平成2年11月.
会社で居場所がなくボロボロの1年を過ごした私は,
もう冬の足音の聞こえるなか,伊豆半島の先にある湊というところから下田に,
仕事を終えて戻ってきた.
実はその1週間前,湊に勤務されている先生の恩師に私の仕事が認められ,
真っ暗な闇に一筋の光が射していたのだ.
それまで名古屋−湊,片道4時間強の道のりを,日帰りでこなしていたのだが,
「泊まって仕事して来い」とのお許しが...
(それからの私は,糖尿病性自律神経障害と汗の関係についての研究をすることとなる)
木枯らしの吹く夜.冷え冷えになりながらも,JRに乗り下田より一駅先の蓮台寺へ.
なんでそこまでするのかな?
我ながら不可思議な行動に,ちょいと精神を疑ってみる...いやいや大丈夫.
口コミによると,そこにはひなびた温泉宿があると聞く.
泊まりでなくても入湯させてくれるのだそうな..
駅を下りて,しばらく歩く.
あったじゃない...
おぉ,これぞまさに「仙人風呂」...
大きな木造りの風呂,立ち上る湯気の向こうに1人,2人の影が見え隠れする.
灯りは薄暗く,ハッキリとは見えない.
そこで,私は,それまでの心の垢を,思いっきり落としたのであった.
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