以前、寝ぼけて弟と父親を殺してしまった少女(ジョー・アン・カイガー)について書いたことがあるが、このたび新たに類似事件を見つけたので紹介しよう。
グラスゴー在住のサイモン・フレイザー(27)は誰からも愛される満点パパさんだった。但し、たまに寝ぼけるのが玉に瑕。そして、その日も寝ぼけに寝ぼけて、遂に取り返しのつかないことを仕出かしてしまった。
1878年4月10日午前1時頃、おもむろにベッドから起き出したフレイザーは、子供部屋に足を向けると、すやすやと眠る息子のサイモン・ジュニア(1歳半)を抱き上げて、その頭を壁にダーンと叩きつけた。ひとたまりもないですよ、これは。ジュニアが二度と目覚めなかったことは云うまでもないだろう。
法廷において争われたのは、まず、寝ぼけた上での犯行であったのか否か、そして、そうであったとして、責任能力が問えるか否かだった。
前段については、家族がフレイザーの寝ぼけ癖を証言した。例えば、彼の父親は息子が14歳の時に、就寝中に馬乗りされて何度もビンタされたと語り、姉は就寝中に首を絞められた旨を明かした。以前からかなり危険な寝ぼけ方をしていたようだ。
後段については、或る精神科医は精神異常であるとし、別の精神科医は正常であるとした。結局、陪審員は「正常だが、責任能力は問えない」と判断し、フレイザーは無罪放免となったようである。
但し、無罪放免の条件として「フレイザーが就寝する際には必ず寝室の鍵を掛けること」との条件が付されたという。そりゃそうだろう。寝ぼけると殺人者になるのだから。
(2012年10月11日/岸田裁月)
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