民法改正による請負契約に関する規律の改正
(報酬請求に関する事項、請負人の担保責任に関する事項、住宅の品質確保の促進等に関する法律、解除に関する事項)
2019(令和元)年12月21日
民法改正により請負契約に関する規律が改正され、2020(令和2)年4月1日から施行されます。
この改正された請負契約に関しては、その性質に反しない限り改正された売買契約に関する規律が準用されます。(改正民法559条)
なお、改正された売買契約に関しては、
でご紹介しています。
また、経過規定は以下の通りです。
改正法附則34条1項により、改正民法施行日前(2020(令和2)年3月31日以前)に締結された請負契約については現行法が適用になります。
なお、請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約です。
(改正民法632条)
- 第一 報酬請求に関する事項
- 1 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき(改正民法634条1号)、又は請負が仕事の完成前に解除されたとき(改正民法634条2号)で、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を請求することができます。
(改正民法634条) - 第二 請負人の担保責任に関する事項
- 1 請負人の担保責任について、改正民法では、請負人が種類、品質又は数量に関して、契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときは、注文者は、
- ①履行追完請求
- ②報酬減額請求
- ③損害賠償請求
- ④契約解除
をすることができます。(改正民法559条、562条1項) - 2 但し、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときは、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、前項の救済手段をとることはできません。(改正民法636条本文)
- 3 なお、請負人がかかる材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、注文者は1項記載の担保責任の請求をすることができます。(改正民法636条但書)
- 4 また、上記1項の請負人の担保責任の
- ①履行追完請求
- ②報酬減額請求
- ③損害賠償請求
- ④契約解除
に関しては、
2019(令和元)年12月8日民法改正による売買契約に関する規律の変更
(損害賠償請求、契約解除の他に追完請求の修補請求、代替物引渡請求、そして代金減額請求が新設されました。目的物の種類又は品質に関する契約不適合の場合1年以内の契約不適合の通知が必要になります。)
でご紹介しています。 - 5 担保責任の追求が認められる期間については、
売買契約と同様に、注文者が種類又は品質に関して契約不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知することを要します。(改正民法637条1項)
注文者が種類又は品質に関して契約不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないと、
- ①履行追完請求
- ②報酬減額請求
- ③損害賠償請求
- ④契約解除
をすることができなくなります。
(改正民法637条1項) - 6 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しないので、注文者は請負人に対して担保責任を追求できます。
(改正民法637条2項) - 7 仕事の目的物の数量や移転した権利が契約内容に適合しない場合
- ア 注文者が権利を行使することができることを知った時から5年間、
- イ 権利を行使することができる時から10年間
の消滅時効にかかります。
(改正民法166条1項1号又は2号) - 8 住宅の品質確保の促進等に関する法律94条1項で、住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵(種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいいます。(住宅の品質確保の促進等に関する法律2条5項))について債務不履行による損害賠償(改正民法415条)、催告による解除(改正民法541条)、催告によらない解除(改正民法542条)、注文者の追完請求権(改正民法559条・562条)、注文者の代金減額請求権(改正559条・563条)に規定する担保の責任を負います。
- 第三 解除に関する事項
- 1 請負人が、仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。(改正民法641条)
- 2 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができます。(改正民法642条1項本文)
但し、仕事の完成後は請負人は注文者の破産手続開始を理由として契約を解除することはできないと規制されました。(改正民法642条1項但書)
-
この場合は、一般的な消滅時効が適用され、
注文者は、その消滅時効が完成するまでは、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができます。(改正民法636条、637条1項、566条参照)