主な称号
緑なるもの、炎の偉大なるもの、パピルスの女
主な信仰
●豊穣女神、王権の守護者
エジプトをナイル上流・下流に二分したとき、メンフィス(現在の首都カイロ付近)より下流にあたる「下エジプト」の守護女神。大河が肥沃な土壌を海に盛り上げて作ったデルタ地帯の守護者。かつては、戦の女神ネイトの役目だったこの地域の守護の役を受け継いだ。
上エジプトの守護女神である
ネクベトと対を成す女神で、基本的にコブラの姿で描かれる。ファラオの左右に位置し、王権を支える象徴的な守護女神である。
ウアジェトの名は「緑」を意味する「ウアジュ」という言葉から来ており、名前を直訳すると「緑の女」。デルタ地帯の豊かな緑を表している。
その名のとおり豊穣を支援するが、コブラとしては悪しきものを退ける手厳しい守護者であり、審判者、ラーの保護者、炎の化身でもある。(※コブラが火と結び付けられるのは、ヘビの毒が体を巡ると火のように熱く感じるからと考えられる。)
ちなみに、「パピルス」は下エジプトを象徴する植物。対して、「スゲ」または「アシ」が上エジプトを象徴する。
王名の守護者でもあり、ファラオが名乗る「上下エジプト(二国)の王」の側に、ネクベト女神とともにその姿を描かれる。
●守り手の獅子
基本的にコブラの姿で表されることの多いウアジェトだが、セクメト女神と習合した獅子女神の姿で表されることもある。
エジプト神話の神様たちの姿は、地上における姿というか、人間に見える姿のような扱いで、性質に応じて姿を変えることがあるようだ。右写真の獅子の姿をしたウアジェトの像は、坐っている椅子の側面ではコブラの頭をもつ女性として描かれている。また、「ホルス神の守護者」と呼びかけられている。
神話
・ウアジェトは、イシスと習合し、ホルスの守護者とされた。
・子供時代のホルスを河の中洲に隠すイシスの伝説の中でのウアジェトは、慈悲深い母親であるとともに、デルタ地帯を魔術で守る、強力な守護者として描かれる。
聖域
発祥は下エジプトのブート(ブト)の町。
ペル・ウアジェトとも呼ばれる。
レトポリス、ペル・ラメセス、メンフィスなど。
また、現在のエル=フセイニヤ村にある「テル・ファラウン(テル・ナバシャ、テル・バダウイとも呼ばれる)」は、彼女の聖地の跡だ。古代にはイメトという名で呼ばれたこの町は、現在は神殿の輪郭以外のものは残っていない。
DATA
・所有色―緑
・所有元素―、火
・参加ユニット―上下エジプト守護<ネクベト、ウアジェト>
・同一化―ムト、セクメト、イシス
・神聖動物―主にコブラ。場合によってはエジプトマングース、獅子、ジャコウネズミ
・装備品―下エジプトの冠(赤冠)