フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第4章
Neljäs runo

 ヨウカハイネンの妹、アイノはかなり落ち込んでいました。
 なんせ若い身空でジジイの嫁になるわけです。しかも好きじゃない相手。
 両親は、「あんないい人、他にいないじゃないのよ」と言いますが(偉大なる魔法使いなんで)、どんな言葉にも彼女は暗く沈んだまま。
 まー、その気持ちはわからんでもないですね。

 そんなある日、彼女は家の近所で、やって来たワイナミョイネンとばったりハチ合わせ。浮かれたジジイは早速口説きにかかるのですが、自分の夫となるべき人物をナマで見てしまったアイノは、かなりショックを受けたようです。
 持ってたものすべて放り出して、泣きながら家へ帰り、母親にこのことを訴えました。

 ところが彼女の母上は、「何言ってるのよ。裏の蔵へ行って一番いいドレスを出しておいで。あんたの婿になる人が来てるんだから。」と、取り合ってくれません。政略結婚当たり前のこの時代、ワイナミョイネンのような有名人の家族になれば、鼻高々。この結婚はいい話だと思っていたようです。
 アイノは大ショック。唯一の理解者となってくれるはずの母が、そのようなことを言うなんて。「お母さんの…、お母さんのバカ!!」
 いくら、そこらへんのビンボな男と結婚するよりいい暮らしが出来るにしても、相手がジジイでは許容範囲を越えていたのでしょう。しかも、「カレワラ」としてまとめられる以前の原作では、アイノには将来を約束した恋人がいた、とのこと。そりゃイヤでしょうよ。恋人と別れてジジイと結婚。

 泣き暮らした数日ののち、意を決した彼女は、母の言うとおり、蔵からドレスを出し、着飾りますが、家には戻らず、そのまま家出してしまいます。「老いぼれの嫁になるくらいなら、海の中にいるほうがマシよ。」
 そう言って、浜辺に着いた彼女は服を脱ぎ捨て、波間に身を投じてしまいました。(これが水浴び中の事故だったのか、それとも自殺だったのかは、ハッキリしない。)

 死に際の彼女からの言伝を受け取り、最終的にこの知らせを家族のもとへ届けたのは、ヨーロッパでは不吉の伝達者とされているウサギ。
 ウサギからの知らせを受けた、アイノの家族や恋人は歎き悲しみ、その哀歌とともに、この章は幕を閉じるのでした。


{この章での名文句☆}

「どうぞ哀れな母親よ、長く郭公を聞くでない!
 春の郭公を耳にすると、少しずつ年が過ぎ、
わずかずつ身が衰えて、
体全体が崩れてゆく。」



娘アイノを失った母親の歎きのシーン。
春が来て郭公の鳴く声を聞くと悲しみを思い出し、
新たな年の始まりとともに自分の身が老いてゆくという詩的な表現。
春に郭公というあたり、日本とは違った風情を感じますね。



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