第一 平成26年改正会社法(平成27年5月1日施行)で、社外取締役活用のために新設された、社外取締役を選任しない場合の、社外取締役を置くことが相当でない理由の株主総会における説明義務(平成26年改正会社法327条の2)
第二 令和元年改正会社法で新設された「社外取締役を置くことの義務付け」(令和元年改正会社法327条の2)
2016(平成28)年3月30日
2021(令和3)年5月19日改訂
2021(令和3)年5月19日改訂
- 第一 平成26年改正会社法の「社外取締役を選任しない場合の、社外取締役を置くことが相当でない理由の説明義務」
- 1 2016(平成28)年3月9日会社法改正法(平成27年5月1日施行)で新設された「監査等委員会設置会社」制度を制定した理由とその概要
でご紹介しましたように、2015(平成27)年5月1日に施行された会社法改正法(以下「平成26年改正会社法」といいます。)の改正目的の大きな柱の1つが企業統治(コーポレート・ガバナンス)の強化で、企業統治の強化を図るために社外取締役の活用を目指していますが、社外取締役の選任を義務づける旨の規定までは設けませんでした。 - 2 しかし、社外取締役を選任しない場合の、社外取締役を置くことが相当でない理由を株主総会で説明しなければならないという義務を新設しました。(平成26年改正会社法327条の2)
- 3 この説明義務を課せられる株式会社は、監査役会設置会社であり、なおかつ金融商品取引法の適用会社(公開会社・大会社)に限定されます。
上記の監査等委員会設置会社及び改正後の指名委員会等設置会社(改正前は「委員会設置会社」と規定されていました。)は、その機関設計上当然に社外取締役を選任することが必要になっていますので、上記の説明義務の対象会社にはなりません。
すなわち、金融商品取引法24条1項の規定より株式について有価証券報告書提出義務の適用される大会社でありかつ公開会社である監査役会設置会社がその説明義務を負担することになります。 - 4 このような株式会社には、複数の社外監査役が選任されています。
そのような社外監査役に加えて社外取締役の選任が強く推奨される理由は以下の通りと説明されています。 - ① 社外取締役には、重要事項の決定や経営者の選定や解職について議決権を行使することによる経営全般に対する監督機能が期待される。
- ② 会社や経営者間等の利益相反に関する監督機能が期待される。
- 5 そして、その説明義務の内容の「社外取締役を置くことが相当でない理由」とは、単に「置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない積極的理由」を指します。
したがって、単に社外監査役を複数選任しているというだけの理由では、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明にはなりません。 - 6 この説明義務の新設は、英米法の「comply or explain」ルール(遵守せよ、さもなくば説明せよのルール)が採用されたという説明もなされています。
いわゆるソフトローの規定になると思われます。 - 7 すなわち、平成26年改正会社法327条の2において、事業年度の末日において社外取締役を置いていない、有価証券報告書の提出義務を負う公開会社であり大会社である監査役会設置会社の取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、株主からの質問がなくても説明しなければならないものとされました。
- 8 この説明義務の新設により、公開会社であり、かつ大会社である多数の監査役会設置会社が、定款を変更して監査等委員会設置会社に移行する予定であることは、上記の監査等委員会設置会社の説明で記載しました。
- 1 令和元年改正会社法で、公開・大会社である監査役会設置会社であって、金融商品取引法24条1項の規定により株式について有価証券報告書提出義務を負う株式会社は、社外取締役を置くことが義務付けられました。(令和元年改正会社法327条の2)
- 2 令和元年改正会社法の327条の2の社外取締役の設置義務の条文は2021(令和3)年3月1日に施行されました。
- 3 令和元年改正会社法の施行の際現に監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限ります。)であって、その発行する株式について有価証券報告書提出義務を負う株式会社について令和元年改正会社法327条の2の規定は、令和元年改正会社法の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株式総会の終結の時まで適用されません。(改正法付則5条)
第二 令和元年改正会社法による「社外取締役を置くことの義務付け」
坂本三郎編著 一問一答平成26年改正会社法 商事法務
二重橋法律事務所編 Q&A平成26年改正会社法 金融財政事情研究会
野村修也・奥村健志編著 平成26年改正会社法 有斐閣
太田洋編著 速報会社法改正 清文社
神田秀樹著 会社法(18版) 弘文堂
江頭憲治郎著 株式会社法第6版 有斐閣
第一東京弁護士会総合法律研究所会社法研究会編 Q&A令和元年改正会社法
新日本法規出版