中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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コンドヴィーラームールス


「お恨みするはずだったのですが、とてもできません。
どうか、今日、この日が称えられますように。」


 一般のアーサー王伝説では「ブランシェフルール」。名前が長いのはどちらも同じ。(笑)
 育ち方といい、ボケ方といい、”天然”のパルチヴァールの奥さんなのだから、苦労は必至。勝手に旅に出て、4年も5年も帰ってこなくて、その間、貞節を守りつつひとりで出産・育児していたのですから、すばらしい奥さんです。ちょっと北欧神話のシギュンを思い出します。旦那はロキ(悪魔チック)に比べれば、果てしなく天使に近いお人なのですが。

 彼女の苦労は、意に沿わぬ相手、クラーミデーに言い寄られていたときにはじまる。
 そこへ折りよく通りかかったパルチヴァールに支援を求めるため、己の体を危険にさらしても、と意を決して臨んだ戦いの場で、相手は全くしらんぷり。と、いうのも、女の最強の戦闘服である白絹の肌着を身に付けて、寝室に忍んで行ったというのにも関わらず、素で「寒くないですか? ベッドに入ります?」…とか、尋ねているのだから。
 若いなあ。
 まだまだ若い。
 コンドヴィーラームールスのほうも、体を犠牲にする、色香でつる、なんて考えつつも、まだ乙女の身なので不安でいっぱい。ここまで無関心に返されると、かえって心地よかったのではあるまいか。女体に全く興味がない、と、いうより、そのテの楽しみを一切知らない男性。しかし、とてつもなく強い騎士である。
 今までなかったタイプの男性だったんでしょうね。
 それでもって、クラーミデーより美人だし。
 敵軍を退けて戻ってきた彼に、コンドヴィーラームスが飛びついて熱烈に愛を語ったのも分かる気がします。

 ただ、娘さん。
 妖精族の男には、本気で惚れちゃいけません。

 妖精族の血がブレンドされた家系の男性は、美しく強いけれど気まぐれで、一つところに落ち着かず、旅をしたがるクセがあります。夢見がちなので、堅実な生活は望めません。愛してはくれますが、たぶん置いてけぼりをくらいます。待っても待っても待ちぼうけ。中には、パルチヴァールの父・ガハムレトのように、旅先で命を落として、そのまんま帰ってこない、なんて人も。
 ここの家系の人と結婚するときは、待ちぼうけくらわされるのを覚悟したほうが良いでしょう。(笑)
 待てないあなたは最初から諦めたほうが無難です。

 コンドヴィーラームールス、苦労したでしょうね。ええ。苦労したんでしょう。
 そんな、とっても忍耐強い彼女は、まさしく「貞節」と「妻の鑑」。


 




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