フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第47章
Seitsemäsviidettä runo


 放った災いを二度までも退けられ、カレワラの楽しげな宴の音を聞くつけ、ポホヨラの魔女ロウヒはメチャメチャ怒り狂ってました。
 「おのれ…おのれワイナミョイネン。このままで済むとは思うなよ!」
魔女はぎょろりと辺りを睨み据えます。そこには丁度、熊祭りの賑やかさにつられた太陽と月とが、空からふよふよ降りてくるところでした。

 チャンス?!
 魔女はどびしゅっ! と手を伸ばし(怖ぇえ!)ガッキと太陽&月を掴んだァ!

 え、熱くないのかって?
 北欧の太陽は冷たいんですよ…。なんせ、あんまし日差しの強くないところなんで。地位もあまり高くはありませぬ。魔女に捕まえられてしまうくらいですからね。
 捕らえられた哀れな太陽と月は、岩戸に幽閉。日本の神話だと太陽は自分から隠れてますが、カレワラ世界では魔女に魔法で閉じ込められてしまうのです。
 「いいかい、お前たち。お前たちは囚人なんだ。あたしが放してやるまで、そこから出ることは出来ないよ!」
 ロウヒのおっそろしい呪詛に、太陽も月も震え上がり、それ以上何もすることは出来ません。空は真っ暗、光もなく、昼も夜も漆黒の闇です。
 これに困ったのは人間たちだけではありません。
 天の神ウッコもまた、仕事にならなくって困っていました。しょうがないので、太陽と月を探しに行きます。自分で行くあたり、何ていうか…その、ジイちゃん…。高位の神なのにさ…。

 でも見つけられない。

 ほらほら、やっぱジイちゃんにはムリなんだって。若いモンに任せときゃいいのに、もー。そんな天界から降りてきちゃって、地上でギックリ腰にでもなったら、どうするつもりよ?^^;


 太陽と月とが見つからないので、ウッコはもういっぺん世界に光を作りなおそうと、剣から散る火花で火を起こし、天地を創造した自然の乙女のひとりに揺すらせ、火を燃やしたてようとします。
 ところが、これがいけなかった。
 ジイちゃん手がぷるぷるしちゃってるモンだから、ちょっとした弾みで火がポロリと地上に落ちて、大火災発生です。それって隕石と同じなんじゃないの? っていうかもっとちゃんと管理しないでいいのか? とか、イロイロと理不尽なものを感じますが…
 とにかく、この火が大変なことをやらかしてくれたんです。
 森を焼き、村を焼き、ずっと遠くにある時から見えているというくらいの大きな火災。突然の神様テロに人間は右往左往。その明るさに気付いたワイナミョイネンも、イルマリネンに確かめに行こうと声をかけました。もしかすると、いなくなった太陽や月かもしれないから、と。

 と、そこへ、くだんの自然の乙女がふわりと降りてきました。
 「あら…あなたたちは誰? どこへ行こうというの。」
ワイナミョイネンは答えます。
 「わしはワイナミョイネン、こっちはイルマリネン。わしらは、あの光を確かめに行こうと思うんじゃが。そんで、あんたさんは?」
 「わたくしは自然の乙女、女性の中で最年長のものです。あなたたち、あの火のもとへ行くのはお止めなさい。あれは、至高の神ウッコのもとから落ちたもの。すでに炎は村を焼き、冥界へ行くさだめの子らを焼き殺したわ。」

 うっわー、神様のミスで焼き殺されたのか、ミスを素直に認めるのは結構だが全く悪びれた様子がないし! それって可哀想すぎるじゃん、―――なぁんて基本的なことは、ワイナミョイネンは言いませんね…。(苦笑)

 「そんで、その炎はいずこへ?」
 「そのまんま、村を幾つも焼きながら走っていって、湖に落ちたわよ。」
 「なら、湖にあるんかい。」
 「いいえ。それを湖にいたウグイが飲み込んでしまったのよ。そして、腹を壊したわ。」
 「火は、そのウグイの腹ん中かね?」
 「そのあとさらに、大きな魚がウグイを飲み込んで…。」
 うーん、よく観察していますね、自然の乙女。そんだけじーっと見てるんなら、炎を回収すればいいだろうに、単なる監視者たるのも神のつとめですかね。

 長い長い話を聞き終えたワイナミョイネン、「よっしゃア! 釣りじゃ!」なんて言い出して、天の神の火を飲み込んだ魚を求めザンブラと海に漕ぎ出します。
 もちろん、カレワラの人々も一緒。
 「引けー! 網を引くのじゃ! 魚を捕らえーい」
と、村中、総出で海さらい。けれど、お目当ての魚は見つからないまま。
 手元は暗いし、急なことで網が足りなかったせいもあります。

 村人がっかり。けれど、ジジイだけは諦めていません。しずかな暮らしをさまだけられた魚たちが波間でブツブツ言っているのを聞き、ワイナミョイネンはむっとしてこう言い返したのでした。
 「わしらは必ず戻って来る。強くなっての。いつか…そう、いつかきっと、諦めない限り、わしらは魚を捕まえられるのじゃ!」
このセリフ、半分くらいは脚色ですが。(笑)



{この章での名文句☆}

男たちは死んではいない、カレワの民は倒れはしない。
一人死んでも二人が生まれる、
より良い追い込み棒を持ち


ジジイ仕込みの不屈の民たち。それが今のフィンランド人の祖先ですかあ^^;


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