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血のバケツ
A BUCKET OF BLOOD

米 1959年 66分 白黒
監督 ロジャー・コーマン
脚本 チャールズ・B・グリフィス
出演 ディック・ミラー
   バーブラ・モリス
   アントニー・カーボーン


 恐ろしくグロテスクな映画である。
 もっとも 、描写的にはグロテスクというわけではない。殺人場面を写すでもなく、血も出てこない。ただ、その設定が限りなくグロテスクなのだ。しかも、コメディとして作られたことで、悪趣味が余計に際立っている。B級映画の帝王、ロジャー・コーマン初期の傑作である。

 チビでノロマのウォルターは、ビート族がたむろするカフェで働きながら、いつの日か彫刻家になることを夢見ていた。或る日、偶然に大家の飼い猫を殺してしまった彼は、証拠隠滅のために屍体を粘土で固めて「死んだ猫」という作品だと称してカフェに持参する。ところが、これが大評判を取り、一夜にして彼は大スター。
「今度は死んだ人間の粘土像を是非作ってくれよ」
 とおだてられて、期待に応えるために彼は、人を殺さなければならないハメになるのであった.....。

 私が最もゾッとしたのは左下の写真のシーンである。カフェの経営者は「死んだ猫」から本物の猫の毛がはみ出しているのを発見し、
「ひょっとしたら、あいつ.....」
 と疑惑に思っているところへ、ウォルターが喜び勇んで新作を持ってくる。ちょうどその時、新聞の売り子が大声で、
「製材所で頭のない屍体を発見!。頭のない屍体を発見!」
 そこへニュッと突き出されたのが、生首の粘土像だったのだ.....。

 ちなみに、この映画、たった5万ドルの予算で、わずか5日間で撮影されたものだという。コーマンの倹約ぶり、早撮りぶりには毎度のことながらも驚かされるが、さらに驚くべきことに、このセットを流用して撮影されたのが、後にミュージカル化された『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』。撮影日数はたった2日だったという。つまり彼はたったの7日間で、今日もなおカルトな人気を誇るブラックコメディ2本を製作してしまったのである。彼が「帝王」と呼ばれる由縁である。


関連人物

ロジャー・コーマン(ROGER CORMAN)


 

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