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<特定商取引法について>
8.特定商取引法における通信販売について
司法書士 小楠展央
今号は、通信販売についてご紹介します。なお、前号までお話してきた訪問販売と同様、通信販売にも、商品を購入したり、指定権利を購入したり、サービスの提供を受けたり、と様々なケースが想定されます
が、商品を購入するケースを例にとってお話を進めていきます。
1 通信販売とは
みなさんは、通信販売という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。では、特定商取引法は、どのような取引を「通信販売」と考えているのか、ということからお話していきましょう。
特定商取引法が考える通信販売について、商品の販売を例にとって大まかにお話しすると、商品の購入を希望する人が、お店に行ったり、販売員に直接会ったりするのではなく、一定の通信手段を用いて、購入の申込を行い、その申込を受けて販売業者が商品を販売する、という取引を「通信販売」と考えています。語弊を恐れずにいえば、お客さんが販売店に通信手段を使って商品の購入申込をすること、その点に着目して「通信」販売と定めている、と言うこともできるでしょう。
また、申込の際に用いる一定の通信手段について、特定商取引法は概ね次のとおり定めています。
<特定商取引法が想定する通信手段の概要>
@ 郵便を送る。信書便を送る。
A 電話をかける。FAXを送る。パソコンや携帯電話等でメールする。
B 電報を送る。
C 販売業者の預金口座にお金を振り込む。
したがって、次のような取引は、特定商取引法が考える「通信販売」に該当すると言ってよさそうです。
<例>
・ 新聞の折込広告を見て、電話をかけて商品を注文し、購入する取引
・ カタログを見て、はがきを送って商品を注文し、購入する取引
・ 放映されていたテレビショッピングを見て、電話をかけて商品を注文し、
購入する取引
・ インターネット上のホームページを見て、パソコンを使ってメールを送って
商品を注文し、購入する取引
・ チラシについていた振込用紙を使ってお金を送金し、商品を購入する取引
2 通信販売で注意すること
上述のような通信販売に該当する取引をした場合に最も注意すべきことの一つとして、どのようなときに契約を解除することが認められるか、ということがあります。
前号までお話してきた訪問販売の場合には、「不意打ち」などの特徴的問題を踏まえて、特定商取引法がクーリング・オフ(申込の撤回・契約の解除)を定めていました。そして、このクーリング・オフは、仮に売買の当事者間において納得のうえ排除しようとしても、あるいは購入者が「クーリング・オフの権利は不要です。」と言っても、その適用を排除することが認められないほど、法律によって厳しく定められています。
一方、通信販売の場合には、訪問販売ほどに厳しく定められていません。つまり、通信販売の場合にも特定商取引法に解除に関する定めはありますが、その定めに優先して売買の当事者間の約束が適用されることになっています。そして、特定商取引法は、「申込後の解除は認めない」という当事者間の約束も有効だと考えています。
通信販売の場合にも、購入した後になって「やっぱりやめたい。」「イメージしたものと違う。」など、契約を解除したくなることがあると思います。しかし、訪問販売と比べ、通信販売には「不意打ち」性が少ないと考えられているのでしょう。そのような理由から、通信販売では、訪問販売ほど厳格に定められていない、と考えてよいでしょう。
以上のことから、通信販売の場合には、まず、どのようなときに申し込んだ契約を解除できるのか、ということを、広告の紙面や画面の表示等を通じてよく確認しましょう。そして、契約の解除に関する定めが何も表示されていなければ、売買の当事者間に約束がありませんから、特定商取引法の定めに従って、商品が届いた日を1日目として8日以内であれば契約を解除することができる、ということになります。
なお、特定商取引法の定めに従って契約を解除した場合、届いた商品を販売業者に送り返す費用は、原則として購入者の負担となります。
(以下、次号に続く。)
7. 特定商取引法における訪問販売について〜クーリング・オフについてC〜 へ
9. 通信販売に関連する電子メール公告の規制について へ
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