの努力が必要だろう。これに限っては日本企業に当たってみるのが手っ取り早いかもしれない。


都会型ジョーブ・ハンティング

まずワーキング・ホリデー・ビザという、特権を持って仕事探しをする場合を少し書いておくが、このビザさえあれば何の遠慮もなく、パーマネント、カジュアル、テンポラリイの各職安に出入りできる。確かに一時滞在者という立場で正社員(パーマネント)の仕事にトライすることは気がひけるかもしれないが、我々の仲間の中にはけっこういたし、私もオーストラリアではこれだった。ここは割り切って、相手が何も言わずにパーマネントで仕事をくれるなら厚かましくても貰っておこう。

パーマネントの一番いいとこは何と言っても保障があることだ。だから私は厚かましいかもしれなかったのだが、辞める時に短期間しか働かなかったにもかかわらず退職金らしきお金まで貰った。こういったことが何故可能だったかは、たぶんあの国が移民を多く受け入れる国で、日本で外国人が働く時の扱い方、日本人の受け止め方と違い、私という人種が彼らには特別でなかったからだと思う。あの国では白人も、アジア人も黒人も同じであり、こういった保障制度が守られているからだ。

ただこれはあくまでも技術分野、専門職分野で運良く可能なだけで、普通はなかなか難しい。そうなるとカジュアル・オフィースを朝早く訪ねてその日の仕事を貰ったり、あるいは民間のパーソナル・オフィースに頼んで仕事を探してもらうというのが一般的な職探しになるのだが、欧米には良く知られたもうひとつの方法がある。それは週2回新聞に掲載される求人広告だ。

だいたい世界中の先進国では水曜日と土曜日の週2回、朝刊にこういった特別の広告欄が設けられる。特に土曜日のそれは水曜日の比ではなく、求人広告に限らず、仕事の募集欄、車の売り買い、アコモデーション情報、不動産情報、あるいはプライベートな広告などなど、別冊で非常に多くの広告が掲載される。私も土曜日には朝早く起きて新聞を買いに行ったものである。

新聞を読んで仕事を探すには、勿論仕事の内容を理解できて、自分で電話を相手の会社にかけてアポイントを取る。ということができないとどうしようもない。厳しいことを言うようだが、長期の旅を考えるなら、これができることが条件のひとつだと私は思っている。何故なら、それほど新聞の求人広告を見て仕事を探すことは大事であり、最も仕事を得るチャンスがあるからである。

私はそれをした。それができるように最初のオーストラリアで努力をした。オーストラリアという国のワーキング・ホリデイ・ビザで大手を振って仕事にチャレンジできる条件で、これができるよう頑張った。他の章で、旅の最初にワーホリが使える国を持って行く方が有利と書いたが、その一番の理由はこれである。長期の旅の土台を固める。最も肝心なジョーブ・ハンティングの基礎を築くには、ワーホリは願ってもない利用できる制度といえる。

さて、ではそれ以外の国ではどうすればいいか。不法で働く場合はということになるが。これはもうわたしに他人の運をどうこうすることなどできっこない訳で、これから先は本人の努力。本人の能力としかいいようがない。私は人とのめぐり合わせで生き残ったが、人間関係がうまく築けるか、運を呼び込める他人との繋がりをうまく築けるかは、あくまでも本人次第である。

「ノック・ザ・ドアー」。知らない街で仕事を探して、仕事がありそうな店を一軒一軒訪ね歩くのも手段である。また、これは私の経験から言うのだが、現地の日系企業を訪ねるのもひとつの方法である。私の場合、現地に日本的センスを持った人間がいなかったために、何度か日本レストラン、日本的室内インテリアのコーディネイトなどを頼まれて手がけたことがあるが、これは意外とひとつうまくこなせれば次に繋がるものだ。

そして、器用な人はもうそれ自体が売り物になることも忘れてはならない。海外で日本人大工等の職人仕事をしている人には、海外に出て初めてそういった仕事に首を突っ込む人が少なくない。そういったことができる人は器用さをうまく生かしている人である。何をどう生かすか。それをどう仕事に繋げるか。それも本人次第である。

欧米人は自分を過剰な位売り込むが、日本人にも多少のはったりがあってもいいのではないかと思う。ただし、毎日を漠然と生きないで、昔から技は目で盗めと言われるように、今から人のしている仕事はどんなささいなものでもよく観察しておいた方がいい。どんな仕事でもようく注意して見ておけば、それがきっと生きるのは、私の経験から言っても間違いない。


私はあえて海外にある日本レストラン、日本人経営のショップなどについて書かなかった。困った時には何とかで、私も窮地に陥りかけた時にこういった店に職を求めかけたことはある。だが、残念ながらあまり良い話は聞かない。言葉が話せず、こういった仕事に走る人間は多い。ワーホリで出ている人達の、おそらく半数以上はこういった仕事に就いている。

足もとを見られようが、日本とまったく同じ人間関係がそこにあろうが、自分にはどうしようもないんだという諦めで割り切れるなら、それはそれで致し方ない。公的場所での日本社会、私的場所での他民族社会。毎日両方見れるのだから楽と言えば楽である。アメリカの日本レストランで働けば、チップだけで良い収入も得られる。

ただ、それにどっぷり浸かると本来の目的が何だったか分からなくなるし、旅の足が止まることが往々にしてある。そういった人間は沢山いる。そのせいだかどうだか知らないが、気の利いた日本人オーナーの中には、自分の店で働ける期間を最大何ヶ月と切っている人もいる。こういう人にうまく出会えればラッキーなのだが、残念ながら本当にあまり楽しい話は聞かなかった。

海外に出てまでも日本社会で働くのは嫌だ。これ位の気概がある奴でないと長期の旅などできようもない。やる気のある奴はどこに行っても惜しまずに自分で出かけて行き、ちゃんとジョーブ・ハントをしている。自分から出て行くから新しい人との出会いがあり、その先にチャンスが巡ってくるのだ。海外での職探しなんて、つまるとこ行動力だ。