民法改正による消費貸借契約に関する規律の改正
(諾成的消費貸借契約、利息、引渡義務、返還時期に関する事項)
2019(令和元)年12月12日
民法改正により消費貸借契約に関する規律が改正され、2020(令和2)年4月1日から施行されます。
この改正された消費貸借契約の内利息の約定のある有償の消費貸借契約に関しては、その性質に反しない限り改正された売買契約に関する規律が準用されます。
(改正民法559条)
なお、改正された売買契約に関しては、
でご紹介しています。
また、経過規定は以下の通りです。
改正法附則34条1項により、改正民法施行日前(2020(令和2)年3月31日以前)に締結された消費貸借契約については現行法が適用になります。
消費貸借契約は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる契約です。
(改正民法587条)
- 第一 書面でする諾成的消費貸借契約
- 1 現行法では、消費貸借契約は、消費貸借の目的物が相手方に引き渡されることが契約成立の要件であるとする要物契約として規定されています。
- 2 しかし、改正民法は、消費貸借契約の目的物の引き渡しがなくても、書面で契約すれば諾成的消費貸借契約の成立を認めました。(改正民法587条の2第1項)
なお、口頭での諾成的消費貸借契約の成立は認められていません。 - 3 借主は、貸主から金銭等の物を受け取るまでは、消費貸借契約の解除をすることができます。(改正民法587条の2第2項前段)
- 4 前項の場合に、かかる解除によって、金銭等の調達コスト等の損害が生じた場合、貸主は借主に対して、損害賠償を請求することができます。(改正民法587条の2第2項後段)
- 5 書面による諾成的消費貸借で、借主が貸主から金銭等の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、消費貸借契約の効力は失われます。(改正民法587条の2第3項)
- 6 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなされます。(改正民法587条の2第4項)
- 第二 利息に関する事項
- 1 改正法は、当事者間に特約がなければ利息を請求することができないと明文化しました。(改正民法589条1項)
- 2 利息の発生時期については、借主が金銭等の物を受け取った日以降の利息を請求することができると規定されました。(改正民法589条2項)
- 3 なお、法定利息に関しては、
2019(令和元)年5月2日民法の法定利率及び商法の商事法定利率(遅延損害金の利率)の改正民法による変更(改正民法の施行は2020年4月1日からです。)
でご紹介しています。 - 第三 引渡義務に関する事項
- 1 改正民法の、無利息の消費貸借契約に関しての目的物引渡義務に関しては、貸主は、目的物として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定されることになりました。(改正民法590条1項、551条準用)
- 2 改正民法の、有償契約である利息付きの消費貸借契約については、改正民法559条で売主の担保責任に関する規定が準用される結果、消費貸借契約の目的物について契約不適合が認められる場合には、修補請求、代替物の引渡し請求、不足分の引渡し請求という履行の追完請求(改正民法559条、562条1項本文)や損害賠償請求(改正民法559条、564条)が可能であることが明文化されました。
なお、改正された売買契約に関しては、
2019(令和元)年12月8日民法改正による売買契約に関する規律の変更
(損害賠償請求、契約解除の他に追完請求の修補請求、代替物引渡請求、そして代金減額請求が新設されました。目的物の種類又は品質に関する契約不適合の場合1年以内の契約不適合の通知が必要になります。)
でご紹介しています。 - 3 改正民法では、消費貸借契約の目的物の種類又は品質に関して契約不適合がある場合には借主は、利息合意の有無を問わず価額による返還をすることができると規定されました。(改正民法590条2項)
- 第四 返還時期に関する事項
- 1 改正民法では、消費貸借契約で返還の時期の定めの有無を問わず、借主はいつでも返還をすることができると規定されました。(改正民法591条2項)
- 2 消費貸借契約で返還の時期の定めがある場合において、借主が返還時期の到来前に返還したことによって貸主が損害を受けた場合、貸主は借主に対して損害賠償請求をすることができると定められました。
(改正民法591条3項)