G-2war終結の後…デストロン一党は銀河の果てに去り、宇宙に再び平和が取り戻された。
銀河の中核…光…ズームアウト
さまざまな惑星…
…惑星セイバートロン
惑星の主権はサイバトロンに帰し、都市は再び繁栄と栄光の刻を取り戻していた。
市街には様々なセイバートロニアン…TFが溢れ、色とりどりのイオニック・ファイバーの明かりの下で豊かな生活を謳歌している。
● シーン@…都市の深層
旧市街の跡地。
ダウンタウンの広がるセクションU3の最下層。
入り組んだ路地に錆付いた鉄扉。
少しばかり隙間が開いている。
内部…通路はとぐろ巻く蛇のようにうねりながら、さらに地下に向かってのびている。
照明とてない。
その闇の中を滑るように進む複数の影…
影の主の暗視視覚…前方にやや明るい部分を感知。
影の主、無言で前進。
規律ある訓練された動きだ。
通路の突き当たりにある扉の間から光が漏れている。
…扉の向う側…
雑多な装置がさほど広くもない空間に所狭しと並んでいる・・・というよりむしろ詰め込まれている。つまり文字通り雑然と、というべきであろう。床にも壁にも無数のパイプやコード、正体不明の部品などが乱雑に散らばっており足の踏み場もない。壁や天井からは幾本ものコードの束が垂れ下がり、アームが伸び、室内の中空さえ埋め尽くしている。
中央に作業台らしきものがある。
そこにだけ、明かりがある。
台上にはセイバートロニアンのボディが横たわっている。
その傍でアームを無心にコントロールする者がある。
この部屋の主に違いない。
声が漏れ聞こえる。
「…今まさに歴史は変わらんとしている!!」
大仰な身振りで奇声を上げるその声の主の影が壁から天井へ長く伸びる。
「大いなる生命の扉が今開かれるのだ!!他ならぬこの我輩の手によって!!」
バンッ!!
突然、扉が蹴破られ、武装したセイバートロニアンがなだれ込んでくる。
強烈な照明がその人物に浴びせられ、
「そこまでだ!」
マシンアームをコントロールしていた部屋の主が振り返るより早く、その首筋に左右から二本の剣が押し付けられる。チェーンソー・ブレードとローター・ブレード。
強引に壁に押さえつけられる。
「動くな」
「な、なんじゃ!貴様らは!」
「なんだはないだろ?このサイコ野郎!」
ローター・ブレードの主、スプラングはその男をどやしつける。
「おぬし、ベノムだな?」
チェーンソー・ブレードの主、ロードロケットは穏やかだがドスの効いた声で確認をする。
「貴様ら・・・」
「質問に答えよ!我らはガーディアンズなり」
「なんじゃと!?」
「質問に答えよ!」
ロードロケットは手元に少しばかり角度をつける。
「あ・・・いや・・・うん。そうじゃ・・・」
「で、ドクター。ここでなにを?」
とスプラング。
「なに、ちょっとした、学術的な研究をな」
「ほう・・・学術的な・・・ね?」
油断なく室内を検分する制圧部隊。
指揮官・チャーが進みでる。
「ずいぶんいろいろありますなあ・・・、こりゃなんじゃ?」
「粒子圧縮炉ですね。こっちは高エネルギー加速装置に、バキューム・ブラスター・・・」
応じたのはブレインストーム。
「そりゃ、研究に必要なものばかりじゃて・・・」
「それに・・・」
部屋の中央に据えられた作業台の上に目をやるチャー。
台上には灰色のセイバートロニアンボディが横たわっている
「この方は?」
「そりゃ、ワシの友人で・・・実験に協力してくれとる・・・」
「ええい!いいかげんにせんか!」
ベノムの返答を遮ってチャーが一喝。
「どれもこれも盗品じゃ!届も出とる!このボディなぞ、先月プラントから盗まれた新品じゃないか!」
「げ!」
「オイ、おっさん、調べはついてんだぜ?」
「う・・・」
「なんか、言う事ある?」
「・・・・・」
「連れてけ」
ベノムは連行されていく。
室内に残ったのはチャーとブレインストーム。
互いに顔を見合わせる
「やれやれ」
● シーンA・・・護送
ベノムを連行するガーディアンズ一行。
ベノムは両手両足をサイバーカフスで拘束され、檻の中。
ビークルモードにトランスフォームしたモーターマウスの荷台に乗せられている。
スプラングはヘリコプターモードで上空を警戒。
「何じゃあれは!?」
「さあねえ?そんな古い手、誰も引っかかりゃしないって」
「ばか者!あれじゃ!」
ベノムが格子の間から腕を伸ばし指差す虚空に流れ星が流れる。
「何だ?」
高度を上げるスプラング
「オイ!オイ!こっちにくるぜ!」
「マジかよ!」
巨大な火球となった流星がセイバートロンの地表めがけ落ちてくる。
「気をつけろ!スプラング!」
「うおおっ!?」
スプラングが急旋回をかける。直前、スプラングは火の玉の正体を見る。
「あれは!」
火球は一同の頭上を越えて旧市街のビル群に突っ込む。
聴覚器官を劈く轟音と視覚器官をホワイトアウトさせる閃光が上がる。
光のオーバーフローに麻痺した視覚が回復して最初に捉えたのは落下地点へまっすぐに急行するスプラングである。
●シーンB・・・落着点
倒壊した建造物。
さまざまな残骸。
巨大なクレーターが出現している。
クレーターの外周にサイバトロン一同。
「なんて有様だ」
「そういうな、廃棄されたエリアでよかったよ。むしろ」
「このあたりは再開発対象地域だったな・・・まだ先だろう?手が入るのは」
「整地の手間が省けたってね」
「見ろ!あそこ!」
クレーターの中央に吹き上がる黒煙の中に見え隠れする金属の肌
「アートファイヤー!消火を」
「了解」
ビークルモードのアートファイヤーがハイドロリキッドを放水する。
見る見るうちに火も煙も収まり焼け焦げた金属の地肌が露出する。
それはほとんど砕け散ってはいたが、セイバートロン製のパーソナルポッドである事は一同にはすぐわかった。
「こりゃ、脱出艇じゃ」
「見りゃわかるよ。チャー」
ピットのハッチが閉まったままである。
「みろよ!ハッチが閉じてる、中にまだいるぞ」
スプラングは緊急開閉スイッチをたたくが反応しない。
「拙者にお任せあれ!」
ロードロケットがチェーンソーブレードでこじ開ける。
ビシューッ!
気密が破れ、高熱を帯びたガスが噴出す。
ハッチが開いた。
覗き込む一同
そして驚きの声
「ロディマス!!」
● シーンC・・・セイバートロン:アイアコン・オートベース
司令室。各パネル前にはスタッフが座り、おのおの忙しげに立ち働いている。
メインスクリーン前に腕組みをして立つシティコマンダー・ウルトラマグナス。
「まだ連絡は取れんのか?」
「申し訳ありません、コマンダー。いったいどうなっているのか…」
通信パネルを忙しく操作しているのはライトスピード。
「ブロードキャスト、そっちはどうだ?」
シートをくるりと廻してブロードキャストが振り返る。
「まるでダメ。ウンともスンとも言わない」
両手を挙げ、文字通り「お手上げ」のジェスチャー
「いったい・・・何が起きているというのだ」
ウルトラマグナスは無意識のうちに左足を小刻みに踏み鳴らす。
イライラしている時の彼の癖だ。
先の戦争のあと、デストロンは銀河の果てに去り、以後、鳴りを潜めている。
各地で小規模な小競り合いは絶えなかったが、それ以上の混乱はなく、概ね平和にときを刻んでいた。セイバートロンの主権はサイバトロンに帰し、この母なる星もまた平穏を取り戻した。
そんな中・・・
事の起こりはセクタ666植民惑星のオートベースからの緊急通信だった。
通信をキャッチはしたものの、連絡を取ることが出来なかった。
というのは応答するものがなかったためである。
もちろん、セイバートロンのオートベースから、すぐさま調査隊が進発したが、これもまもなく通信途絶。事態は混迷の様相を呈した。
そうこうするうちに他の殖民惑星も次々に通信不能状態に陥り、いまやそのほとんどすべてと連絡が取れなくなっている…。
調査に赴いたチームも例外なく連絡を絶ち、事態は加速度的に悪化の途をたどっていた。
マグナスはコンボイを心配する。
コンボイが一隊を率いて銀河系探索の旅に出発したのはG2Warの終結後、間もなくのことであった。銀河系の未知のエリアの探索と戦乱に疲弊した植民惑星を巡視するのが目的だ。母星を遠く離れ、ここしばらくは連絡も途絶えがちである。
・・・何が起こっているのかは目下不明ではあるが、彼がこの不可解な事象に巻き込まれていなければいいが・・・
「あれをみろ!」
ブロードキャストの声に現実に引き戻される。
正面モニターに明滅する光点が表示される。
「隕石か?」
先刻も旧市街のほうへ未確認物体の落着の報告があったばかりだ。
チャーの部隊が向かったとの報告があったが・・・
「スクリーンに出します」
スクリーンに投影されたそれは宇宙港上空に確認された。
ゆっくりと降下してくる。
流星ではない。
拡大されたそれは、セイバートロン製の船だ。
「ホエールだ!」
●シーンD・・・闇
暗闇の中に真紅の双眸が浮かび上がる・・・
『今・・・滅びの刻・・・』