サイトTOP別館TOPコンテンツTOP

第百八十二章

ヌウのパピルスより


 オシリスを確立せしめ、静かなる心に空気を与え、同時に、トトとホルスの諸敵を撃退せしむ章。

 オシリスはその変形にてここに来たり、保護せられ、強くせられ、トト自らの意思の作用にて下界に於いて護衛せらる、シュウは日々、彼の上に没す。

 トト曰く、

「我はトトなり、完全なる書記生にて、その両手は純潔なり。二角の主にして邪悪を破壊する者なり、正義と真理<マアト>の書記生にして、罪を忌み嫌う者なり。視よ、彼は法律の主、知恵と理解の言葉を発する者、その言葉は、二つの大地<アケト・タウィ>を支配する者たる、ネブ=エル=チェルの神の葦筆なり。

 我はトトなり、正義と心理の主、そを神のために試みる者、言葉の本質の審判者、その言葉を以って暴逆に勝つ者なり。

 我は暗黒を消散せしめたり、旋風と荒天を撃退せり。而して我は、オシリス=ウン=ネフェルが之を生める母の胎内より出で来る時、之に愉快なる北の微風を与えたり。
 我はラーの如くオシリスを没せしめたり。我は静かなる心、即ちアメンテトに住まう聖なる霊魂を活動させ、ヌトの子なるウン=ネフェルに喜びの叫びを発せしめんがため、彼を「隠れたる場所」に入らせたる。

 我はトトなり、ラーのいとし子、力の主、彼の為すことを栄光ある終結に至らしめる者、幾百万年の舟の中にある大いなる魔術師、法律の主、二つの大地の服従者、その言葉に力を与える者、その言葉によって反対と争いを制する者、また、その神廟のうちにおいて、ラーの意思を履行する者なり。

 我はトトなり、オシリスを、その諸敵に勝利させる者なり。

 我はトトなり、黎明に命令を発する者。オシリスが己の時節に転覆した後、再び天と大地と下界との案内者に従い、全ての国民と、すべての人民との生命の創造者に従い行く。我は、発する言葉によりて、隠れたる場所にありしオシリスに空気を与えたり。而して、オシリスはその諸敵を討つ力を得たり。

 我は汝に来たれり、タ=チェセルの主、オシリス、アメンテトの汪氏、而して汝は永久に強められたり。我は我が手に保護を有し、一日一日のうちに力を得、汝の肢体の保護者として永久を置く。保護と生命とは汝が背後にあり、而して汝のカーは、力を持ちて崇められん。

 ドゥアトの主、アメンテトの君、天における勝利者にして征服者は、彼の上に置かれたるアテフ冠を手にする。
 彼は白冠を戴き、杖と鞭とを握る諸々の魂を統べる者。ウレレト冠(?)の強大者たる彼の前に神々は集合す。其の名はウン=ネフェル(顔美しきもの)なり、悠久に存在すべき彼の四肢に、彼に対する愛が行き渡る。

 今、汝を敬礼し奉る、アメンティに在る者たちの主宰にしてて、すべての人間を生まれ変わらせ、自らも若返る者。
 汝は来たりて汝の時節に住し、かつ汝は[ここらへん欠損]…よりも美しき者。汝の子なるホルスは汝のために復讐せり。
 アトゥムの威厳は汝に与えられるだろう、ウン=ネフェルよ。汝は蘇る、アメンテトの牡牛よ。汝はヌトの身体の内に確立さる、而してヌトは汝と一体化し、汝とともに出現す。汝の心は是を指示する者の上に確立され、而して、汝が心は(死したる後も)元のままなり。
 汝の鼻は生命と力を備えて硬く定まり、汝は生きる、汝は一日一日ごとに若返る。
 勝利の中にあるオシリスは偉大なり、汝は生命<アンク>を備えて確固として立てり。

 我はトトなり、我はホルスを慰安し、荒天の時節にある二人の聖なる闘争者(セトとホルス)を宥めたり。
 我はトトなり、我はセケム(レトポリス)において、「夜の供物」を作れり。
 我はトトなり、我は日々テプの町に来れり。供物と奉納物とを調達し、呑むところなく菓子をそのカーに与えたり。
 我はオシリスの肩を保護せり、我は彼をミイラにせり、我は彼の香を芳しくし、しかも美しく、神々の如くせり。

 我はトトなり、日々ケル=アハの町を訪れり。我は網具を結束し、マアンケトの舟を整頓し、日々この舟を東より西へと運航させる。
 我は高く崇められ、我が名、"その顔の崇められたる者"において、如何なる神よりも高し。
 我は"道の開拓者"なる我が名において、美なるものを開けり、永遠に存在するオシリス=ウン=ネフェルを賛美し、かつ拝礼す。」


頑張って、だいぶ簡単めの文にしてみましたがヤッパ難しいですかそうですか。
簡単に言うと、ここで「オシリス」と言われているものは、神としてのオシリスであり、死してオシリスと一体化すべき死者でもある。
オシリス神の保護者であるトト神は、死者の保護者でもあり、オシリスの敵を打ち払うということは、死者の敵も打ち払ってくれるということである。

…そんなとこですかねぇ。
死者にとってはきっとありがたい神様だったことでしょう。



戻る