ハンセン病問題基本法成立

 6月11日、「ハンセン病問題基本法」は参議院本会議で採択され、成立するに至りました。
 法制定に向けてご協力いただきましたすべての皆様に篤くお礼申し上げます。

  ハンセン病問題基本法
  6月11日全療協声明

 


 ハンセン病療養所の将来構想について、国は何もしてくれない。
 これからの療養所がどうなっていくのか、入所者は不安でいっぱいです。
 入所者が安心して暮らせる療養所の未来を求めて署名活動を展開しています。
 みなさまのご協力をお願いします。


 〜全療協からのメッセージ〜
 戦前から戦後にかけて、ハンセン病を発症したというだけで、患者は社会で生活することを許されず、官民一体となってすすめられた「無らい県運動」等によって、町や村から徹底的に排除され、国立療養所に強制隔離されました。

 戦後は特効薬プロミンにより、ハンセン病は治癒するようになりましたが、患者の強制隔離絶滅政策を基本とした「らい予防法」は、1996年まで存続したために、病は癒えても社会復帰は容易ではありませんでした。

 2001年5月のハンセン病国賠訴訟の熊本判決は、国のこの政策を断罪し、その後の制度改革によりハンセン病政策は大きく前進しました。しかし、ハンセン病療養所では、長年の隔離によって高齢化が進み、社会の根強い差別感情もあって依然社会復帰は容易ではありません。「らい予防法」廃止時全国5千人と言われた入所者の数は現在3千人を切り、10年後には1千人以下になると予測されるようになりました。それにもかかわらず、国は、ハンセン病療養所の将来についての具体策を何ら示すことなく、ただ入所者の動向を傍観しているのみで自然消滅を待つという姿勢です。

 平均年齢が78歳を超えたいま、入所者は、この先、療養所でどういう暮らしができるのか、どういう医療体制が確保されるのか、将来像が見えないまま、不安な思いを募らせています。ある入所者は、「国は最後の一人まで面倒を見ると言うけれど、最後の一人にはなりたくない。その前に死にたい。」とその思いを語っています。

 私たちは、長年強制隔離政策に苦しめられてきた入所者が、その晩年を、社会から切り離されることなく、たとえ「最後の一人」になるときが来るとしても、社会の中で生活するのと遜色のない生活及び医療が保障され、安心して暮らすことができることを願っています。

 ハンセン病療養所の将来のあり方を問う問題は、ひとり入所者のみが取り組んで解決する問題ではありません。立法府、行政府はもとより、地方行政機関及び市民の皆様にも問われている重大な課題でもあります。

 私たち、ハンセン病療養所入所者協議会(略称・全療協)は、ハンセン病問題の全面解決のために、多くの市民の皆様のご理解とご支援を得ながら、組織として最後の人生をかけた運動に立ちあがる決意をいたしました。

 私たちのこの運動の趣旨をぜひご理解いただき、ハンセン病問題の真の解決をはかるため、後掲「ハンセン病問題基本法(要綱)」の法案成立に最大限ご尽力をいただくとともに、「らい予防法」廃止時の国会決議に基づき、ハンセン病療養所の医療・福祉を拡充し、地域に開かれた施設として、ハンセン病療養所の真の社会化が実現するよう、右記の事項について請願します。

ハンセン病問題基本法・要綱について

 

ハンセン病療養所の将来構想をすすめる会

 

        ハンセン病問題の原点である「差別・隔離政策からの被害回復」を中心に据えた基本法の要綱として作成しました。

 

        これまで国が約束してきたことを法律にして国の責務を明らかにするとともに、とりわけ、緊急の課題である療養所の「将来構想」問題について、国の責務を明確にし、法律上の障害を取り除くことを求めるものです。

 

         具体的には、「療養所はハンセン病患者であった入所者だけに療養を行う施設である」という施設利用制限の根拠となっている「らい予防法の廃止に関する法律」2条などの問題点を克服し、これに代えて、地域に開かれ、広く市民が利用できる施設を併設できるようにする法律を制定すべきとするものです。

 
     ※ハンセン病療養所の将来構想をすすめる会
      (参加団体)
        全国ハンセン病療養所入所者協議会
        ハンセン病意見購買訴訟前項k原告団協議会
        ハンセン病意見国賠訴訟全国弁護団連絡会
        ハンセン病市民学会
        全日本国立医療労働組合
        ハンセン病首都圏市民の会

 

<ハンセン病問題基本法・要綱(抄)>

◎ 総則関係

○ 基本理念

(1)       ハンセン病問題に関する施策について、誤った政策による被害の原状回復を可能な限り実現することを旨として行う国の責務。

(2)       誤った政策によって作出、助長された差別・偏見を除去するため、ハンセン病及びハンセン病対策の歴史に関する正しい知識の普及・啓発に努めるとともに、ハンセン病患者であった者及びその家族の名誉の回復に努める国の責務。

(3)       誤った隔離政策の下で療養所に入所することとなった入所者等が、現在居住するハンセン病療養所で、たとえ一人になっても社会の中で生活するのと遜色のない生活及び医療が保障され、安心して暮らせるよう確保する国の責務。

(4)       社会内生活を困難とする、誤ったハンセン病政策の下でハンセン病患者であった者が、社会に復帰することを支援し、また、社会内で生活することを終生にわたって援助する国の責務。

(5)       上記(1)乃至(4)の基本理念に照らし、13の国立ハンセン病療養所等が地域社会において開かれた施設となるよう配慮する国の責務。

(6)       ハンセン病問題に関する施策を実施するにあたって、上記(1)ないし(5)の基本理念に従って行う地方公共団体の責務。

 ○ 当事者の意思の尊重

 

 

◎ 国立ハンセン病療養所等における生活及び療養の保障

 ○ 国立ハンセン病療養所における療養

国は、国立ハンセン病療養所において、入所者等に対して、必要な療養を行うこと。

 ○ 在園及び生活水準等の保障

(1) 国は、入所者等の意思に反して、国立ハンセン病療養所から退所、転園させてはならないこと。

(2) 国は、入所者等に対し、社会の中で生活するのと遜色のない生活及び医療の水準を保障するため、財政上の措置を講ずるとともに、13の国立ハンセン病療養所の生活環境及び医療体制の整備を行うよう最大限努めること。

(3) 国は、(2)に定めた国立ハンセン病療養所の生活環境及び医療体制の整備にあたって、入所者等がその居住する国立ハンセン病療養所でたとえ一人になっても安心して暮らせるようにすると共に、その生活が地域社会から孤立したものにならないよう配慮しなければならないこと。

(4) 国は、上記(2)及び(3)の目的を達成するため、国立ハンセン病療養所の土地及び設備(新たに設置する施設、啓発・名誉回復のための施設などを含む。)を地域住民等の利用に供する等、必要な措置を講ずることができること。

地域住民等が利用する施設の事業執行者を認可する手続などは、別途厚生労働省令で定めること。

 

◎ 社会復帰の促進及び社会内生活の援助

 ○ 退所者及び非入所者給与金

 ○ ハンセン病等に対する社会内医療体制の整備

  国及び地方公共団体は、退所者及び非入所者が、国立ハンセン病療養所以外の医療機関においても、安心してハンセン病及びその後遺症等関連疾患の治療を受けるための医療体制の整備に努めなければならないこと。

 ○  相談窓口の設置等

 

◎ 親族等の援護

 

◎ 啓発及び名誉回復並びに死没者の名誉回復追悼

 ○ 啓発及び名誉回復

国は、ハンセン病及びハンセン病対策の歴史に関する正しい知識の普及啓発並びにハンセン病患者であった者及びその家族の名誉回復を図るために、資料の保存、ハンセン病資料館及びハンセン病療養所の歴史的建造物の管理運営その他本項の目的のために必要な措置を講ずること。

 ○  死没者の名誉回復追悼

国は、ハンセン病の患者であった者で死没した者に対する追悼の意を表するとともに、その名誉の回復を図るために必要な措置を講ずること。

 

◎ 「らい予防法の廃止に関する法律」の廃止 

署名賛同者・賛同団体一覧
 

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