主な称号
王の盾なるもの、勝利の女神、ラーの娘、天空の女主人
主な信仰
アスタルテや
バアルとともにエジプトに輸入されたシリア系の神。紀元前2千年半ば頃から信仰が知られており、レバント付近にあった古代都市ウガリット(現在名エル・シャムラ)付近が出身地と考えられている。似た属性を持つ女神アスタルテ同様、メソポタミアの女神イシュタルの影響を受けたとされ、ある意味でアスタルテの分身的存在。「豊穣と戦い」という属性も丸ごと被っている。
信仰が確認される最初期は中王国時代のため、他のアジアニックの神々よりはエジプト入りが早かったかもしれない。
多くの神々と同じく、病気や獣から人々を守る守護者としての力を持が、基本的に戦いの神なので、その守護の力は王や武人といった限られた人により強く求められた。民衆に広く崇められる神様というよりは、王権の守護者だったようだ。シリア系の神様らしく、戦車を駆る姿で描かれることもある。
●ウガリット神話におけるアナト
最高神エルの娘で、バアルの姉妹にして妻。死の神モートに殺されたバアルを蘇らせ交わる。豊穣の神であるバアルの死と再生は、エジプトにおける豊穣神オシリスの死と再生と同じ構図を持った穀物神の神話、あるいは一年の季節の巡りを暗喩するもので、その意味ではアナトの役割はエジプトのイシスと同じものなのだが、なぜかイシスとの繋がりは薄い。
●カナアン神話におけるアナト
アクハトという青年の持つ弓を奪おうとして、彼を謀殺する神話が残されている。ただしこの神話は完全ではなく、殺されて死体をばら撒かれたアクハトを姉が探しにいくところまでで途切れている。あるいは、殺されたアクハトが蘇るという再生復活の神話だったのかもしれない。
●エジプト神話におけるアナト
性的な側面が薄れてしまったアスタルテと逆に、母性的な面が残されたため、ハトホルと同一視されることがあった。その流れから「ラーの娘」という称号も持つ。
また、同郷のバアル神やレシェプ神の妻とされ、そのバアルやレシェプが戦いの神という同じ属性を持っていたエジプトの
セト神と同一視されたことから、セトの妻とされることもあった。
性的な側面から、生殖の神であるミン神と同僚関係を結ぶこともあった。 ステラは
カデシュの項を参照。
●ローマ時代におけるアナト
ローマで知られた女神アタルガティスは、エジプトに輸入される以前のシリアでのアナトとアスタルテが合体したもの。
神話
・シリアでの夫はバアルだが、エジプトではバアルが同じく嵐の神であるセトと同一視されたことから、アスタルテとともにセトの伴侶とされた。
・ラメセス二世お気に入り。自分の馬にビントアナト(アナトの娘)という名前をつけた。
・神話上の設定は
美女です。
聖域
固有の神殿は無いが、タニスのムト神殿の中に自身の領域を持っていた
DATA
・所有色―黄
・所有元素―なし
・参加ユニット―戦闘的家族<バアル=セト、アナト、アスタルテ>、生殖・生命?<ミン、レシェプ、アナト>
・同一化―ハトホル、ムト
・神聖動物―
・装備品―盾、斧、槍、時々お花