パム・グリア 《出演》 |
ひし美ゆり子とパム・グリア。 かつて70年代に「女囚映画」と呼ばれるジャンルが存在した。前半は残酷な拷問の数々、後半は女囚たちの叛乱を描いたどれも同じ内容なのだが、その原型となったのがロジャー・コーマン製作、ジャック・ヒル監督の『残酷女刑務所』。私の記憶によれば、これがパム・グリアの実質的デビュー作である。 2本の「女囚映画」で名を売ったパムは、三たびジャック・ヒルと組んで、アクション女優としての地位を不動にする。『コフィー』である。「女必殺仕置人」として麻薬ディーラーを殺しまくるその勇姿は、『エイリアン』のリプリーや『ターミネーター』のサラの原型であることは間違いない。 続くパムの主演作は初めてヒルの手から離れた『ブラック・ママ・ホワイト・ママ』。内容はあばずれ版「手錠のままの脱獄」。パムはもちろん「ブラック・ママ」の方である(笑)。豪速球のタイトルに思わず顔が綻ぶが、当時の黒人映画(ブラックスプロイテーション)はみんなこんな調子だった。『ボス・ニガー』とか『吸血鬼ブラキュラ』とか。そこにあるのは脳天気な黒人ヨイショのみで、人種差別に鋭く切り込む作品は1本もない。本作もパムとマーガレット・マーコフ(ホワイト・ママ)が、ただひたすらにお色気キャットファイトを繰り広げるのみである。 「私、たいした女優じゃないのよ。だって、ろくな映画に出ていないんですもの」 たしかに彼女はロクな映画に出ていない。再びジャック・ヒルと組んだ『フォクシー・ブラウン』は、作品的には面白いが『コフィー』の二番煎じの感は否めない。続く『シーバ・ベイビー』や『フライデー・フォスター』となると、もう亜流もいいとこで、観客も飽き始める。翌年には黒人映画自体がフェイドアウト。以降、パム・グリア低迷の時代が続く。 そんな中でひときわ輝く作品がある。ポール・ニューマン主演の社会派映画『アパッチ砦ブロンクス』である。ここで彼女は殺人狂の娼婦を演じ、強烈な印象を残す。かくしてアクション女優から個性派へと転身したパムであったが、『クラス・オブ・1999』でのロボット先生あたりを最後に銀幕から消えてしまう。なんと、癌を患っていたのだ。 「今生きていること自体が奇跡に思えるわ。だって私、あと18ケ月の命だって宣告されたのよ」 しかし、彼女は不死鳥の如く復活した。タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』でファンを狂喜させた彼女は、今後も我々を魅了し続けるであろう。 |
関連映画 |
残酷女刑務所 |