第11話 雲国斎とまつ
丸出しのチンポコが 風に揺れてゆらゆら、
はみ出した陰毛が 風にたなびいてゆらゆら
風邪をひきそうになった時も 決してしまおうとはしない
電車の中でも映画館でも 露出するのが大好きな
僕のお父さん
新曲「僕のお父さん」より
「どうやって上半身を手に入れたんですか?」。
むしゃぶろうは雲国斎に聞いた。
「買ったんです」
雲国斎は答えた。
「買ったんですか?」。
「はい」
「そうですか」。
むしゃぶろうは険しい表情をしながらうなずいた。
「作ったんですか?」。
「いえ、買ったんです」。
「既製品が売ってるんですか?」
「はい」。
何故ここで雲国斎が急にかしこまった口調になったか説明しよう。
意味はない。意味はないが、ふと私の(作者)脳裏にある光景が浮かんだ。それは昭和50年第一次長島政権のおり、新人の定岡と長島監督が以下のような会話をしたのをテレビで観た記憶だ。
背広姿の二人は多摩川の土手で座り込んで話をしていた。
「定岡、洋服は初めてか?」(洋服とは二人の間では背広の事を言う)。
「.....はい」。
「そうか初めてか。作ったのか?」。
「......いえ、.....買ったんです」。
「作ったんだろ?」。
「いえ、.....買ったんです」。
「そうか、買ったのか」。
この何だか訳の分からない会話に当時小学生であった私は感動した。二人の馬鹿さ加減に感動した。そして、この物語には全く関係ないけど、どうしてもその会話を読者の皆さんにも披露したくなってしまったのだ。
ねえ、味のあるいい会話だと思わない。
と言うわけで、さて物語に戻ろうか。
奥の障子が開き、すらりと背の高い女性がお茶を運んできた。
「いらっしゃいまし」。
「あ、お邪魔してます。奥様ですか?」。
「さよう。妻じゃ。まさしく妻!」。
「まつと申します」
美人である。写真で見るよりもさらにきれいだ。胸はそれほどあるように見えないが、すらりと伸びた手や足には気品が漂っていたし、クリっとした目も松嶋奈々子のように美しい。鼻と口の間にある縦皺も松嶋奈々子のようにはっきりしていて、ほっぺたも松嶋奈々子のようにぽっちゃりしていた。
「お怪我をなさっているようですね」。
そうだった。むしゃぶろうはウサマ・ビンラディンと名乗る男にしこたま顔面をひっぱたかれて怪我をしているのであった。
「はい、面目ない。今度会う時はもうちょっとましな顔でありたいものですな」。
「は〜、ポックンポックン」。
彼女の相槌はシュールであった。そのシュールな魅力にむしゃぶろうは耐え難い衝動を覚えた。下半身が反応した。
「あ、今チンポコが立ちましたね」。
しっかり者のまつはむしゃぶろうの変化に気づき言った。見破られたむしゃぶろうは開き直り、悪い癖が出た。
「オッパイ揉んでも良いですか?」 。
と、言うが早いか、むしゃぶろうはまつに襲いかかった。そして、胸を鷲づかみにした。
「あ〜、ポックンポックン」。
訳の分からぬ展開に雲国斎は唖然として声も出ない。
「男根入れても良いですか?」。
「ああ、駄目。入れちゃ駄目」。
「いいじゃないですか。減るもんじゃないんだから。ねえ、先生」。
「あ、ああ、そうじゃな。減るもんではないわな」。
「いいっすよねえ」。
「ああ、悪かない。悪かないよ」。
雲国斎はあまりの急展開に動揺したのか、むしゃぶろうの挿入を認めた。
ズッコン、ズッコン、ズッコン、ズッコン.....。ドピュッ。 むしゃぶろう初めての精通
であった。すっかりサッパリしたむしゃぶろうは、あらためて雲国斎に聞いた。
「上半身はどうやって手に入れたんですか?」。
「う〜ん。なんか、答える気がしなくなった。いやな気分だ」。
当たり前だ。目の前で自分の女房を犯されたのだから。
「そこを何とか。答えてくださいよ」。
「う〜ん」。
「買ったんですか?」。
「ああ」。
「売ってるんですか」。
「ええ」。
「どこで?」。
「う〜ん、答えたくない気分。今、それどころじゃない気分」。
「そう言わずに、教えてくださいよ。興味あるんだから」。
まつは俯いて泣いていた。
とんでもない事をしておきながら厚顔にも質問を続けるむしゃぶろうに対して、雲国斎は殺意を持った。雲国斎は台所に走った。
「あ、お構いなく。お腹はそれほど減ったませんので。食べ物や飲み物は結構」。
むしゃぶろうは彼なりに気を遣って言った。ドタバタと音を立てながら雲国斎が戻ってきた。手には出刃包丁があった。
「あ、刺し身ですか? もうお気遣いなく。さほどお腹は減ったませんので」。
「ぶっ殺してやる」
「なんか言った?」。
「お前を殺すと言ったんだ」
雲国斎は持っていた出刃包丁を振りかざし、むしゃぶろうめがけて、
「うりゃ〜」。
むしゃぶろう、素早く体を翻し、
「あんた、気違いか?。何故俺を殺そうとする」。
「ふんがあ〜」。
雲国斎は目を血走らせながら出刃包丁を振り下ろす。
「こりゃ、やばい」。
むしゃぶろうは逃げた。雲国斎は追ってきた。しかし、むしゃぶろうは足が速い。1分もすれば雲国斎の姿はむしゃぶろうの視界から消えた。 またむしゃぶろうは一人になってしまった。父、母、ビンラディン、そして雲国斎。彼の命を付け狙う者は増えていく。はたしてむしゃぶろうの運命は。彼の味方になる者は今後出現するのだろうか?。
つづく
|