シーン28

 

無数の情報体が浮遊する空間に出現するホット・ロディマス。

ロディマスは過去にもこの空間に足を踏み入れたことがあった。

「これは・・・マトリクスの中?」

「ロディマス・・・」

ロディマスの前にコンボイが出現する。

その姿はダークサイドではない。

まぎれもないコンボイだ。

「コンボイ司令官!」

駆け寄ろうとするロディマス。

その瞬間、二人の周囲の空間がぐらりと傾ぐ。

・・・いつの間にか二人は虚空の闇の中にいた。

「すべての始まりは二つの神・・・光と闇の攻防だ。・・・見るがいい」

コンボイの指し示す虚空に巨大な姿がある。

「あれは?」

瞬時にふたりは一方の巨像の前に移動する。

大きさや、距離の概念は此処では無効のようだ。

「光の神プライマス」

プライマス・・・それはセイバートロニアンの知る創造神の名だ。

その輝きに包まれた巨体はまばゆく正確な形態を認識することは困難だ。

「そして、闇の神ユニクロン」

もう一方の神。

こちらは周囲の闇より尚暗く、その暗黒ゆえにその詳細を視認することが出来ない。

「ユニクロン!?ユニクロンは打ち倒したはず!」

「われわれが倒したそれは現世にうつろう影に過ぎん・・・」

「では・・・」

「すべては宇宙の外側で行われていることなのだ」

虚空に対峙する二体の巨神。

その間に幾万もの閃光が明滅している。

「見えるか、ロディマス。あの光芒が。あれは戦いの光だ」

「戦いの光?」

「見よ、あの無数の光を。あの輝き一つ一つがプライマスとユニクロンの戦いの残渣・・・そして各々すべてがひとつの宇宙だ」

コンボイが虚空の輝きを指す。

「われわれの世界もまた無数に広がる平行世界のひとつ。あの輝きのひとつなのだ」

「・・・・・」

「みよ、あの光が我らの世界」

コンボイが指し示す先でひとつの輝きがゆっくりと消えてゆく・・・

「そして、われわれの世界の輝きは終わった・・・」

「なんですって!?」

「このとき、“暗黒のマトリクス”が生まれるのだ」

「?」

「見るがいいロディマス」

眼前の光景が消え、オプティクセンサーが白く焼きつきそうなほどのまばゆい光が眼前に広がる。

無数の光球が群れ集まっている。

数え切れない光の粒が交じり合い、別れ、再び交差する。

そして、それ自体がひとつに解け合い、巨大な光の塊を形成している。

「これこそが・・・“マトリクス”だ」

「マトリクス?」

「生命の源泉。あらゆる情報の還る生命の本質、“マトリクスの本質”の姿だ」

「まるで・・・巨大なスパークだ」

「すべての生命がここから生まれ、ここに還る」

光球はゆるゆると自転しながらひとつとなり、またかけらとなりながら浮遊している。

まばゆい生命の光を放ちながら・・・。

「マトリクスの喪失こそが、その世界の終焉を意味する。失ったそれは二度と戻らない。完全な無に帰す」

「・・・・・」

「世界の終焉のとき、銀河の対岸で、『暗黒のマトリクス』が発生する」

「・・・・・」

「我らの宇宙が消滅するとき、それはこのマトリクスが失われるとき。それを成すのがあの暗黒のマトリクスなのだ。数限りない宇宙の滅亡の悲鳴が結晶したそれが我らのマトリクスに到達するとき、すべては消滅するのだ・・・」

暗黒のマトリクス・・・それがあの黒い結晶の正体だった。

銀河の終焉が決まったとき、宇宙の果てに誕生し、マトリクスを目指しやってきたのだ。

そして、銀河の中核でそれはコンボイを見つけた。

いや、コンボイの中のマトリクス・・・マトリクスへの『入り口』を見つけたのだ!

「暗黒のマトリクスを破壊するのですね」

「いや、暗黒のマトリクスを破壊しても世界の破滅は止まらない。もはやそれは決定された事象なのだから」

「では!すべては消滅するほかないというのですか?」

「宇宙の消滅は避けられぬ。しかし、すべてはマトリクスと共にある」

「コンボイ司令官」

「絶対的消滅。宇宙・・・その存在のすべて、あらゆる生命と事象の否定・・・すべてがはじめから存在しなかったも同然となる・・・それを防がねばならない・・・そのためにはこの方法しかなかった」

「・・・・・」

「すべての生命をマトリクスに還し、門を閉じる。そして暗黒のマトリクスを破壊するのだ!」

「それでは・・・そのために・・・」

コンボイの姿が揺らぎ始めていた。

「許せ、ロディマス。私は宿敵をさえ、箱船に乗せた・・・。しかし、お前には更なる試練を課そうとしている・・・」

「コンボイ司令官!」

コンボイの姿が崩れてゆく

「もはや暗黒のマトリクスと一体となった私には・・・それを成すことは出来ない・・・」

「コンボイ司令官・・・」

「後は任せたぞ、ロディマス・・・コンボイ・・・」

 

 

●シーン29

 

 滅亡の大地に今、ロディマスコンボイが立つ。

スパークを具えたロディマスのボディは更なる段階へアップグレードされ、マトリクスは新しいロディマスコンボイを構成させた。

いま、最後の死闘が始まる。

「ぐるるる・・・」

ダークサイドは不気味なうめき声を上げながら立ち上がる。

胸部は打ち砕かれ、マトリクスが収まっていた場所には風穴が開いている。

マトリクスはロディマスの元へ。

そしてダークサイドの胸、本来のマトリクスが収まるべきところには暗黒のマトリクスが鎮座している。

コンボイも英知のマトリクスを失い、もはや一片の理性も持ち合わせない、暗黒の獣『スカージ』となったダークサイドは文字通り獣の咆哮を上げ、ロディマスコンボイに襲い掛かった。

しかしその拳はロディマスを捉えられない。

「お前はもはや、ただのケモノだ」

そしてロディマスの鉄拳がダークサイドを打ち砕く!

 

 

●シーン30

 

ロディマスコンボイは勝利した。

セイバートロンの大地に、この宇宙に、ただ一人ロディマスは立ち尽くす。

彼の足元に倒れ付すダークサイドは、もはやコンボイの骸・・・。

振り仰ぐ銀河に生命の光はない。

すべて死滅した世界。

そして、更なる真の漆黒が染み込むように押し寄せている。

破滅の神の御手が

ロディマスコンボイはマトリクスを掲げる。

右手にマトリクスを、左手に闇の結晶を。

「いま、解き放つ!」

二つのマトリクスはロディマスコンボイの手の中で砕け散った!

マトリクスの門は閉じられ、世界は破滅の絶叫に包まれた。

そして箱舟が飛び立った。

今、ひとつの世界が終焉を向かえ、新たな世界が発生したのだ。

新しい世界で再び新たなる生誕と死・・・そして、新たな戦いの物語がつむがれて行く。

壮大なるTFワールドが・・・。

 

 

                                                   …..the END

 

 

 

<DARKSIDE SAGA>
 ●ACT.8 『"REBORN"THE END OF THE WORLD』