2024/2/5
古代エジプトで使われていた単位については、まだまだ不明点も多いという。資料によって微妙に単位が異なっていたり、学者さんによって説が異なっていたりする。どれが正しいなんてのは分からんです。古代人に聞かないと。
なので、厳密な話は専門書でも探してください。ここは、中の人がわりとテキトーに「だいたいニュアンス伝わりゃいいよ」ってことで、参考までに纏めてみたものです。
■どうやって単位の中身を推測してるのか?〜長さと角度
現代人の単位では中途半端になってしまう古代エジプトの長さ・重さといったものは、古代人からするとキリのいい数字になっていたハズ。でなきゃピラミッドとか作れないし。
…と、いうのが前提です。
たとえばピラミッドの傾きを測ってみて、「んー、この角度を出すのに、いま手元にある単位をどう使ったらいいのかな?」と、考える。そして1キュービットの高さに対し1パームの底辺を持つ三角形を描いてみたら、その角度がぴったりビンゴ…「ああ、じゃあ、これが角度(セケド)を計算する基準か…」と、納得する。みたいなカンジ。キュービット尺が現代の単位で何センチかを最初に考えた学者さんは、ピラミッドの玄室の長さを計って、その長さを「○分の1」にした調度いい長さが1キュービットになるだろう。と仮定して計算したようです。
角度については、長さの単位を確定したあとでピラミッドの傾きを測ってみて、「この角度を出すのに、いま手元にある単位をどう使ったらいいのかな?」と、考える。そして1キュービットの高さに対し1パームの底辺を持つ三角形を描いてみたら、その角度がぴったりビンゴ…「ああ、じゃあ、これが角度(セケド)を計算する基準か…」と、いう感じで推測してます。
オベリスクやピラミッドの傾きも、農地の管理も税収となる穀物の軽量も、基準となる単位があってはじめて計算できます。
なので、建設記録や税管理などの文書から、単位どうしの関連性を推測している部分もあります。
ただし、時代ごとに違っていた可能性もあるので、現在の説が今後も変わらないとは限りません。あくまで目安ね。違ってても私ぁ責任とれんよ…
■どうやって単位の中身を推測してるのか?〜容積・面積
基本になっているのは長さの「ロイヤル・キュービット」。この長さを基準に、「一片がxxキュービットの容器に入る量」とか、「xxキュービット四方の面積」とかいう関係から計算されてます。たとえば面積の「1セチャト」は「10000平方キュービット」みたいな感じです。なのでキュービット尺の長さが間違えてたら他のも全部変わる事態に。(笑) キュービット尺が数ミリ変わるだけで誤差がかなり出ます。
■数学の教科書から他の単位を推測
長さ、容積などには基本となる単位があって、その単位の上位・下位単位が存在するようです。
現代だと、センチに対してメートルやキロがあるような感じで。古代にも数学の教科書があり、その中に「1キロとは1000メートルのことである。1/2キロは何センチか?」のような問題が書かれていることから、異なる単位の関係を想定しています。
(下の図で「相関」となっている欄)
通称 | ギリシャ語名 | エジプト語名 | 相関 | 現代単位に換算 | |
長さ | 腕尺 | ロイヤル・キュービット 公的に使用された長さ |
メフ | 7パーム、 28ディジット |
52.4cm (別説:52.3cm) |
- | 短キュービット (小キュービット) |
セチェト | 6パーム、 24ディジット |
44.9cm | |
(後世のキュービット) | ? | 64.2cm | |||
*後世のキュービットは、ペルシア支配時代に使用されたものを指す | |||||
掌尺 | パーム | シェセプ | 1/7ロイヤル・キュービット | 約7.5センチ | |
指尺 | ディジット | ジェバア | 1/4パーム、 1/28ロイヤルキュービット |
約1.875センチ | |
チェベト | 1/6ロイヤル・キュービット? | 約10.4cm※ | |||
ネビュ | 約65cm※ | ||||
*チェベトは古王国時代のマスタバから発見された単位、後世に使われたかは不明 | |||||
タ(メフ=タ) | 100キュービット | 約5240cm | |||
メレン | 約37.5cm | ||||
レメン | 2メレン | 約75cm | |||
*「レメン」は、1辺が1ロイヤル・キュービットの正方形の対角線 | |||||
ケト | 100キュービット | 約52.4m | |||
川尺 | イテルゥ | 20,000キュービット | 約10.5km | ||
*「イテルゥ」はナイル川に沿って船を岸から引っ張った場合に1日で進める距離 | |||||
角度 | セケド | 下図参照 | |||
*高さ1キュービットに対し、底辺を1パームとした角度 |
|||||
面積 | アルーラ | セチャト | 1平方ケト、 10000平方キュービット |
約52.4u | |
重さ | デベン(主に銅に使用) | 93.3g(別説:91g) | |||
キテ(金・銀に使用) | 1/10デベン | 約9.3g | |||
シャト | 約15g | ||||
容積 | ロー | 320ヘカト | 約1526.4リットル | ||
カル | 20ヘカト 1立方キュービットの2/3 |
約75.2リットル | |||
ヘカト | 4.028〜 5.44リットル |
||||
*50ヘカト=1/2、25ヘカト=1/4と記されることから、100ヘカトが1と見なされる概念だったようだ | |||||
ヒン (複数形ヒヌウ) |
1/10ヘカト | 0.4028〜 0.544リットル |
|||
デニト (墓の容積計算) |
1立法キュービット | ||||
不明 | メレト | 図形の高さ? |
*黒い太文字が、基本になっていると思われる単位。
■古代エジプトの数概念について
古代エジプトには小数が存在しない。数字はすべて分数で表される。
分数は2/3を除き全て分子が1であり、1/2、1/3、1/4… しかない。小数点以下を伴う数字は、これらの分数の和として記述される。たとえば2/5という数は、1/3
+ 1/15 となる。
■「ホルスの目」分数について
ホルスの目分数とは、ホルスの目を部分ごとに分解して得られる数字。
1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64 を指します。全部足すと1/64足りませんが、そこはトト神が魔法で補い、「全部足して1ですから!!
完全なる数字ですからっ」ということに無理くりなっているらしい。…魔法は計算式に書けないぞエジプト人。
単位は主に以下の文献から合成したですよ。
*リンド数字パピルス 普及版 平田 寛 監修/吉成 薫 訳
*ヒエログリフ入門 吉成薫 弥呂久出版
*大英博物館 古代エジプト百科事典 イアン・ショー&ポール・ニコルソン 原書房
*ファラオの形象 エジプト建築調査ノート 西本真一 淡交社
※チェベト、ネビュについては詳細な資料を持っていないため、正確な数値は不明。1/6キュービットだと10.4cmにはならない。