< ζ(s)の結果を拡張する >
< 一般解求まる >
「マックノート彗星 その3」のζ(s)結果をもっとも一般的な場合にまで拡張した。
ベルヌーイ数Bn生成関数y=x/(e^x-1)を特解とする広義リッカチ微分方程式を出し、その一般解を求めた。
オイラー数En生成関数y=2/(e^x+e^-x)を特解とする微分方程式を研究し、その一般解を見出した。
もう一つのベルヌーイ数Bn生成関数y=1-(x/2)・cot(x/2)とオイラー数En生成関数 y=1/cosx を特解とする微分
方程式を求めた。
y=x/sinx と y=x/sinhx、そしてy=tan-1x/x とy=sin-1x/xを特解とする微分方程式を研究。
さて、 前頁では、「マックノート彗星 その3」(ζ(s)場合)の類似をL(s)に行ったわけであるが、いつの間にかさらに
結果をまとめると、
『 1^n/(1-x) - 2^n/(2-x) + 3^n/(3-x) - 4^n/(4-x) + ・・・ =(1-2^n)ζ(1-n) + (1-2^(n-1))ζ(2-n)x^1 + (1-2^(n-2))ζ(3-n)x^2 + ・・・ n=0,-1,-2,-3,・・・の場合に成り立つ。』 となる。
なお、n=0のときに発生する(1-1/2^0)ζ(1)はlog2となる。
具体的には次のようになる。
この結果と、前頁のL(s)の結果を比べると、このζ(s)の場合は、まだまだ中途半端に終わっていたことに気づく。
L(s)の同様の形にまで以下でもっていくことにする。
いまは、次式の段階まで得られているので、これを元に徐々に拡張する。
『 1^k/(1-x) - 2^k/(2-x) + 3^k/(3-x) - 4^k/(4-x) + ・・・
=(1-2^k)ζ(1-k) + (1-2^(k-1))ζ(2-k)x^1 + (1-2^(k-2))ζ(3-k)x^2 + ・・・ ------@ (-1 < x < 1で成立) k=0,-1,-2,-3,・・・の場合に成り立つ。』
さて、nを整数として
f(x)=1^k/(1^n-x) - 2^k/(2^n-x) + 3^k/(3^n-x) - 4^k/(4^n-x) + ・・・
という母関数を考える。
右辺の各項を0周りテイラー展開して、xの同次項同士足し合わせていけば次となる。
1^k/(1^n-x) - 2^k/(2^n-x) + 3^k/(3^n-x) - 4^k/(4^n-x) + ・・・
=(1-2^(k-n+1))ζ(n-k) + (1-2^(k-2n+1))ζ(2n-k)x^1 + (1-2^(k-3n+1))ζ(3n-k)x^2 + ・・・ ----A
(-1 < x < 1で成立)
例えば、n=1のときは、@に一致する。
ここでもL(s)の場合と同様に、右辺に出るζ(s)で解析接続された(繰り込みの)値を除くという方針でいくので、
Aが成り立つためには、『n-k>=1且つ n>=0』が成り立つ必要がある。いま、nもkも整数の場合を考えている。
例えば、Aでn=3、k=1のとき、
1^1/(1^3-x) - 2^1/(2^3-x) + 3^1/(3^3-x) - 4^1/(4^3-x) + ・・・
=(1-2^(-1))ζ(2) + (1-2^(-4))ζ(5)x^1 + (1-2^(-7))ζ(8)x^2 + ・・・
(-1 < x < 1)
となる。
まとめておく。
上の結果は、k,nが整数の場合を見たが、L(s)の場合と同様、これを実数に拡張することができる。
kをrに、nをsに置き換えると、次のようになる。
1^r/(1^s-x) - 2^r/(2^s-x) + 3^r/(3^s-x) - 4^r/(4^s-x) + ・・・
=(1-2^(r-s+1))ζ(s-r) + (1-2^(r-2s+1))ζ(2s-r)x^1 + (1-2^(r-3s+1))ζ(3s-r)x^2 + ・・・
(-1 < x < 1)
ただし、r と sは、(s-r)>=1 且つ s>=0を満たす実数である。右辺のζ(s)が収束する値となるためには、この条件が要る。
例えば、s=2,r=0.5のとき、
√1/(1^2-x) - √2/(2^2-x) + √3/(3^2-x) - √4/(4^2-x) + ・・・
=(1-2^(-1/2))ζ(3/2) + (1-2^(-5/2))ζ(7/2)x^1 + (1-2^(-9/2))ζ(11/2)x^2 + ・・・
(-1 < x < 1)
となる。
まとめておく。
ついでに、前頁で出したL(s)の場合も載せておく。
これで、ζ(s)もL(s)のどちらに完全に一般化できたわけである。
上をやる前に、ここでまた道草である。
「マックノート彗星 その2」では、ζ(s)を生成する母関数を特解にもつ微分方程式をたくさん求めた。
それらは、広義のリッカチの微分方程式というものになることがわかった。
では、ベルヌーイ数を生成する
y=x/(e^x-1) -----@
を特解にもつ微分方程式はどうなるのか?と思い、それを調べた。
ベルヌーイ数Bnは、
x/(e^x-1)=B0+B1x+B2x^2/2!+B3x^3/3!+・・・・ -----A
( -2π < x < 2π )
として展開される有理数Bnである。
B0 = 1 B20=-174611/330
B1 = -1/2 B22=854513/138
B2 = 1/6 B24=-236364091/2730
B4 = -1/30 B26=8553103/6 B6 = 1/42 B28=-23749461029/870 B8 = -1/30 B30=8615841276005/14322 B10 = 5/66 B32=-7709321041217/510 B12 = -691/2730 B34=2577687858367/6
B14 = 7/6 ・
B16 = -3617/510 ・
B18=43867/798
とどこまでも続く。ちなみに、nが1を除く奇数の場合はすべて0である。 本によっては、B2nをBnと記しているものもあるので注意されたい(つまり奇数は0だからはじめから除いている)。
ちなみに、m=0,2,4,6,8,・・に対して
ζ(m)=(-1)^(m/2+1)・2^(m-1)・Bm・π^m /m!
という関係でζ(s)とつながっている。
さて、@を特解とする微分方程式を求めるのは簡単である。
y=x/(e^x-1) -----@
@の両辺を微分すると、
y´={e^x(1-x)-1}/(e^x-1)^2 -----B
となる。
@より、 1/(e^x-1)^2=y^2/x^2 -----C
また@より、 e^x=x/y + 1 ----D
C、DをBに代入して
y´=(y^2/x^2){(x/y + 1)(1-x) - 1}=y/x - y - y^2/x
となる。つまり、
y´ + y^2/x + (1-1/x)y=0 ----D
と微分方程式が求まった。これは、
y´ + P(x)y^2 + Q(x)y + R(x)=0
の形になっているので広義のリッカチの微分方程式である。
ベルヌーイ数を生む関数に関係する微分方程式も、広義のリッカチの微分方程式だったのである!
「マックノート彗星 その2」では、ζ(s)をスペクトル的に生み出す母関数を特解とする微分方程式を求めると
すべて広義リッカチとなったわけであるが、Aのようにベルヌーイ数をスペクトル的に生み出す母関数の場合も
広義リッカチとなった。 「マックノート彗星 その2」では、特解が三角関数の都合のよい形をしていたので一般解
はすぐに求まったのだが、今回のDの場合は一般解はどうなるのであろうか?
Dのような非線形の微分方程式の一般解をもとめるのは一般には非常に難しいが、しかし、広義のリッカチの微分
方程式では、特解が一つわかっていれば、それから機械的に一般解を求める手法が確立されている。次にそれを
求めたいが、うまくいくかどうか。
上のつづきで、一般解が求まったのでそれを示したい。
y=x/(e^x-1)を特解にもつ広義リッカチの微分方程式
y´ + y^2/x + (1-1/x)y=0 ----@
の一般解は、
y=x/(e^x-1){1+e^x/(C(e^x-1)-1)} ----A
となる。Cは任意定数である。
上でも述べたとおり、広義のリッカチでは、特解が一つわかっていれば、機械的に一般解を求める手法が確立され
ている。特解をy1とすると、y=y1+uとして、@に代入して、uに関する微分方程式を出して、さらにv=1/uとすると、
線形の微分方程式が得られる。それを解く過程をへて広義のリッカチの微分方程式の一般解が得られる。
今回、その方法でAを得た。
Aで、C=0とすると、y=-x となる。これも、@の特解となっていることは容易にわかる。
また、AでC=-1とすると、y=0となる。これも、@の特解となっている。
ベルヌーイ数を生み出す関数y=x/(e^x-1)は、AでC=∞としたときの特解となっている。
「マックノート彗星 その2」では、ζ(s)をスペクトル的に生み出す関数を特解とする微分方程式の多くが広義のリッカチと
なったわけであるが、今回のベルヌーイ数でも広義リッカチとなった。
なにか物理との関連が見つかれば面白いのだが、それは今後たのしみとしておこう。
まとめておこう。
(2007/6/9改)
ベルヌーイ数Bn関連の研究をしたなら、オイラー数En関連の研究もしたくなる。
ベルヌーイ数とオイラー数は兄弟の関係にある。ベルヌーイ数はζ(s)と密接に関わるものであることは多くの教科書
で記載されている。一方のオイラー数Enは、L(s)と密接な関係にある。
L(2n+1)=(-1)^n・E2n・π^(2n+1)/{2^(2n+2)・(2n)!}
L(-n)=En/2
という関係がある。n>=0の整数。
どのような関係にあるかは、数学の巨人・佐藤郁郎氏のサイトにも解説がなされている。
佐藤氏サイトにもあるように、
E0=1,E2=-1,E4=5,E6=-61,E8=1385,E10=-50521,・・・
E1=E3=E5=・・・=0
である。
オイラー数Enは、次のように生成される。
sechx=1 + E2x^2/2! + E4x^4/4!+ E6x^6/6!+・・・
( -π/2 <x <π/2 )
ここで、sechx=2/(e^x+e^-x)である。
オイラー数Enは、関数y=2/(e^x+e^-x)によりスペクトル的に生み出されていくというわけである。
ゼータではζ(s)とL(s)は兄弟のようなものであるから、必然的にベルヌーイ数Bnとオイラー数Enも兄弟となる。
そこで、私はベルヌーイ数でやったのと同じこと、つまり、オイラー数を生み出すy=sechxを特解とする微分方程式
とはどんなものだろうか?そして、その一般解はどのようものになるのか?と思った。
y=sechx=2/(e^x+e^-x)
を特解とする微分方程式は簡単に出せる。過程を書く。
y=2/(e^x+e^-x) ------@
より、
(e^x+e^-x)y=2 ------A
両辺微分して
(e^x+e^-x)y´ + (e^x-e^-x)y=0
Aより、これは
2・y´/y + (e^x-e^-x)y=0
よって、
e^x-e^-x=-2y´/y^2
両辺微分して、
e^x+e^-x=4y´^2/y^3 - 2y´´/y^2 <-- y´^2は、(y´)^2の意味である。
Aより、
2/y=4y´^2/y^3 - 2y´´/y^2
整理して、y^2=2y´^2 - y・y´´
すなわち、求める微分方程式は次のようになる。
y・y´´ - 2y´^2 + y^2=0 -----B
これは非線形の微分方程式であるが、非常に対称的な美しい形をしている。
これはじつは同次形という微分方程式となっており、解く方法が確立されている*。
Bは”yについての2次の同次形”となっている。
一般解は
y=1/(C1e^x + C2e^-x) -----C
となる。
解く方法の概略を述べると、y=e^zとおくと、Bは
z´´-z´^2+1=0と
できる。そして、z´=uとおくと、
u´-u^2+1=0
となる。これは簡単に変数分離形で解けて、
u=(1+Ce^2x)/(1-Ce^2x)
となる。
よって、z´=-(Ce^x+e^-x)/(Ce^x-e^-x)
から、積分を行うと、
e^-z=C1e^x + C2e^-x
となる。よって、結局、
y=1/(C1e^x + C2e^-x)
と一般解が求まった。C1、C2は任意定数。
Cの一般解から、別の特解をいくつか求めてみよう。
C1=1、C2=0とすると、y=e^-xと出る。これがBの解となっていることはすぐに確認できる。
また、C1=0、C2=1とすると、y=e^xとなる。これもまたBの解となっていることは容易にわかる。
C1=∞、C2=0とすると、y=0となるが、これもまたBの解となっている。
まとめておこう。
* 例えば、「演習 微分方程式」(寺田/坂田/斎藤著、サイエンス社)p.45を参照。
ベルヌーイ数Bnを生み出す関数は、じつはもう一つあって、それが公式集*にのっているので、それを特解と
する微分方程式も調べた。その関数とは、
y=1-(x/2)・cot(x/2) -----@
であり、
1-(x/2)・cot(x/2)=B2x^2/2!- B4x^4/4!+ B6x^6/6!- B8x^8/8!+・・・・ -----A
( -π < x < π )
となっている。まさにベルヌーイ数Bnを生み出している。
@を特解とする微分方程式は、容易に求まり、答えだけ書くと次となる。
(x^2/2)・y´´- x・y・y´ + y^2 - y=0 ------B
非線形の微分方程式となった。一般解は、現時点では全くわからない。y=0 と y=1も特解であることがわかる。
まとめておく。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)
オイラー数Enを生み出す関数も、もう一つあって、それが公式集*にのっているので、それを特解とする微分方程式
も調べた。その関数とは、
y=1/cosx -----@
であり、
1/cosx=1 - E2x^2/2!+ E4x^4/4!- E6x^6/6!+ E8x^8/8!-・・・・ -----A
( -π/2 < x < π/2 )
となっている。まさにオイラー数Enを生み出している。
(公式集では、secx=・・と表現されているが、secx=1/cosxなので上のようにわかり易く書いた。)
@を特解とする微分方程式は、容易に求まり、答えだけ書くと次となる。
y´´- 2y^3+ y=0 ------B
また非線形の微分方程式となった。これは「演習 微分方程式」(寺田/坂田/斎藤著、サイエンス社)で調べてみ
ると、高階常微分方程式の「x,y,y´,・・・y^(n)の一部を含まない場合」に相当するとわかった。y´が含まれていない。
これも解法がある程度確立されている。一般解は
±∫dy/√(y^4-y^2+C1)=x+C2 -----C
となる。
解く方法の概略を述べる。Bの両辺に2y´をかけて
2y´y´´=2y´(2y^3-y)
よって、(y´)^2=4y´y^3 - 2y´y=(y^4)´-(y^2)´=(y^4-y^2)´
(y´^2)´=(y^4-y^2)´
これより、y´^2=y^4-y^2+C1
y´=±√(y^4-y^2+C1)
dy/dx=±√(y^4-y^2+C1)
と変数分離形にもっていけて、一般解は、
±∫dy/√(y^4-y^2+C1)=x+C2
となる。C1、C2は任意定数。
形はやや汚いが、ここからは進めないと思われる。
@のy=1/cosxが特解であることは当然だが、じつは導出の過程と三角関数の性質を考えると、
y=1/cos(x+C)
もまた特解となる。Cは任意定数。これからy=1/sinxがBの特解であることは自明である。さらに、y=0も特解である。
またy=1/√2も特解であることを発見した。結局、Bの特解は三つ見つかった。
y=1/cos(x+C) -----D
と
y=0
と
y=1/√2
である。DはC任意定数が入っているので一般的な特解といえる。
まとめておこう。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)
次に、
y=x/sinx -----@
という関数を調べたい。これは、積分∫の中に入って
∫(0〜π/2) x/sinx dx=2L(2) -----A
という式が成り立つ。@もゼータL(s)に密接に関係しているというわけである。
Aは公式集*に載っているものだが、非常に面白い式である。導出の過程はわからないが。
もちろん、L(2)=1 - 1/3^2 + 1/5^2 - 1/7^2 +・・・
である。
さて「場の量理論の発散の困難の解消 その3」では、sinx/xというこれまたゼータに関係する関数を調べたが、
(@の逆数の関数もゼータに関わっている!)、そこではsinx/xはベッセルの微分方程式タイプの特解とわかった。
なおゼータの母関数の多くは、その逆数の関数もゼータに関係するという保型性をもっている。
さて、@を特解とする微分方程式は簡単に導出できる。答えは、次となる。
y´´ - (2/x)y´ + (1+2/x^2)y=(2/x^2)y^3 ------B
これも左辺に注目すると、ベッセルの微分方程式に関係した微分方程式といえる。
ベッセルの微分方程式は、
y´´+ (1/x)y + (1-ν^2/x^2)y=0 ------C
であり、
y=AJν(x) + BYν(x)
という一般解をもつ。ここに、Jν(x)をν次ベッセル関数(または第1種円柱関数)という。
さらに数学書(*)によれば、次タイプのものはベッセルの微分方程式と親戚であり、その解き方も確立されている。
y´´+ (1-2α)/x・y´+(β^2 + (α^2-ν^2)/x^2)y=0 -----D
この一般解は次のようになる。
y=x^α{A1・Jν(βx) + B1・J-ν(βx)} -----E
(A1,B1は任意定数)
ここで、Jν(x) と J-ν(x) はベッセル関数(第1種円柱関数)である。
Bを上で「ベッセルの微分方程式に関係した微分方程式といえる。」と言ったのは、Bの左辺=0としたもの
つまり、
y´´ - (2/x)y´ + (1+2/x^2)y=0 ------F
が、Dに帰着できるからである。この場合、α=3/2、β=±1、ν=±1/2 となり、一般解はEより
y=x^(3/2){A1・J1/2(x) + B1・J-1/2(x)} -----G
(A1,B1は任意定数)
と求まってしまう。明らかにBはベッセル(D)に関係していることが予感される。
とは、いえ、Bには右辺の項がある。Bを変形して、
y´´ - (2/x)y´ + (1+2/x^2)y - (2/x^2)y^3 =0 ------H
とすると、この”- (2/x^2)y^3”という項があるために、B(H)は非線形の微分方程式となり、この一般解を求める
のは難しいと思われる。変数変換によって、ある特別な形にもっていけるのかもしれないが、いまは全くわからない。
ただ、y=x/sinxを特解とする微分方程式は、
y´´ - (2/x)y´ + (1+2/x^2)y=(2/x^2)y^3 ------B
であり、これは形からベッセルの微分方程式に非常に関係していると考えられる。
ところで、Bの一般解はわからないが、かなり一般的な特解を発見した。次のものである。
y=x/sin(x+C) -----I
Cは任意定数。
一般解ではないが、Cが入っているので一般的な解といえる。これからy=x/cosxもBの特解であることは自明。
これまでゼータの母関数を特解とする微分方程式を調べてきたが、ベッセルの微分方程式かまたは
広義のリッカチの微分方程式のどちらかになることが多かった。今回のy=x/sinxはベッセルの方であった。
なお、「マックノート彗星 その2」の<y=x/tanxを解にもつ微分方程式とその一般解>では、y=x/tanxを特解と
する微分方程式は、広義のリッカチとなった。
全く面白い!
*「応用数学例題演習」(道脇、春海、松浦著、コロナ社)
次に、
y=x/sinhx =2x/(e^x - e^-x) -----@
という関数を調べたい。じつはこれも非常に面白い性質があり、
∫(0〜∞) x^n/sinh(ax) dx={(2^(n+1) -1)/2^n・a^(n+1)}・Γ(n+1)・ζ(n+1) -----A
という凄い式が成り立つ*。Γ(s)はガンマ関数である。@もゼータL(s)に密接に関係しているのである。導き方は不明。
Aでn=1、a=1とすれば、
∫(0〜∞) x/sinhx dx={(2^2 -1)/2^2}・Γ(2)・ζ(2) =π^2/4
となる。Γ(2)=1!=1を用いた。
さて、@を特解とする微分方程式を出すと、次のようになった。
y´´ - (2/y)y´^2 + (2/x)y´ + y/2 =0 ------B
これまた非線形の微分方程式となった。これはうまい具合に変形できるタイプなのだろうか?
いろいろやってみたところ、これはyについての2次の同次形であることがわかった。
詳細は省くがy、y´、y´´の代わりに、 ρy、ρy´、ρy´´を代入することでそれがわかる。
そこで y=e^zとおいてBに代入すると、
z´´- z´^2 + (2/x)z´ + 1/2=0 ------C
と出る。z´=uとおくと、
u´- u^2 + (2/x)u + 1/2=0 ------D
となった。なんと広義リッカチとなった!広義のリッカチの微分方程式は次のようなものである。
y´ + P(x)y^2 + Q(x)y + R(x)=0
まさにDは広義リッカチとなっている。
広義リッカチは、解き方がある程度確立されている微分方程式であり、特解が一つ求まれば、一般解まで求めること
ができる。ところが、まだ私はDの特解を発見できないでいる。よってDの一般解もわからない。
しかし、@というゼータ関数に密接に関わる関数を特解とする微分方程式が、広義のリッカチの微分方程式に関係
するとわかった。ここでも広義リッカチが出てきたのである。
まとめておこう。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社) p.100
次に、逆三角関数アークタンジェントtan-1xを含む関数を取り上げる。
y=tan-1x/x -----@
という関数を調べる。これも面白い式があり、
∫(0〜1) tan-1x/x =L(2) -----A
という式が成り立つのである*。
もちろん、
L(2)=1 - 1/3^2 + 1/5^2 - 1/7^2 +・・・
である。
よって、@もゼータL(s)に密接に関係する関数とわかる。
さて@を特解とする微分方程式を求めよう。@から、
x=tan(xy)
より、両辺を微分することで微分方程式は簡単に求まり、次となる。
y´ + y/x =1/{x(x^2+1)} ------B
これは、線形の微分方程式であるから、非線形に比べ解くのは格段にやさしい。
Bの特解と、 y´ + y/x =0の一般解を足し合わせたものが、Bの一般解となる。
y´ + y/x =0は変数分離形ですぐにその一般解は出て、
y=C/x
となる。Cは任意定数。
そして、Bの特解は@とわかっているから、Bの一般解はすぐに出て
y=C/x + tan-1x/x
と求まった。Cは任意定数。
今回は、ベッセル微分方程式でも広義リッカチの微分方程式でもなく、全く単純な線形のBとなった。
まとめておく。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社) p.97
次に、逆三角関数アークサインsin-1xを含む関数を取り上げる。
y=sin-1x/x -----@
という関数を調べる。これには
∫(0〜1) sin-1x/x =(π/2)log2 -----A
という式がある*。
どうしてこれがゼータに関係するのかと思われるかもしれないが、(1-1/2^0)ζ(1)=log2という神秘の関係で結びつ
いているのである。なおlog2は自然対数である。
さて@を特解とする微分方程式を求めよう。@から、
x=sin(xy)
より、両辺を微分することで微分方程式は簡単に求まり、次となる。
y´ + y/x =±1/{x√(1-x^2)} ------B
これは線形の微分方程式であるから、特解さえわかれば簡単に解ける。
Bの特解と、 y´ + y/x =0の一般解を足し合わせたものが、Bの一般解となる。
y´ + y/x =0は変数分離形ですぐにその一般解は出て、
y=C/x
となる。Cは任意定数。
そして、Bの特解は@とわかっているから、Bの一般解はすぐに出て
y=C/x + sin-1x/x
と求まった。Cは任意定数。
今回も一つ上と同様、ベッセルでも広義リッカチでもない、単純な線形のBとなった。
まとめておく。
*「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R.Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社) p.97
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