シーン26

宇宙は静寂に包まれた。

来るべき主・・・暗黒の神の御手なるその完全なる消滅を粛々と受け止めるべく・・・。

滅亡した世界の中心に轟然と立ち尽くす破滅の王。

彼の者の名はダークサイド。

そして

対峙するは最後の戦士。

3人の勇敢なるそして最後のセイバートロニアンである。

ダークサイドの足元には4体のTFの残骸が散らばっている。

スモークスクリーン、ドレッドウィング、ジアクサス・・・そしてメガトロン。

かの宿敵さえ、ダークサイドの敵にはなり得なかったのだ。


● シーン27

ダークサイドがどんよりと澱んだ眼を向ける。

「おまえたち・・・ロディマス・・・スプラングにグリムロックか?」

「ああ!決着をつけにきたぜ!ダークサイド」

言い放つスプラング。

「我が力満ちるこの宇宙で我が前に立ちふさがるとは・・・貴様らは・・・」

「さあね。おれたちにも解らんが、これこそプライマスのご加護って奴じゃないのか?」

「ふん・・・いずれであれ、お前たちで最後だ。かかって来るがいい!」

「グリムロック、いく!」

一斉にトランスフォームするロディマス、グリムロック、スプラング。

ビークルモードで突進する。

三体の体当たりを受け、さしものダークサイドもぐらついた。

懐に飛び込んだ形となったグリムロックはトランスフォーム、生まれ変わったボディの強力な左腕で猛然とラッシュを仕掛ける。

「コンボイ、お前は誰よりすごい奴だった、誰もやったことのないことを成し遂げるリーダーだと思っていた!・・・けど、今は誰もやったことのない悪いことをした!」

胸ぐらを掴むと怒りの拳を叩きつける。

「お前が宇宙を滅ぼした!」

二発、三発と殴りつける。

ダークサイドの装甲が軋みを上げる。

「下がれグリムロック!」

スプラングがジェットミサイルを構える。

「スプラング!今だ!」

グリムロックの左腕がダークサイドのガードを跳ね上げる。

「くらえ!」

一気に間合いをつめたスプラングがダークサイドの胸部に至近距離からジェットミサイルをぶち込む!

爆発が胸部装甲を跳ね飛ばした。

「やったか!?」

半歩下がるスプラング

だが次の瞬間、立ち込める爆煙を突き破ってダークサイドの両腕が飛び出した。

急速に離脱するスプラングであったが、一瞬早くその恐るべき腕がスプラングの両肩を捉えた。

「ぐあ!」

おもわず苦悶の声をあげるスプラング。

スプラングの攻撃はダークサイドの胸部装甲の一部を損傷させるにとどまった。

「・・・ふん・・・?ライフフォースをアップグレードしたか・・・新しい技術を見つけたようだなプライマスの種子どもよ・・・」

「ど・どうだ?お前の力は効かないぜ!」

「・・・愚か者め!生命を吸収するわが力の前では無力。多少の抵抗力など、直に触れておれば!」

「な・・・!」

文字通り『吸い取られる』!

強力な力で生命力が体外に引き摺り出される!

スプラングのボディが灰色に変わり、その場に崩れ落ちる。

「スプラング!」

ダークサイドの手に球形に収束したエネルギー体が握られている。

スプラングの『スパーク』だ。

「ふむ・・・ひとまとめにしたライフフォースか・・・」

「スプラングを放せ!コンボイ!」

ロディマス、グリムロックがダークサイドにつかみかかる。

「下がれ」

ダークサイドの剛腕の一振りでロディマス、グリムロックは一度になぎ払われる。

「マトリクスの海に還るがよい・・・」

スプラングのスパークはふわりと浮き上がると、ダークサイドの胸に吸い込まれた。

「スプラング!」

スプラングは消滅した。

「なんてことだ!」

そのときロディマスは気付いた。

打ち砕かれたダークサイドの胸にマトリクスが納まっている。

たしかに。

しかし二つ!

半ば解放された形のフレームの中に二つの結晶体が見える。

一方は、しかし黒い。

本来マトリクスが内包すべき『英知の結晶』のあるべきところに黒い、ブラックホールよりもなお黒い漆黒の結晶が入り込んでいる形だ。

二つの球体は互いに反発しているかに見える。

ロディマスはその黒い球体を見たことがあった。

あの星で、あのエイリアンが持っていた物体だ。

アレが、コンボイの胸に納まっている!

あの黒い結晶体が!

(あれがすべての元凶だ!)

「グリムロック!あれを破壊するんだ!」

「了解!」

猛然と突進するグリムロック。

エキゾーストショットで支援するロディマス。

「ぬぅ!」

グリムロックのラッシュに押されるかに見えるダークサイド。

だが

グリムロックがぐらりと傾き片膝を付いた

「グリムロック!」

そう叫ぶロディマスも突然に強烈な虚脱感に襲われる。

「馬鹿め、我がフィールド上でそういつまでも平常でいられるものか!」

ダークサイドの言葉通り、足元からじわじわと力が抜けてゆく。

ライフフォースが吸収されているのだ。

スパークを持つこの新しいボディでもダークサイドのこのパワーの前に完全に抗する事は出来ないということだ。

もはや、そう長くは保たない!

「オレ、グリムロック!負けない!」

「なに!?」

グリムロック渾身のアッパーが繰り出される。

グリムロックの拳はダークサイドの胸部装甲を完全に吹き飛ばし左肩に食い込んだ。

左肩に装備されたデッドメーザーユニットが爆発する!

しかし黒いマトリクスは破壊されない。

ダークサイドが一瞬早く上体を反らし回避運動に入っていたのだ。

ダークサイドの魔手がグリムロックを捉えた。

「ぐおお!」

逃れようと身悶えるグリムロック、しかし損傷しているはずのダークサイドの左手は恐るべき圧力でグリムロックの右肩をがっちりロックし、逃さない。

「さらばだ、グリムロック」

ダークサイドの右の手刀がグリムロックの胸を貫く!

背中に突き抜けた手にはスパークが握られている。

グリムロックのスパークが抉り出された!

「まだまだ!」

一瞬の隙をつく形でロディマスが宙に躍り出る。

「あまいわ!」

スパークを失ったグリムロックのボディでエクゾーストショットを防御し、さらにそのままロディマスに叩きつける。

吹き飛ばされるロディマス。

しかしロディマスも負けてはいない。

飛ばされながらもさらにエクゾーストショットを乱射する。

ダークサイドの足元に着弾し、激しい爆煙を上げる。

一瞬ダークサイドが黒煙に包まれた。

「眼くらましのつもりか?ロディマス。小細工は無用だ。もはやお前一人なのだぞ!」

グリムロックのスパークが青いマトリクスに吸い込まれる。

ダークサイドの咆哮が響き渡る。

「潔く出てくるがいい!私を打ち倒したいのだろうが!」

もうもうと立ち込める黒煙の中にダークサイドのシルエットが浮かぶ。その邪悪な影に禍々しい赤を放つ両目と、マトリクスの鈍い輝きが見える。

(いまだ!)

ロディマスはエクゾーストショットを構え突進する。

狙いはひとつ、ダークサイドの右胸に潜むあの黒い結晶だ!

黒煙に紛れ一直線にターゲットの至近に接近するロディマス。

黒煙が彼の接近を許した!

銃口がその物体に迫る。

今!トリガーを・・・

ガッ!

砲身が捕まえられ、強引に引きずり上げられる。

「なに!?

宙吊りにされるロディマス。

「愚か者め!貴様の狙いなぞ、気付かぬと思うてか!」

エクゾーストショットが握りつぶされる。

「ここまでだな」

ダークサイドの爪がロディマスの頭部を捉える。

(これまでなのか?)

ダークサイドの指がヘッドモジュールに食い込む。

ぎしぎしと軋みをあげる装甲。

(何もわからないまま・・・このまますべてが終わってしまうのか?)

意識は朦朧とし、オプティクセンサーの画像が乱れる。

ライフフォースを吸い尽くされるより先に物理的に粉砕されそうだ。

「く・・・」

翳みゆく視界にぼんやりとマトリクスの輝きが残る。

(・・・マトリクス・・・)

ロディマスの手がほとんど無意識にダークサイドの胸に囚われたマトリクスに延びる

「さらばだロディマス!矮小なるプライマスの使徒!」

更なる圧力が加えられた。

容赦ない高圧にフレームが悲鳴を上げる。

最後の意識が途切れるまさにその刹那・・・ロディマスの指が・・・マトリクスに・・・

・・・届いた!

瞬間、英知の閃光が立ち上る。

その眼も眩む光輝にダークサイドの視界も奪われる。

「むう・・・!」

突如、強烈な衝撃がダークサイドのボディを貫く。

ダークサイドがぐらりと傾く。

そして、収束する光の中に一回り大きな身体に再構成されたロディマスが・・・

そう、それはロディマスコンボイ!

ロディマスコンボイが出現していた!

マトリクスがその胸に収められ、決然とした意思を宿した双眸が見開かれる。

「すべて・・・わかりました。コンボイ司令官・・・!」

 

 

 

 to be continue…..

                     

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<DARKSIDE SAGA>
 ●ACT.7 『DECISIVE BATTLE』