今回テイラーシステムを用いて、新たな”ゼータの香りの漂う式”を導きだすことができたので紹介したい。
次の2式である。
e^(1/4)/1^2 + e^(1/8)/2^2 + e^(1/12)/3^2 + e^(1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) + (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!+ (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!+・・・
e^(-1/4)/1^2 + e^(-1/8)/2^2 + e^(-1/12)/3^2 + e^(-1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) - (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!- (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!- ・・・
eは自然対数の底(ネイピア数)である。
これらの左辺を見ると、ζ(2)の香りが漂っていることがわかる。
ζ(s)やL(χ,s)など様々なゼータの特殊値を求める際に威力を発揮したテイラーシステムを用いると、いとも簡単に
これらの式を導くことができる。それを以下で示す。
2式を導出する。
[導出] f(x)=e^(x/1)/1^2 + e^(x/2)/2^2 + e^(x/3)/3^2 + e^(x/4)/4^2 + ・・・
という関数f(x)を考える。ここでxは任意の実数。
f(x)のxに1/4を代入して、
f(1/4)=e^(1/4)/1^2 + e^(1/8)/2^2 + e^(1/12)/3^2 + e^(1/16)/4^2 + ・・・ ------@
さて、f(x)をx=0周りでテイラー展開して、
f(x)=f(0) + f´(0)・x/1! + f´´(0)・x^2/2! + f´´´(0)・x^3/3! + ・・・ ----A
ここで@式を次々に微分して、
f(x)=e^(x/1)/1^2 + e^(x/2)/2^2 + e^(x/3)/3^2 + e^(x/4)/4^2 + ・・・
f´(x)=e^(x/1)/1^3 + e^(x/2)/2^3 + e^(x/3)/3^3 + e^(x/4)/4^3 + ・・・
f´´(x)=e^(x/1)/1^4 + e^(x/2)/2^4 + e^(x/3)/3^4 + e^(x/4)/4^4 + ・・・
f´´´(x)=e^(x/1)/1^5 + e^(x/2)/2^5 + e^(x/3)/3^5 + e^(x/4)/4^5 + ・・・
・
・
これらのxに0を代入すると、次のようになる。
f(0)=1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + 1/4^2 + ・・・=ζ(2)
f´(0)=1/1^3 + 1/2^3 + 1/3^3 + 1/4^3 + ・・・=ζ(3)
f´´(0)=1/1^4 + 1/2^4 + 1/3^4 + 1/4^4 + ・・・=ζ(4)
f´´´(0)=1/1^5 + 1/2^5 + 1/3^5 + 1/4^5 + ・・・=ζ(5)
・
・
これらをAに代入すると次のようになる。
f(x)=ζ(2) + ζ(3)・x/1! + ζ(4)・x^2/2! + ζ(5)・x^3/3! + ・・・ ----B
上式のxに1/4を代入して次を得る。
f(1/4)=ζ(2) + ζ(3)・(1/4)/1! + ζ(4)・(1/4)^2/2! + ζ(5)・(1/4)^3/3! + ・・・ ----C
@とCより、次式が成り立つ。
e^(1/4)/1^2 + e^(1/8)/2^2 + e^(1/12)/3^2 + e^(1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) + (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!+ (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!+・・・
1番目の目的の式が得られた。
全く同様にして今度はxに-1/4を代入して計算すると、2番目の目的の式が得られる。
e^(-1/4)/1^2 + e^(-1/8)/2^2 + e^(-1/12)/3^2 + e^(-1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) - (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!- (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!- ・・・
[終わり]
e^(1/4)/1^2 + e^(1/8)/2^2 + e^(1/12)/3^2 + e^(1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) + (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!+ (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!+・・・
e^(-1/4)/1^2 + e^(-1/8)/2^2 + e^(-1/12)/3^2 + e^(-1/16)/4^2 + ・・・
=ζ(2) - (1/4)^1・ζ(3)/1!+ (1/4)^2・ζ(4)/2!- (1/4)^3・ζ(5)/3!+ (1/4)^4・ζ(6)/4!- ・・・
このような優雅な式がまったく簡単に得られたことに驚かれるであろう。左辺のζ(2)の香り漂う式の正体は右辺のように
なるのであった!
上記の方法ではゼータの関数等式さえ必要ないのであった。以前、テイラーシステムを用いて奇数ゼータなどを求めた
際には必ず途中で関数等式を用いたのであるが。今回の導出のポイントとして、まず
f(x)=e^(x/1)/1^2 + e^(x/2)/2^2 + e^(x/3)/3^2 + e^(x/4)/4^2 + ・・・
という形の関数を用いたことが挙げられる。さらに、x=0周りで展開したこともさらなる工夫である。
これらの工夫の上にテイラーシステムを用いたのであった。
xに1/4を代入したのは数値的な検証をしやすく(収束を速く)するためである。別にx=1/2でもx=1/3でももちろんOKだが。
数値計算も行ったが、正しい式となっている。
例えば、2番目の式の左辺と右辺が一致することをExcelを使い数値計算で確認したので示しておく。 まず左辺を100万項まで計算すると、 左辺=1.37569・・ となる。 次に右辺を見ると、 右辺の2項まで=1.34441・・ 右辺の3項まで=1.37824・・ 右辺の4項まで=1.37554・・ 右辺の5項まで=1.37570・・ と、たったの5項でほとんど一致してしまう。右辺の収束は異常に速いのである。まとめておこう。
上記の方法を使えば、ζ(3)の香りが漂う式も当然ながら導出できる。
e^(1/4)/1^3 + e^(1/8)/2^3 + e^(1/12)/3^3 + e^(1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) + (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!+ (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!+・・・
e^(-1/4)/1^3 + e^(-1/8)/2^3 + e^(-1/12)/3^3 + e^(-1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) - (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!- (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!- ・・・
eは自然対数の底(ネイピア数)である。
左辺を見るとζ(3)の香りが漂っていることがわかる。これらも全く同様にして導くことができる。
[導出] f(x)=e^(x/1)/1^3 + e^(x/2)/2^3 + e^(x/3)/3^3 + e^(x/4)/4^3 + ・・・
という関数f(x)を考える。ここでxは任意の実数。
f(x)のxに1/4を代入して、
f(1/4)=e^(1/4)/1^3 + e^(1/8)/2^3 + e^(1/12)/3^3 + e^(1/16)/4^3 + ・・・ ------@
さて、f(x)をx=0周りでテイラー展開して、
f(x)=f(0) + f´(0)・x/1! + f´´(0)・x^2/2! + f´´´(0)・x^3/3! + ・・・ ----A
ここで@式を次々に微分して、
f(x)=e^(x/1)/1^3 + e^(x/2)/2^3 + e^(x/3)/3^3 + e^(x/4)/4^3 + ・・・
f´(x)=e^(x/1)/1^4 + e^(x/2)/2^4 + e^(x/3)/3^4 + e^(x/4)/4^4 + ・・・
f´´(x)=e^(x/1)/1^5 + e^(x/2)/2^5 + e^(x/3)/3^5 + e^(x/4)/4^5 + ・・・
・
・
これらのxに0を代入すると、次のようになる。
f(0)=1/1^3 + 1/2^3 + 1/3^3 + 1/4^3 + ・・・=ζ(3)
f´(0)=1/1^4 + 1/2^4 + 1/3^4 + 1/4^4 + ・・・=ζ(4)
f´´(0)=1/1^5 + 1/2^5 + 1/3^5 + 1/4^5 + ・・・=ζ(5)
・
・
これらをAに代入すると次のようになる。
f(x)=ζ(3) + ζ(4)・x/1! + ζ(5)・x^2/2! + ζ(6)・x^3/3! + ・・・ ----B
上式のxに1/4を代入して次を得る。
f(1/4)=ζ(3) + ζ(4)・(1/4)/1! + ζ(5)・(1/4)^2/2! + ζ(6)・(1/4)^3/3! + ・・・ ----C
@とCより、次式が成り立つ。
e^(1/4)/1^3 + e^(1/8)/2^3 + e^(1/12)/3^3 + e^(1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) + (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!+ (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!+・・・
1番目の目的の式が得られた。
全く同様にして今度はxに-1/4を代入して計算すると、2番目の式が得られる。
e^(-1/4)/1^3 + e^(-1/8)/2^3 + e^(-1/12)/3^3 + e^(-1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) - (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!- (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!- ・・・
[終わり]
e^(1/4)/1^3 + e^(1/8)/2^3 + e^(1/12)/3^3 + e^(1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) + (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!+ (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!+・・・
e^(-1/4)/1^3 + e^(-1/8)/2^3 + e^(-1/12)/3^3 + e^(-1/16)/4^3 + ・・・
=ζ(3) - (1/4)^1・ζ(4)/1!+ (1/4)^2・ζ(5)/2!- (1/4)^3・ζ(6)/3!+ (1/4)^4・ζ(7)/4!- ・・・
このようなζ(3)の香りの漂う式が得られた。
数値計算も行ったが、正しい式となっている。
例えば、2番目の式(下側の式)の左辺と右辺が一致することをExcelを使い数値計算で確認したので示しておく。 まず左辺を100万項まで計算すると、 左辺=0.96138・・ 次に右辺については、 右辺の2項まで=0.93147・・ 右辺の3項まで=0.96388・・ 右辺の4項まで=0.96123・・ 右辺の5項まで=0.96139・・ と、たったの5項でほとんど一致してしまうのである。まとめておこう。
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