●シーン23

 

迫り来るダークサイド

ロディマスたちにはもはや後はない。

この怪物を相手に、抵抗のすべなど残されていようか?

じりじりと後退するサイバトロン。

そしてゆっくり、驚くほど静かに歩み寄るダークサイド・・・

もはや・・・

恐怖と混乱の中、意識が混濁する。

これはダークサイドの恐るべき能力なのか、それとも正当な反応なのか!?

言葉通りに凶悪な魔の手が迫る。

ロディマスにその腕がのばされ・・・

と、不意にダークサイドの歩みが止まった。

虚空を振り仰ぐダークサイド

セイバートロンの上空に光点が見える。

こちらをめがけて接近してくるものがある。

「・・・きたか」

大気の層を突き破って4体のTFが現れた。

ダークサイドと同質の漆黒のボディ・・・

しかしそのボディはロディマスたちのデータバンクに記録のあるものであった。

「あれは・・・メガトロン!?

「スモークスクリーンにドレッドウィングだ!」

「それに・・・ありゃ・・・ジアクサス!」

スモークスクリーン・・・今や『デス』と呼ばれる存在・・・がダークサイドの前に進み出る。

「主よ、ただいま到着いたしました」

「・・・ご苦労であった。わが四騎士よ」

「万事滞りなく。すべて根絶やしにしてまいりました」

「うむ」

デスがロディマスたちを一瞥する。

「この星が、最後です。・・・こやつらが、最後ですか?」

「・・・・・」

「主よ?」

「まだ、ここに残っている!」

ダークサイドの腕がいきなりデスを捕まえた。

「・・・主よ!こ、これは・・・」

「一人として残さぬ!一人として!すべて、消し去るのだ!」

ダークサイドの手がデスのヘッドモジュールを握りつぶした。

「!!」

デスが投げ出される。

「終わらせるぞ!諸君!」

ダークサイドは虚を衝かれた形で立ち尽くしている三人、コンクエスト、ウォー、フェミンに襲い掛かった!

あっという間に壮絶なる同士討ちが始まった。

「なんてこった・・・」

呆然とするチャーに我にかえったロディマスが叫ぶ

「逃げるんだ!」

「ロディマス?」

「撤退だ!体勢を立て直す!チャー、トランスフォーム。アーシー、グリムロックを早く乗せるんだ!」

「あ・・・ああ!」

「でも、ロードロケットは?エアロレードも!」

トランスフォームするチャー。

「あきらめろ、今は無理じゃ」

「そんな・・・」

逡巡するが、意を決してアーシーはグリムロックをロディマスに載せる。

「チャー、スプラングを頼む」

と、ロディマス。

「わかった」

ダークサイドの恐るべき拳がウォーを無力化する。

そしてついにコンクエストがダークサイドに飛びかかる!

閃光と轟音!そして爆煙!

・・・それらを背にロディマス、チャー、アーシーは一斉に走り去った。

 

 

 

     シーン24

混乱する市街地。

都市機能のほとんどすべてが停止しているため、セイバートロン全域が混乱の渦に巻き込まれていた。交通網はあちこちで寸断され、ハイウェイをはじめとするあらゆる主幹通路はセイバートロニアンでごった返し、前にも後ろにも進めなくなっている。あらゆる施設が停止したため都市機能は完全にマヒ状態である。市民たちの混乱と恐怖がやがて狂気に陥るであろうことは明白であった。

 

 

 

     シーン25

アイアコーン郊外のベノムのラボ。

メンテナンスベッドに横たわるボディにスパークが移される。

灰色のボディにスパークが収められ、ゆっくり回転を始めるとボディに色味が刺し、新たな身体が目を覚ます。

オプティクセンサーに明かりがともると、ゆっくりと起き上がった。

新しいグリムロックが目を覚ました。

駆け寄るロディマスとチャー、新しいボディとなったスプラング、それにアーシー

「・・・オレ・・・いったい・・・」

「グリムロック!」

「よかった!」

「よくやってくれたな、ドクター」

ベノムに握手を求めるチャー。

「ふん・・・わしの一番のお気に入りのボディじゃったのに・・・ブツブツ」

「あんた、オレ、助けたか?

「ああ、すべてわしのおかげじゃよ!せいぜい感謝してほしいものじゃて」

あからさまに不機嫌な態度のベノム。

「オレ、グリムロック感謝する」

「やれやれ・・・」

アーシーはモニターで地上の様子を映し出す。

「外は大変ね、パニックだわ、街中の動力が失われている」

「ここはどうなってんだ?」

ベノムを顧みるロディマス

「わしンとこは独立したパワーコアで動いておるからな、しばらくは保つのさ」

モニターにはハイウェイに黒煙が上がっている様子が映し出されている。

事故が発生したようだ。

「皆を助けないと」

「どうやって?惑星全土のエネルギーが止まっておるに違いないのじゃぞ、わしらだけでこの混乱を収拾などできるものか」

「でも・・・」

「いったい、どうなってしまったんだ!」

「あの黒い司令官・・・いや、ダークサイドとやらがベクトルシグマを停止させたからじゃ。セイバートロンの中枢コンピューターが止まってしまったのだから・・・」

「あれはなんだったんだ?」

「わからない。コンボイ司令官は何かにとり憑かれてしまったようだ」

「とり憑かれた・・・」

その表現が適当なのか?

ダークサイドとはいったい何者か?

コンボイなのかそれとも別人なのか?

「だめだわ!・・・どの惑星とも連絡が取れない・・・」

アーシーは通信パネルをむなしくたたきつけた。

ダークサイドと4体のTF。

4体のTF・・・。

ダークサイドの配下と見えた4人だったのに、次の瞬間には壮絶なる同士討ちが始まっていた。

「奴の言葉を信じるなら、敵はデストロンですらない・・・」

(・・・すべて根絶やし・・・)

あの黒いスモークスクリーンの言葉どおりなら・・・他のどの星とも連絡が取れない理由は・・・想像したくもなかった。

ダークサイドとは?そしてその目的とは?

しかし、少なくとも善意で行動しているようには見えない。

あれは、邪悪だ!

「みろ!」

グリムロックが声を上げる。

グリムロックの示すモニターには市外の様子が映し出されている。

さっきまで右往左往していた群集の動きが止まっている。

往来で立ち止まり、ふらふらとその場に座り込む。

表情はどんよりとにごり、ばたばたと倒れてゆく。

路上に灰色のボディが散乱している。

「これは!」

「ダークサイドだ!やつの力に違いない!」

なんということだ!

ダークサイドのあの奇怪な力がこんな広範な範囲に影響している!

この分では影響は惑星全土に及んでいる可能性もある。

いや、そもそも『根絶やし』にする力は・・・

「・・・・・」

ロディマスの声に返事がない。

「どうしたんだ?」

顧みると、アーシーとチャー、ベノムが床に座り込んでいる。

「チャー!アーシー!」

「爺さん、しっかりしろ!」

ぐったりとしたチャーとアーシーを抱き起こすスプラングとロディマス。

アーシーはすでに意識がない。

モニターで見た外の連中と同じ状態だ。

「チャー!」

「うう・・・だめじゃ、頭がボーっとして・・・」

「やつの攻撃だ!これは!」

ダークサイドのあの力がここにも及んでいるのだ。

奴の“毒”が地表ばかりでなく、ここにも文字通り「浸透」してきている!

「・・・お、おまえたちは・・・大丈夫なのか・・・」

ベノムが這いずるようにして近寄ってくる。

「オレ、グリムロック、なんともない」

「なんとか・・・。しかし、なぜ?」

「わ・・・わからん。ま・まるで、い・・・生命が吸い取られるようだ・・・」

「しっかりしろ、ドクター!」

「も、もう・・・い、意識が・・・」

ベノムが沈黙する。

生気のない金属の身体が残された。

「どうすればいいんだ?おれは!」

「もしかするとここにいる3人が最後の3人かもしれないぜ」

「ロディマス!オレ、グリムロック、やることはひとつ、わかっている!」

「ああ、そうだな、グリムロック」

「奴を倒すしかない!」

 

 

  〜to be continued〜

                     

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