抵当権の担保する被担保債権が免責許可決定の効力を受けた場合における当該抵当権自体の消滅時効は20年です。

2018(平成30)年8月12日

 

 抵当権が担保する被担保債権が、破産手続により免責許可決定の効力を受けた場合に、抵当権はどうなるかという問題があります。

 

 まず、抵当権は、担保物権であり担保物権の通有性として附従性を有することから、被担保債権が免責許可決定の効力を受けた場合に被担保債権が消滅したとして抵当権が消滅するかということが問題になります。

 

 この点について、判例通説は免責許可決定の効力を受けた債権は消滅せず所謂「自然債務」になると考えています。(破産法253条1項本文・最判平成9年2月25日判時1607号51頁参照)

 

 従って、免責許可決定の効力を受けた被担保債権を担保する抵当権は、被担保債権が免責許可決定の効力を受けても被担保債権が消滅したことにはなりませんから担保物権の附従性により消滅することにはなりません。

 

 なお、「自然債務」とは、

 債権が有する、

 ①請求力

 ②給付保持力

 ③訴求力(訴訟によって権利実現をはかる力)

 ④強制力(強制執行により権利の実現をはかる力)

の4つの力の内、②給付保持力(債権者が債務者から任意に給付を受けた場合、それを保持する力があり不当利得にはならないことをいいます。)のみがある債権です。

 これを債務者の立場からは「自然債務」といいます。

 

 因(ちな)みに、「免責許可決定」、及び「自然債務」に関しては、

2004年12月16日自己破産について

の「第7 免責」の部分を参照してください。

 

 次に、免責許可決定の効力を受けた被担保債権について消滅時効がどうなるかという問題がでてきます。

 

 この問題について、最高裁判所は平成11年11月9日第三小法廷判決(民集53巻8号1403頁)で、

「免責許可決定の効力を受けた債権は、債権者において訴えをもって履行を請求してその実現を図ることができなくなり、その債権についてもはや民法166条1項に定める「権利を行使することを得る時」を起算点とする消滅時効の進行を観念することができない。」

と判断しています。

 

 そして更に、最高裁判所は、抵当権自体の消滅時効に関して平成30年2月23日第二小法廷判決で、抵当権自体の消滅時効に関して「民法396条は、その文理に照らすと、被担保債権が時効により消滅する余地があることを前提としていることから、抵当権の被担保債権が免責許可決定の効力を受ける場合には、民法396条は適用されず、抵当権自体の消滅時効は民法167条2項により20年である。」という判断をしました。

 

 それでは、その抵当権自体の20年の消滅時効の起算点がいつかという問題があります。

 抵当権自体の20年の消滅時効の起算点は、抵当権を行使できるときということになりますが、それが具体的にいつのことなのかについて、上記平成30年2月23日判決は明言していないようです。

 抵当権の消滅時効の起算点については、被担保債権の弁済期(債務不履行の時)であるとの考え方や、被担保債権の消滅時効の進行を観念することができなくなった免責許可決定の確定時であるとの考え方がありえるでしょう。

 

 なお、消滅時効に関しては、

2002(平成14)年5月24日時効ー取得時効、消滅時効

をご参照ください。

 

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