不法滞在、不法就労について


その旅が他人から見て無謀だろうが。その旅が他人から見て無責任なものであろうが。また、他人に不利益を与える事を海外において実行しなければならないとしても。自分が目指すものがそういった諸々の事を踏み台にしなければ成しえないことなら。あえてそれを行う。それが超長期の世界一周の旅を完成させる絶対的な条件である。それを恐れ、それに躊躇するなら。そこに可能性は存在しない。



通常、ノー・ビザで、旅行者として滞在を許される期間は、長くて半年である。この期間にそそくさと旅の資金を稼いで、その国をで出れるかというと。これはあまりにも厳しい。ある程度の金を貯めてとなると、やはり1年は欲しい。確かに他の手段として、期限切れの前に隣国に一時出国して、再度入国するという手はあるが、これも発展途上国相手ならまだしも、先進国相手となるとそう簡単にいかない面がある。余程うまい理由でもない限り、再入国の際疑われるからだ。

となると、もっとも手っ取り早い方法は、そのまま居続ける。不法滞在を実行するしかないだろう。日本の、特に現在の逞しさの足りない日本の若者には理解しがたいことかもしれないが、世界中の先進国、或いは、政情的にも経済的にも安定を保っている国には、いったいどれだけの不法滞在者がいることか。通過国の安宿や、そこいらのレストランの裏でも覗けば、必ずそういった人間に会うことができる。ただ、我々旅人と違う点は、彼らはその国に永住を求めて来ているか、もしくは第三国への出国希望者だということだ。

島国生まれの日本人にはピントこない感覚かもしれないが、どうも大陸育ちの彼らには、よその国に入り込んで、そこで法を無視して暮す事など、別段大したことではないように感じられる。それはたぶん、彼らの先祖や、彼らの先駆者達が、同じような方法で他国に出て行った歴史がそうさせているのだと思う。それに生まれた時から多くの違った人種を目にして生きていれば、たとい違った国に行こうが、知らない町に入ろうが、所詮地球上のある一点からある一点に移り住むくらいの感覚処理で済むのだろう。

こんな彼らと同じ感覚、気分で、知らない街で暮らす勇気があれば、オーバー・ステイ、イリーガル・ジョーブも実行できるだろう。逆に言えば、法を無視して滞在するためには、これ位の割り切れる神経と覚悟がいるということだ。言っておくが、私は決してこれをけし掛けるために書いている訳ではない。法を破ることは誰が考えても良いことではないのは分かりきったことだ。だが、それをしなければ超長期の旅など実現不可能だから。現実問題として海外で生き抜くための手段として、残念ながら必要不可欠な条件だから書く。勿論、分かってはいるだろうが、運悪く捕まれば、全てはそこで終わるかもしれない。

さて、オーバー・ステイに限っては、世界にはしやすい国とそうでない国がある。勿論、居たいだけ居たら、後はどうでもいいと思っているなら、どこだってオーバー・ステイはできる。世界各国の入国審査は千差万別だから、どの国がどうとは言えないが、なかには将来再入国が難しいという国もあるだろう。出国時そこから日本に強制送還なんてケースは稀だろうが、指紋位は取られるケースがあるかもしれな。ただ海外で犯罪者になったとしても、それが日本にまで持ち込まれる訳ではないので、別段やっちゃても構わないとは言える。

私はヨーロッパ、アメリカでオーバー・ステイをしている。特にアメリカは単なる旅行者として、半年の滞在許可を空港で貰って入り、結局2年いた。出国時がどうだったかというと。私はアメリカから南米に飛行機で渡ったため、パスポートの出国検査はロス・エンジェルスの航空会社のカウンターで受けた。アメリカの場合、飛行機を利用する人が多いせいか、特別な出国者用のパスポート・コントロールはなかった。利用する航空会社のチェック・インの際、そこのカウンターの人間がパスポートを調べて、出国のスタンプを押し、出国カードを受け取る。出国カードには入国時の日にちが書いてあるので、オーバー・ステイしてればすぐに分かる。その時は黒人の女性だったが、大変キツイ目で睨まれたが何も言われなかった。

アメリカには不法滞在者が多すぎるせいか、はたまた去るものは拒まずなのか、いやにすんなり出られたと思っている。その後、アメリカには結婚式で二度入っているが、その際入国拒否をされることはなかった。勿論、この時には私のパスポートは、本籍地も現住所も変わった新しいもので、前回オーバー・ステイをした者に繋がる証拠は、名前と生年月日以外なかったので、コンピューターでたたいても出てこなかったのだろうが、以前法を犯したことのある者は注意が必要だ。ちなみに、私はアメリカ出国前に交通違反キップを切られ、裁判所への出頭を命ぜられていたが、これも無視した形になった。どこかで引っ掛かれば、そく逮捕だ。

ヨーロッパのオーバー・ステイの場合は、少し事情が違っている。ヨーロッパ、特に大陸側の場合、ECの国であれば、最初に入った国の入国スタンプ以外、他の国境通過では押されない。大体どこも日本人の旅行者に対しては、3ヶ月から半年間の、ノー・ビザでの滞在を許しているから、これが大きな隠れ蓑になる。たとい1年以上どこかの国に居座っていても、陸路移動でいちいちスタンプが押されない訳だから、どこどこで何ヶ月いて、またどこどこで何ヶ月いたとごまかしても分からない訳だ。

ただ、注意をしなければならないのは、特に船を使ったEC内での移動だ。イタリアからギリシャ。ドイツ、デンマークから北欧。そして、イギリスへの入国。これらはスタンプを押されると思っておいた方がいい。イリーガルでの滞在をうまくごまかそうと思っているのなら、これらは注意しておいたほうがいい。確かに、特定の国での長期の滞在をぼかすためには、これらのスタンプを活用もできるが、そのためには旅なれた、旅の流れを、運悪く検査官に問いただされた時、言ってごまかされるだけの計算ができるようになっていなければ難しい。



不法就労については、以前「職探し」のところでも触れたが、つまるとこ行動力とやる気しかない。足を使って捜し、気持ちで雇用者に訴えるしか、不法で働く。特に異民族の中にはいって、不法で働こうと思えば、それが一番大切な事だ。私の経験から言えば、本当にやる気を見せて、なおかつ相手に不利益を与えない人間であれば、どんな国の人だって使ってくれる。日本に来ている外国人に、日本人が見せる懐の広さのようなものは期待できないが、それはあまりにも日本人が外国人ズレしてないせいで起こることで、彼らにそんな異常なことは期待してはだめということは付け加えるが。

さて、不法で海外で働くとなると、使う方から見て一番問題になるのが税金の問題である。これがあるから欧米の雇用者側は不法滞在者をあまり使いたがらない。使うとなると足元を見て、信じられないような金額でこき使う。アメリカのレストランのウェーター、ウェートレスの上がりがいいのは、賃金が良いからではなく、彼らはチップで生きていると言われるように、チップへの依存が大きいく、賃金など本当にすずめの涙ほどである。

おまけにアメリカの場合、何をするにもソーシャル・セキュリティー・カードが必要で、銀行の口座を開くにもこのカードのナンバーを必要とする。カード自体は旅行者でも一時滞在者でも、ソーシャル・セキュリティー・オフィースに申請すれば作って貰えるが、このカードにはちゃんと「就労不許可」と明記される。アメリカでは賃金を2週間ごとに支払われるのが一般的で、その際チェック(小切手)で受け取ることになる。そのためにどうしても銀行の口座が不可欠なわけで、ここらへんはどうしてもやばい橋を渡る必要がある。

アメリカにいる不法入国をしたメキシコ人などは、最低限必要なこのカードが取れない。そのために彼らは信じられないような賃金で働かざるを得なくなっている。使う方も彼らに払う賃金の税金の扱いできない訳だから苦慮する訳だ。不法就労であれ何であれ、長期で働けばそれだけまとまった金額になる。それに対する税金の問題を何とかうまく、悪く言えばごまかしてくれる人に会える運は必要だと思う。

私の場合、それを色んな国の人がしてくれた。オランダ、イギリス、アメリカの会社。そして、ノルウェーのりんご園でも、そこの女主人は私が不法だということに顔を曇らせたが、結局働きぶりを見てうまく済ませてくれた。ノルウェーで高級なイチゴ摘みに行った時も、世話をやいてくれた博物館の館長が、自分の所得に私の収入を取り込んだ形で税金を処理してくれた。不法で働けば税金の問題に必ずぶち当たる。そこをうまくのりきれるかどうかは、あなたの人としての力量である。

ただ、最近はワーキング・ホリデーで行ける国が増えたことで、以前書いたように、それを隠れ蓑にすることはできる。私がオーストラリアにいた頃、ヨットで世界一周をしている人と働いたことがある。その人の場合特別な就労ビザは持っていなかった。だが、その会社のオーナーは、彼が特別なことをしていることに敬意を示し、ワーキング・メーカーを偽って所得処理をしてくれたのだ。ワーキング・メーカー世代にだぶっている以上、これはうまく利用すべきである。


私がして上げられるアドバイスはこれ位のものである。あとは何度も言うように、行動力しかない。恐れれば何もできないし、動かなければ何も始まらない。