時効-取得時効,消滅時効
2002(H14).5.24
2004(H16).4.30改訂
2011(H23).5.7再改訂
2016(H28).11.16再改訂
2016(H28).12.12再改訂
2016(H28).12.22再改訂
2019(H31).2.20再改訂
2019(R元).6.10再改訂
2019(R元).6.27再改訂
2019(R元).9.28再改訂
2020(R2).2.25再改訂
2020(R2).3.6再改訂
2020(R2).4.10再改訂
2020(R2).8.27再改訂
2004(H16).4.30改訂
2011(H23).5.7再改訂
2016(H28).11.16再改訂
2016(H28).12.12再改訂
2016(H28).12.22再改訂
2019(H31).2.20再改訂
2019(R元).6.10再改訂
2019(R元).6.27再改訂
2019(R元).9.28再改訂
2020(R2).2.25再改訂
2020(R2).3.6再改訂
2020(R2).4.10再改訂
2020(R2).8.27再改訂
時効とは、一定の事実状態が継続した場合に、それが真実の権利関係と一致するか否かを問わずそのまま権利関係として認めようとする制度です。
時効については、援用することが必要です。
- 第一 取得時効
取得時効に関しては民法の改正はなされませんでした。
- 1 20年間所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有した者はその所有権を取得する。(民法162条1項)
- 2 10年間所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有した者でその占有の始めに善意かつ無過失であればその所有権を取得する。(民法162条2項)
- 3 所有権以外の財産権を自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使した者は、上記1、2の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得します。(民法163条)
- 第二 消滅時効
- 第1 改正前の民法の債権の消滅時効の期間は以下の通りです。
- 1 債権及び所有権以外の財産権は20年間これを行使しなければ消滅する。(民法167条2項)
- 2 民事債権は10年間これを行使しなければ消滅する。(民法167条1項)
- 3 商事債権は5年間これを行使しなければ消滅する。(商法522条)
- 4 定期給付債権(年またはこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権)は5年間これを行使しなければ消滅する。(民法169条)
- 5 手形債権は満期の日から3年間これを行使しなければ消滅する。(手形法70条,77条)
- 6 不法行為に基づく損害賠償請求権は損害及び加害者を知りたる時より3年間これを行使しなければ消滅する。(民法724条)
不法行為の時から20年を経過したときも消滅する。(民法724条) - 7 医師の施術等の債権、請負人の工事代金債権は3年間これを行使しなければ消滅する。(民法170条)
- 8 生産者、卸商、小売商の売掛債権、塾等の教育債権、弁護士の報酬債権は2年間これを行使しないと消滅する。(民法173条)
- 9 労働者の賃金請求権(退職金の消滅時効は5年間)はこれを行使しなければ2年間で消滅する。(労基法115条)
退職金請求権はこれを行使しなければ5年間で消滅する。(労基法115条) - 10 芸人の賃金、旅店・料理屋の宿泊料・飲食料は1年間これを行使しないと消滅する。(民法174条)
- 11 小切手債権は呈示期間経過後6カ月これを行使しなければ消滅する。(小切手法51条,但し58条)
- 12 遺留分減殺請求権は相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間これを行使しなければ消滅する。(民法1042条)
- 13 判決や調停等の確定した債権は以上にかかわらず消滅時効期間は10年になる。(法174条ノ2)
- 第2 改正後の消滅時効の期間は以下の通りです。
- 1 債権の消滅時効の時効期間の原則(改正民法166条1項)
・債権者が権利を行使できることを知ってから5年
・権利を行使できる時から10年 - 2 不法行為に基づく損害賠償請求権(改正民法724条)
・損害及び加害者を知った時から3年
・不法行為の時(権利を行使できる時)から20年(時効期間) - 3 人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間の特則(改正民法167条,改正民法724条の2)
・債権者が権利を行使できることを知ってから5年
・権利を行使できる時から20年 - 4 定期金の債権
・債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間
・各債権を行使することができる時から20年間(改正民法168条1項) - 5 手形法・小切手法に定められた手形上・小切手上の債権の消滅時効の期間は変わりません。
- 6 労働基準法が改正され,施行日である2020(令和2)年4月1日以降に賃金支払日が到来する賃金請求権の消滅時効期間は、5年間ですが当分の間3年間になります。退職金請求権は5年間の消滅時効です。(改正労働基準法115条)
- 7 遺留分侵害額請求権の期間制限
遺留分権利者が、相続の開始及び、遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効によって消滅
相続開始の時から10年間経過した時も消滅(改正民法1048条)
(なお、遺留分侵害額請求権の改正法の施行日は2019年7月1日です。) - 8 判決で確定した権利の消滅時効
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても10年(改正民法169条1項) - 9 債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20年間行使しないときは,時効によって消滅する。(改正民法166条2項)
- 第3 経過措置(附則10条1項・4項)
- ・施行日前に生じていた債権
→改正前の法律が適用されます。 - ・施行日前になされた法律行為によって施行日後に生じた債権
→改正前の法律が適用されます。 - ・施行日後になされた法律行為によって生じた債権
→改正後の法律が適用されます。 - ・人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については,2020年4月1日の改正民法の施行日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効(「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」)が完成していない場合には,改正後の新しい民法(上記第2の3項記載の5年,20年)が適用されます。(附則35条2項)
- 第三 「時効の中断」(民法147条)、「時効の停止」(民法160条、161条)が改正され、「時効の更新」「時効の完成猶予」という制度になりました。
- 第1 従前の制度
- 1 訴訟提起や差押、仮差押えが時効中断事由です。
- 2 債務承認も時効中断事由です。
- 3 具体的には以下の方法が実践的です。
・残高確認書を作成してもらう。
・債務の弁済を受ける。(1円でももらう。銀行振込なら通帳に記帳されるので証拠として使える。弁済の事実を証明するため領収書の控えに相手方から領収書をもらったという受領印をもらう。)
・債務弁済契約書を作成する。 - 4 単に請求書を定期的に送付しただけでは消滅時効は中断しません。(6か月内に裁判上の請求等の手続をしなければだめです。)(民法153条)
- 第2 今回の民法改正により従来規定されていた「時効の中断」「時効の停止」の制度にかえて、「時効の更新」「時効の完成猶予」という制度が定められました。(改正民法147条~161条)
「時効の更新」は、いままで進行した時効期間をいったん清算して、その時から新たに時効期間を進行させる制度です。
但し、実務的には従前の取扱いと大きな差は出ないと思われます。
「時効の完成猶予」は、その事由が生じても時効はそのまま進行しますが、時効期間が満了しても時効の完成猶予の効果が継続している間は時効が完成しないとする制度です。 -
第3 協議による時効完成猶予(改正民法151条1項・2項・3項・4項)
協議を行う旨の書面(電磁的記録も書面とみなされます。)による合意があれば
- ① 合意から1年
- ② 合意において定めた協議期間の経過
- ③ 書面による協議の続行拒絶通知から6カ月
- のいずれか早い時まで時効の完成が猶予されます。
- また,協議による完成猶予中の再合意は,本来の時効完成時から通算5年以内は可能です。
- 第4 経過措置(附則10条2項・3項)
- ・施行日前に生じた時効の中断、停止の事由の効果
→改正前の法律が適用されます。 - ・施行日後に生じた時効の完成猶予、更新の事由
→改正後の法律が適用されます。
民法改正がなされ、消滅時効の期間等が改正されました。
この改正法の施行は,2020年4月1日です。
但し、遺留分侵害額請求権の改正法の施行日は、2019年7月1日です。