伝説紀行 朝倉のカッパ 朝倉市朝倉
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僕は筑紫次郎。筑後川のほとりで生まれ、筑後川の水で産湯を使ったというからぴったりの名前だろう。年齢や居所なんて野暮なことは聞かないでくれ。 筑後川周辺には数知れない人々の暮らしの歴史があり、お話が山積みされている。その一つ一つを掘り起こしていくと、当時のことや人物が目の前に躍り出てくるから楽しくてしようがない。行った所で誰彼となく話しかける。皆さん、例外なく丁寧に付き合ってくれる。取材に向かうときと、目的を果たして帰るときとでは、その土地への価値観が変わってしまうことしばしば。だから、この仕事をやめられない。 |
水車の郷のカッパ祭り 福岡県朝倉市(朝倉町)
今回は、全国的に有名な三連水車あたりに棲むカッパのお話をしよう。 カッパがアオのワッカにひかっかった 朝倉の暑い夏の午後。菱野村(現朝倉町菱野)近くの筑後川で、ちょっと変った事件が勃発した。働き者で知られる作兵衛が、愛馬アオの背中を洗ってやっているときのことだ。「ヒヒーン」、何に驚いたのかアオがけたたましい鳴き声をあげて陸に上がり、全速力で走り出した。作兵衛もアオの後を追った。
「カッパだ」 爺さまの説得を聞く羽目に 「そげん言うたっちゃ、こんカッパは、子供ば水に沈めたり、畑の野菜ば盗ったり、悪かこつばっかりするけん」 “改心”したら「よかカッパ」 カッパは、爺さまとの約束が済むと釈放され、筑後川に帰っていった。カッパがいなくなると、集まっていた村の者もいつの間にか誰もいなくなった。後に取り残された作兵衛がアオの
「こりゃ、あん時のカッパのお陰ばい」 気温が35度を超える真夏の昼すぎ、生まれて間もない孫を連れて三連水車を見に行った。近くの蜂蜜屋さんに車を止めて歩くこと3分。ずっと前にお邪魔した時は、岸辺に雑草が繁る素朴な川と水車の取り合わせが疲れを癒してくれたものだ。それが今ではどうだ。川辺はすべてセメントで固められ、周りは手馴れた土産物屋が軒を連ねるようになっている。 あれから6年、孫も来年は小学校に上がる。案の定、朝倉の水車は見世物に変身していた。といっても、元の水車は依然として周囲の田んぼの命綱なのだが、すぐ近くに、そっくりの水車を展示して「水車の郷公園」が出現したのだ。建物の中では、水車の歴史や仕組みが丁寧に語られている。人寄せだけの目的でないのが、我が郷土の誇れるところかもしれないな。(07年07月30日) 初稿から10年が経過した。毎年訪れる菱野の三連は、今年も力強かった。何とかその躍動感をリアルにと、最近購入した一眼レフで狙うのだが、まだまだ。 |