■フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA |
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序章-第1章
Ensimmäinen runo
そんなバラバラの状態では話にならない。と、いうことで、「つなぎ」に当たる部分は創作して埋めていったわけです。
もちろん、カレワラの物語自体、存在しなかったものをリョンロット氏が創作したわけですから。「これから起こること」を暗示する序章部分は、カレワラの作者であるリョンロット氏以外には書くことが出来なかったことになります。
ただ、すべてが彼の空想というわけではなく、この序章部分には、とても重要なモチーフがたくさん含まれています。
カレワラ世界での「世界の創造」では、母なる大気の乙女イルマタルは、波にゆすられ、風に愛撫されて海に落ち、海の母として妊娠したままで長い年月を波間に彷徨います。この時、一羽の鳥が彼女の膝の上に巣をつくり、卵を産むのですが、鳥が卵を温めるのがあまりに熱かったので、イルマタルは身じろぎし、卵は海に落ちて割れてしまいます。
その卵のカケラから始まったのが、この世界。
ここに含まれているのは、(1)処女懐胎 (2)風(自然の力)により妊娠 (3)子供がなかなか生まれない (4)卵から世界が誕生する …と、いったモチーフ。いずれも、世界に広く見られるモチーフであると同時に、最後の(4)などは、エストニアなど地域限定でよく見られるもののようです。この地方限定の神話が、フィンランドにも伝わって来ていたのでしょう。
ただ、編纂者リョンロット氏はキリスト教圏のかたですから、(1)や(2)は聖母マリアを想像しながら加筆・修正したものかもしれない、とのことです。
卵のカケラから始まった、この世界。
こうして世界は誕生し、妊娠から30年目にしてワイナミョイネンはようやく母なるイルマタルの中から外へ出て、出来上がったばかりの大地に足を踏み出しました―――。
ところで、イルマタルは最初に存在した女性ではありません。なんせ、ワイナミョイネンが上陸した時点で、すでに世界には神々がいたわけですから。イルマタル自身、おそらくは、それら神族の1人だっただろうことが予想されます。序章は世界のはじまりからではなく、主人公・ワイナミョイネンの「はじまり」から語られているのです。
つまり、この物語は、ワイナミョイネンが誕生してから、この世界を去るまでを語るワイナミョイネン’s ヒストリーな物語なんです。
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