マクスウェル方程式におけるローレンツ変換不変性証明の誤りの発見

 マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性を示した従来証明の欠陥を発見しました。

<1.マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明の誤りの指摘 その1>
<2.マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明の誤りの指摘 その2>
<3.従来証明は誤り>
<4.従来のローレンツ変換不変性証明を見てみよう>
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2002/5/17
     <1.マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明の誤りの指摘 その1>

 電磁気学の基礎方程式であるマクスウェル方程式は、ローレンツ変換に対して不変(共変)であると言われてきました。
しかし、それを示した従来証明には誤魔化しがあり、じつはマクスウェル方程式はローレンツ変換に対して不変では
ありません。従来の証明は、とても証明とは言えないものとなっているのですが、歴史の陰に隠れてきた驚くべき真相を
明らかにします。

[詳細]
 まず、はじめにみなさんに認識して頂きたいのは、特殊相対性原理という原理が大嘘であることがわかっている以上
(<・・に捧ぐ>参照)、マクスウェル方程式を異なる系間で形を同じに保たせようとする行為自体が、じつは物理的に意味の
ないものであるということです。マクスウェル方程式は任意の系間で同形でなければならないような性質のものではなく、
ただ一つの特別な系(絶対系)でのみその形は下の<その2>の@〜Cとなることが許されるものであることは、読者諸
氏は既にわかっておられると思います。

 さらに、<光速度不変則と相対性原理の無矛盾性証明でのアインシュタインのトリック>で証明した通り、ローレンツ変換
式が、矛盾から導出された虚構の産物にすぎないことを考えると、不変性をローレンツ変換を使って示すということも、じつ
は全く無意味であるといえるのです。

 現代物理学は、無意味の上にさらに無意味を重ねるという愚挙を行っているわけです。この点をまずしっかりと認識してく
ださい。
 
 しかし、百歩ゆずって一旦これらのことに目をつぶったとしても、それでもなお、物理学者はマクスウェル方程式のロ
ーレンツ変換不変性証明において全くおかしなことをやっていることを示します。
精密に述べれば膨大な量になりますので、以下要点だけを述べていきます。

 まずはじめにローレンツ変換の式を書いておきます。慣性系K系(x、y、z、t)と、それに対してvで運動している慣性系K′
(x′、y′、z′、t′)の間には、次のローレンツ変換が成立しています。

  x′=(x−βct)/√(1−β^2) ・・・@
  y′=y              ・・・・A
  z′=z             ・・・・B
  ct′=(ct−βx)/√(1−β^2)・・・・C
                 (β=v/c)

 さて、問題は、「はたしてマクスウェル方程式はローレンツ変換に対して不変となるか?」ということです。

 それは結局どういうことかというと、@〜Cの変換のもとでK系での次のマクスウェル方程式D〜Gが、K´系でもH〜K
のように同じ形となるのかということです。

K系でのマクスウェル方程式
  div(x)=ρ(x)・・・・・・D
  div(x)=0・・・・・・・・・・E
  rot(x)=−∂(x)/∂t・・・・・・・F
  rot(x)=(x)+∂(x)/∂t・・・・・・G

K´系のマクスウェル方程式
  div′′(x′)=ρ′(x′)・・・・・H
  div′′(x′)=0・・・・・I
  rot′′(x′)=−∂′(x′)/∂t′・・・・J
  rot′′(x′)=′(x′)+∂′(x′)/∂t′・・・・K

 注意:(x)は(x、y、z、t)の略です。またrot′やdiv′は、x′,y′,z′での微分を意味します。

 物理学者は「@〜Cのローレンツ変換の元でK系のD〜Eは、K´系でもH〜Kのように同形になる」と主張し、数学を
駆使して厳密に(?)証明しています。しかし、それが、非常におかしな証明となっているのです。
従来の数学的証明は<従来のローレンツ変換不変性証明を見てみよう>を参照ください。

証明のはじめに、物理学者はある特殊な仮定を入れてきます。
砂川重信氏の「相対性理論の考え方」(岩波書店)p.74〜75には、電流密度と電荷密度ρとの間には、次の関係式が成
り立っていると述べられています。

・・・
 ここで(6.1)の変換式に伴うこれらの量の間の変換式として
  ′(x′)=(i(x)−βcρ(x))/√(1−β^2)・・・・・L
  ′(x′)=i(x)                  ・・・・M
  ′(x′)=i(x)                  ・・・・N
  cρ′(x′)=(cρ(x)−βi(x))/√(1−β^2)・・・・O
を仮定しようというのである。・・・・

と、なぜかこのような特殊な仮定を入れるのです。これが非常に奇妙な仮定になっています。
とにかくL〜Oをまず仮定し、それを利用してマクスウェル方程式のローレンツ変換不変性が証明されている。
しかし、よく検討すると、この証明はおかしいと気づきます。

その証明の論理は、マクスウェル方程式がローレンツ変換不変となるための条件をあらかじめ探し出しておき、それを一つ
の仮定として証明のはじめにもってきて、その仮定を使って証明するという論理となっており、こんなインチキをすれば、
明できるのは当たり前だからです。
数学の証明としたら、デタラメです。

その本質だけを表現すれば、次のようになります。
「これから、マクスウェル方程式がローレンツ変換に対して不変であることを明らかにする。
 はじめにマクスウェル方程式をローレンツ変換に対して不変にしてくれるある仮定を付け加えよう(仮定Aとする)。
 さて、マクスウェル方程式はローレンツ変換に対して不変である。
 なぜなら、仮定Aを付け加えたからである。
 仮定Aを使って計算すると・・・(その仮定Aが途中でうまく働いて)、たしかに不変となる。OKだ。
 よって、証明された。」 ・・・・・・P

 こんなデタラメな証明が、従来より行われてきたのです。みなさんは、信じられないでしょうが、これが証明の実態です。

少し補足しておきます。
物理学者もやはりL〜Oの仮定が気になるのでしょうか。この仮定は、「物理的に必然性があってなされたものなのだ!」
ということを声高に主張しているのですが、その主張に説得力はありません。

砂川氏は、・・・電流密度と電荷密度に対して(6.2)(杉岡註:L〜Oのことです)の変換性を仮定する根拠を説明してお
こう。現時点までのあらゆる実験によると、例えば電子のもつ全電荷の値は、これを観測する慣性系のいかんを問わず同
じ値をもっている。(6.2)の変換性を仮定すると、この事実が証明できるのである。・・
と述べています。

この主張は一体なんでしょうか?
こんなことは、古典物理のときから、知られていた当たり前の事実であり、おかしな仮定をもちだしてわざわざ証明などする
ようなことではありません。さらに教科書では数式を用いてどの系から見ても荷電粒子の全電荷量は不変であることも証
明されていますがそれも証明になっていない。また、さらにそれをより一般的に表現した微分系の電荷保存則

  div+∂ρ/∂t=0 ・・・・Q

が、L〜Oの仮定を使うと、形がローレンツ変換で不変になることからその仮定の正当性を教科書では主張しているので
すが、しかし、冷静に考えればQの電荷保存則はマクスウェル方程式から自然に導きだされるもの(rot+∂/∂t
の両辺の発散をとればよい)であり、この仮定がマクスウェル方程式を変換不変にするための条件として提示されたことを
考えると、砂川氏のやっている証明は、ここでもPと同じ無意味なものとなっているのです。
相対論の世界的権威であった内山龍雄氏も著書で(例えば「アインシュタイン相対性理論」岩波文庫)で同じことを主張さ
れている。

 L〜Oを仮定すれば、たしかに不変性を証明することができますが、逆の見方をすれば、そのように仮定しなければそ
の証明ができないことに気付いたから、この特殊な仮定を入れたのだというのが真相です。

 砂川氏も内山氏も、なぜこんなおかしなことをしているかというと、アインシュタインが論文でそう書いているから、たんに
真似をしているだけなのだと思われます。歴史的論文「動いている物体の電気力学」で、アインシュタインは、電荷保存則
(q′=q、またはより一般的には「Q式の不変性」)がL〜Oを用いれば導けることからその式(L〜O)の正当性を主張
しています。
 論文でアインシュタインは、つぎのように書いており、両氏がそれを意識しているのは間違いない。

「 ・・・ここでなお、次のような重要な法則が、ここに求められた方程式()から容易に導かれるということを注意
しておきたい。すなわち、電荷をもつ1個の物体が空間の中を勝手に動きまわっているとする。この物体と一緒に
動いている座標系から見たとき、この物体の持つ電気量が変化しないとすれば、それをわれわれの静止系Kから
眺めても、その電荷は一定不変である。」 「アインシュタイン 相対性理論」(内山龍雄著、岩波文庫)から抜粋
 杉岡註:L〜Oのこと。論文では表現は違うが完全に同じものである。

 さて、L〜Oが偽りの証明を完成されるために導入された架空のものであることはもはや明らかですが、すこし別な観点
から見てもおかしい。というのは、これらの変換公式は電流iと電荷ρという物理量の間の変換となっていますが、この変
換は実験的に証明されていないでしょう。こんな重大な変換式は実験的に証明されなければなりません。ある観測者から
みたらiだが別の観測者からみたらiとρが式のように混在して見えるという奇妙な事実が「実際に観測された!」と実証さ
れてしかるべきです(相対論学者得意の間接的な証明ではなく、もちろん直接的に!)。しかし、そんな事実は聞かない。

 L〜Oは、マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明において、決定的な役割を演じます。その仮定をしなけれ
ば証明できないものだからです。
 アインシュタインはそう仮定しなければ証明できないことに気付いたから、この特殊な仮定を加えたのだというのが真相
です。
 
 マクスウェル方程式の不変性を示した数学的証明には、重大な欺瞞が隠されていたのです。




2002/5/18
     <2.マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明の誤りの指摘 その2>

 上の<その1>と関連しますが、マクスウェル方程式の不変性証明には、さらにもう一つ、<その1>と同類のごまかしが
組み込まれています。<その1>で述べてもよかったのですが、内容が複雑化しすぎるので、<その2>としてここで独立
に説明します。

[説明]
上の<その1>を理解された方は、ここでの議論はわかりやすいと思います。ごまかしの手法は、同類ですから。
さて、ここでも「相対性理論の考え方」(砂川重信著、岩波書店)を参考にします。

まずはじめにマクスウェル方程式を書いておきます。
  div(x)=ρ(x)・・・・・@
  div(x)=0・・・・・A
  rot(x)=−∂(x)/∂t・・・・B
  rot(x)=(x)+∂(x)/∂t・・・・C

さらに、これらの方程式は、ベクトル・ポテンシャルAとスカラー・ポテンシャルφを用いて次の形でも表現することができま
す。

  (x)=−∂(x)/∂t−gradφ(x)・・・D
  (x)=rot(x)           ・・・・・E
  □(x)=μ0(x)          ・・・・・F
  □φ(x)=−ρ(x)/ε         ・・・・・・G
  div(x)+(1/c^2)∂φ(x)/∂t=0・・・H

これらD〜Hは、@〜Cと完全に同等であることが証明できますので、マクスウェル方程式はD〜Hの形で表現してもか
まいません。上の(x)などの”(x)”は、厳密には”(x、y、z、t)”ですが、煩わしいので(x)と略記しています。これらの式
の詳細は、電磁気学の教科書を参照してください。

「相対性理論の考え方」では、D〜Hの方でローレンツ変換の不変が証明されています。
教科書ではまずはじめに一つの仮定が導入される。

本では、電流密度と電荷密度ρとの類似から、ベクトル・ポテンシャルとスカラー・ポテンシャルφも、
「  A′(x′)=(A(x)−βφ(x)/c)/√(1−β^2)・・・・・I
  A′(x′)=A(x)                   ・・・・・J
  A′(x′)=A(x)                   ・・・・・K
  φ′(x′)/c=(φ(x)/c−βA(x))/√(1−β^2)・・・・・L

と変換されるはずである。・・」
と、やはり仮定を入れています。
 ここでも、<その1>と全く同じ手法が用いられている。マクスウェル方程式をローレンツ変換に対して不変にするI〜L
を使って、マクスウェル方程式の不変性を証明している構造になっているのです。これでは証明できて当たり前、証明とし
たらデタラメです。I〜Lを仮定すると不変性が証明できるとわかったから、これらの仮定を加えたという格好になっている
ところに注目してください。

事実、アインシュタインの1905年論文「動いている物体の電気力学」では、
・・・・ところで、相対性原理の要請によれば、真空中におけるマクスウェル・ヘルツの方程式がK系におきて成立するなら
ば、同じ形の方程式がk系においても成立しなければならない。すなわち、運動系kにおいて(電荷ならびに磁気を持つ物
体に作用する電磁気力を測定することにより)定義された電場の強さ(E′ξ、E′η、E′ζ)ならびに磁束密度(B′ξ、B′
η、B′ζ)に対して、次の方程式が成り立つべきである。・・・
と述べ、I〜Lを導き出しているのです(実際の論文中ではこれらと同等のEとBを用いた@〜Cの形式に対応する変換
式を導いていますが同じことです)。

 このようにアインシュタインは、「どんな系でも同形に成り立つべきなんだ!だから、I〜Lのようになければならないん
だ。」として導いている。

 結局、ローレンツ変換に対して同じ形にしたいがためにI〜Lとしているだけなのだということです(厳密に言えば、<そ
の1>のL〜Oと上のI〜Lを利用して、ローレンツ変換不変性を証明している)。
これでは、不変になるのは当たり前。不変になるように自分でもっていっているのですから。
数学の証明としてみたら、証明と言えた代物ではないことがわかるでしょう。

 以上より、従来からのマクスウェル方程式のローレンツ変換不変性を示した証明は大嘘であったことが分かってい
ただけたと思います。
 マクスウェル方程式は、ローレンツ変換に対して不変ではなかったのです。

 相対性理論を注意深く見ていると、このようなおかしな証明がここかしこに出てきます。
すでにお気付きかもしれませんが、この不変性証明の手法は、<光速度不変則と相対性原理の無矛盾性証明でのアイン
シュタインのトリック>で示した「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」の無矛盾性証明と、数学的な構造が全く同じで
あると気付きます。 そこには「あるAの成立を証明するのに、はじめにAを成立させるある仮定を設定して、その仮
定をそっくり用いて、Aの成立を証明する」という偽りの論理で構成されているという特徴があります(自己をそのまま肯
定する)。

 これでは、どんな矛盾でも証明されてしまいます。りんごをバナナにしてしまうことも可能です。
「りんごとバナナは同じであることを証明する。はじめにりんごとバナナは同じであると仮定しよう。さて、りんごとバナナは同
じである。なぜなら、そのように仮定したからである。よって、証明された。」という論理。
数学者や論理学者が聞いたらびっくりするでしょう。
こんなインチキを用いれば砂川変換でも内山変換でも、どんな変換でも「不変だ」とすることができてしまう!

 物理学者はこんな証明をして喜んでいるわけで私は情けなくなりますが、なぜこんな証明に1世紀もの間、人類がだまされ
つづけてきたのかとても不思議であり、また人間の先入観のこわさ、危うさを思います。

 相対性理論で見られる、これらおかしな証明方法をアインシュタインの自己肯定型証明と名付け、今後いろいろ
な方面から、検討が加えられていくことを期待します。



2002/6/7          <3.従来証明は誤り>

 「なっとくする相対性理論」(講談社)には、マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性が解説されていますが、肝心の
欺瞞の部分が隠されており、不正確この上ない記述です。こんな証明に騙されてはなりません。以下、詳しく書きます。

[詳細]
「なっとくする相対性理論」p.59〜60
・・・要約すると、こういうことになる。ニュートンの運動方程式はガリレイ変換で不変になるが、光の速さとか光の伝播の式
は不変にならない。光は電磁気現象であるから、マクスウェルの方程式で記述される。つまり、マクスウェルの方程式とか
波動方程式はガリレイ変換で不変にならないのである。このことをはっきりと示そう。
 電磁気学の基礎方程式であるマクスウェルの方程式を変形すると、光を含む電磁波の伝播を記述する波動方程式が与
えられる。その方程式を1次元の場合に書くと、y方向の電場をExとして、

 ∂^2E/∂t^2=c^2(∂^2E/∂x^2) (3.19)

である。ガリレイ変換は、
  x′=x−vt
  t′=t

であるので、演算子は、
    ∂/∂x=∂/∂x′                                 (3.20)
    ∂/∂t=(∂t′/∂t)(∂/∂t′)+(∂x′/∂t)(∂/∂x′)     (3.21)

となる。これらの演算子を自乗して、方程式(3.19)に代入すると、

  ∂^2E′y/∂t′^2=(c^2−v^2)(∂^2E′y/∂x′^2)+2v(∂^2E′y/∂x′∂t′)  (3.22)
 
というよう変な形をした、変換された方程式が得られる。これは元の波動方程式とは形が異なる。つまり波動方程式はガリ
レイ変換に対して不変ではない。波動方程式がローレンツ不変であることは同様な計算から示される。しかし、ニュートン
の運動方程式はローレンツ変換に対して不変にはならない。・・・・・・


 説明のおかしなところを解説していきます。

 まずローレンツ変換式を書いておきます。慣性系K系(x、y、z、t)と、それに対してvで運動している慣性系K′(x′、y′、
z′、t′)の間には、次のローレンツ変換が成立しています。

  x′=(x−βct)/√(1−β^2) ・・・@
  y′=y              ・・・・A
  z′=z             ・・・・B
  ct′=(ct−βx)/√(1−β^2)・・・・C
                 (β=v/c)

 さて、松田教授は、電磁波の伝播を記述する波動方程式(3.19)が、ガリレイ変換不変ではなく、@〜Cのローレンツ
変換ではじめて不変となる、といわれています。
この説明からは、マクスウェル方程式の不変性までもが証明されたかの印象を受けますが、それは全く違います。
じつは波動方程式が不変であるからと言って、マクスウェル方程式そのものがローレンツ変換不変であるとは結論でき
ないのです。
 どういうことかというと、マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性を示すには、波動方程式の不変性を示すだけでは
不十分で、電場と磁場の変換式を精密に導いて証明しなければならない性質のものだからです。

「相対性理論の考え方」(砂川重信著、岩波書店)p.74には、ここのところがつぎのように述べられている。

・・・しかし、マクスウェル方程式そのもののローレンツ変換に対する共変性については、これまで言及しなかった。もっと
も、まったくこれに触れなかったわけではない。1で電波の波動方程式の形がローレンツ変換によって変わらないことを
示したが(杉岡注:上の「なっとく・・」の説明のこと)、これは本質的にはマクスウェルの方程式の共変性をいっていたので
ある。しかしそのとき、電波の振幅がどのように変換されるかなどについては何も触れなかった。ここではそういう問題に
ついて調べてみよう。・・・・


 このように「相対性理論の考え方」では、波動方程式の不変性だけでは不十分だから、上記記述のあと、一番本質的な
電場と磁場の変換式に対応したベクトル・ポテンシャルAとスカラー・ポテンシャルφの変換式I〜L(<その2>参照)を
導き、それを用いてマクスウェル方程式のローレンツ変換不変性を証明しています。
しかし、残念ながら、その証明が誤っているのは上の<その1>、<その2>で示した通りですが。

 「なっとくする相対性理論」では、私が<その1>、<その2>で問題にした肝心な部分がすっぽりと省略されているわけで、
上記のような説明でマクスウェル方程式不変性の説明を済ませてしまうなど、不誠実もいいところです。

 マクスウェル方程式のローレンツ変換不変性証明というのは、完全にやろうと思えば、非常に複雑な計算になり多くの紙
数を要するためか、相対性理論の教科書でも、省略されている場合が多いようです。

 「相対性理論の考え方」は、完全に書かれている数少ないものと思いますので、そこらあたりが気になる方は、この本を
お勧めします。また別に「理論電磁気学」(砂川重信著、紀伊国屋書店)という大著もあり、高度な本ですが、マクスウェル
方程式のローレンツ変換不変性が「相対性理論の考え方」とは違った方法で(本質的には同じですがEとBの変換式を
直接用いた方法で)、証明されており、これも参考になると思います。このEとBの変換式を直接用いた方法は一つ下の
<4.従来のローレンツ変換不変性証明を見てみよう>で述べていますので見てください。

 ともあれ、ここで述べたかったのは、「なっとくする・・」の説明では、マクスウェル方程式の不変性など何も示せていないと
いうことです。とくに学生さんなどは、自信満々に書かれているとついうっかり信じてしまう所と思いますので、気をつけてくださ
い。



2002/6/20
         <4.従来のローレンツ変換不変性証明を見てみよう>

 上の<その1>、<その2>では、証明の構造的な観点からその欺瞞を説明しました。
しかし、従来証明の具体的な計算も知りたいという読者のために、4つのマクスウェル方程式の内で、一つだけ例にとり、
従来証明の誤りを示しておくことにします。残りの3つは、全く同様にできますので省略しました。意欲のある読者は挑戦して
ください。

[詳細]
 まずローレンツ変換式を書いておきます。慣性系K系(x、y、z、t)と、それに対してvで運動している慣性系K′(x′、y′、
z′、t′)の間には、次のローレンツ変換が成立しています。

  x′=(x−βct)/√(1−β^2) ・・・@
  y′=y              ・・・・A
  z′=z             ・・・・B
  ct′=(ct−βx)/√(1−β^2)・・・・C
                 (β=v/c)

 マクスウェル方程式はローレンツ変換不変か?ということは、@〜Cの変換のもとで、K系での次のマクスウェル方程式
D〜Gが、K´系でもH〜Kのように同じ形となるのか?ということです。

K系でのマクスウェル方程式
  div(x)=ρ(x)・・・・・・D
  div(x)=0・・・・・・・・・・E
  rot(x)=−∂(x)/∂t・・・・・・・F
  rot(x)=(x)+∂(x)/∂t・・・・・・G

K´系のマクスウェル方程式
  div′′(x′)=ρ′(x′)・・・・・H
  div′′(x′)=0・・・・・I
  rot′′(x′)=−∂′(x′)/∂t′・・・・J
  rot′′(x′)=′(x′)+∂′(x′)/∂t′・・・・K

 注意:D〜Kでは(x)は(x、y、z、t)の略です。

 従来、「ローレンツ変換@〜Cのもとでマクスウェル方程式D〜Gは、H〜Kのように同形となる」ということを物理学者
は示してきたわけですが、それがデタラメの証明であることを示します。

マクスウェル方程式の一つ(D)を例にとって説明します。

divD(x)=ρ(x)が、はたしてローレンツ変換@〜Cの元で、div′D′(x′)=ρ′(x′)となるか?

このことを調べたいわけです。
以下、「理論電磁気学」(砂川重信著、紀伊国屋書店)を参考にしつつ示します。わかりやすくするため若干言葉を加えた
ところはありますが、ほぼ本の内容を踏襲しています。
従来証明はつぎのようになされてきました。

[従来証明]
まず前準備を行う。
D〜Gの方程式系を変換するために、ある任意の関数 f′=f′(x、t)を考える。
ただし、このとき、
  x′=x′(x、t), t′=t′(x、t)
なる関係があるとする。すると、
 ∂f′/∂x=(∂f′/∂x′)(∂x′/∂x)+(∂f′/∂t′)(∂t′/∂x)・・・H
同様に
 ∂f′/∂t=(∂f′/∂x′)(∂x′/∂t)+(∂f′/∂t′)(∂t′/∂t)・・・・I

上では、f′(x′,t)はf′と略した。

 さて、@〜Cのローレンツ変換より、
 ∂x′/∂x=1/√(1−β^2)
 ∂t′/∂x=(-β/c)√(1−β^2)
 ∂x′/∂t=(-cβ)/√(1−β^2)
 ∂t′/∂t=1/√(1−β^2)

であるから、Hは
 ∂f′/∂x=(1/√(1−β^2))(∂f′/∂x′)+((-β/c)/√(1−β^2))(∂f′/∂t′)
同様にIは
 ∂f′/∂t=(-cβ/√(1−β^2))(∂f′/∂x′)+(1/√(1−β^2))(∂f′/∂t′)
となる。
 これを逆に解くと、
  ∂f′/∂x′=(1/√(1−β^2))(∂f′/∂x+(β/c)(∂f′/∂t))・・・・・J
  ∂f′/∂t′=(1/√(1−β^2))(∂f′/∂t+βc(∂f′/∂x))・・・・・・・・K

となる。ここまでが、証明に入る前準備である。

以下では、D′(′,t′)はD′と、ρ′(′,t)はρ′などと(他の関数も同様)略記していくので、この点を注意して読
んで頂きたい。
 いよいよ証明に入ろう。

JとK、またAとBを使って、
 div′′−ρ′
=∂D′/∂x′+∂D′/∂y′+∂D′/∂z′−ρ′
=1/√(1−β^2)(∂D′/∂x+(β/c)∂D′x/∂t)+∂D′/∂y+∂D′/∂z−ρ′・・・L

を得る。
 そこで、ローレンツ変換にともなって、が次のように変換するものとする。
 D′=D                     ・・・・・・・M
 D′=(D−(β/c)H)/√(1−β^2)・・・・・・・・N
 D′=(D+(β/c)H)/√(1−β^2)・・・・・・・・O
 H′=H                    ・・・・・・・P
 H′=(H+v・D)/√(1−β^2)・・・・・・・・・・・・・Q
 H′=(H−v・D)/√(1−β^2)・・・・・・・・・・・・R

また、電流密度と電荷密度の変換は、
 i′=(i−cβρ)/√(1−β^2)・・・・・T
 i′=i                 ・・・・・U
 i′=i                ・・・・・・・V
 ρ′=(ρ−(β/c)i)/√(1−β^2)・・・W
であたえられるものとする。

 すると、Lは、
 div′′−ρ′
=1/√(1−β^2)(∂D/∂x+(β/c)∂D/∂t)+1/√(1−β^2)(∂/∂y)(Dy−(β/c)H
  +1/√(1−β^2)(∂/∂z)(D+(β/c)H)−1/√(1−β^2)(ρ−(β/c)i
=1/√(1−β^2)(div−ρ)+((β/c)/√(1−β^2))(∂(x)/∂t+(x)−rot(x))

となる。ここで、右辺はK系においてマクスウェル方程式D〜Gがなりたっていることから0になり、よって、K´系において

 div′′=ρ′

が成り立つことがわかった。よって、マクスウェル方程式はローレンツ変換に対して不変であることが証明された。
証明終わり。

これが、従来証明の実態です。まさに驚くべき証明ですね。
お気づきと思いますが、上の赤文字のところM〜RとT〜Wの仮定が、<その1>、<その2>で指摘した仮定となってい
るのです(M〜Rは、<その2>I〜Lに対応し、これらは同値です。T〜Wは、もちろん<その1>のL〜Oに対応してい
る)。
「Aと仮定すればローレンツ変換不変となる。だから、Aと仮定しよう。・・・Aを使って計算すれば、ほら、不変となった。 よっ
て、証明された。」という馬鹿馬鹿しい証明となっていることを、よく確認してください。

 加えられた仮定の部分を少し考察してみます。
 じつは、「理論電磁気学」では、このM〜RとT〜Wの仮定の根拠として、「相対性理論の考え方」とはまた別の根拠が
述べられています。しかし、それも説得力のある説明とはなっていない。
Wilsonの実験とEichenwaldの実験という実験があって、それに上のM〜RとT〜Wの仮定を適用すれば、その実験結果を
うまく説明できることを根拠にあげています。しかし、よく検討すると、Wilson実験とEichenwald実験はともに慣性系と別の加
速度系(回転系)の間の関係の状況をとりあつかっている実験です。今回のローレンツ変換は、当然ながら、慣性系と別の
慣性系の間の関係をあつかうものであるため、その結果をそのまま異なる状況の前者二実験に適用することはできません。
にもかかわらず、本ではそのような異なる状況に適用されており、物理的に正しい説明とはなっていないのです。
読者にくりかえしますが「相対論は絶対に正しい!」という思い込みを一旦解いてください。
人間は、一旦思い込むとある種の回路パターンができあがってしまって、その回路の中でしか考えることができなくなります。
新しい視点からものが見れなくなる・・、そうなってはおしまいです。

ある哲学者は「すべてを疑え」と言ったそうですが、この言葉をときどき思い出してほしいのです。

                      すべてを疑え・・・






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