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<特定商取引法について>
7.特定商取引法における訪問販売について〜クーリング・オフについてC〜
司法書士 小楠展央
前号から引き続き、今号も訪問販売におけるクーリング・オフについてご紹介します。
1 前号まで
書面でクーリング・オフすること、その書面の記載例についてお話してきました。
2 クーリング・オフした後
今号では、クーリング・オフした後、注意したほうがよい点についてお話します。
(1)手元にある商品は?
クーリング・オフをした後、手元に商品がある場合には、販売業者に引き取ってもらいます。この引取りについては、次の2点に注意するとよいでしょう。
まず、商品の引取りは、販売業者の負担で行います。もしも宅配便等でこちらから販売業者に送付するのであれば、着払いで送付すればよいと思います。
次に、手元に商品がある一方、代金を既に支払ってしまった場合には、できる限り代金の返金と商品の返還を同時に行いましょう。現実には、販売業者が遠隔地にいたりして、それらを同時に行うことは難しいかもしれません。その場合には、代金の返金を確認してから商品を返還したり、代金返金と商品返還に関する合意書を取り交わしたりしてもよいでしょう。
とにかく、販売業者と協議して、互いに返金・返還の義務を適切かつ確実に果たすよう注意しましょう。
(2)販売業者から請求されたら?
筆者は、以前、こんな相談を受けたことがあります。それは、適切にクーリング・オフをした後、販売業者から電話があり、「クーリング・オフは認めるが、開封したとのことなので、商品を返してもらっても再販売できない。代金の半額を負担してもらえないか。」と言われたというものでした。
確かに、特定商取引法は、化粧品など一定の商品を消耗品と定義し、その消耗品を使ってしまっていたら、その使用消費分については購入者が負担すべきと考えています。
しかし、それはあくまで法律が定めた一部の商品についての話であって、それ以外の商品について、仮に購入者が開封したり、使っていたりしていたとしても、販売業者は購入者に対して損害賠償を求めることは認められていません。
したがって、販売業者から上述のような請求を受けても、すぐには応じず、専門家に購入した商品が特定商取引法の定める消耗品かどうか確認してもらう等してから、販売業者に返事をするようにしましょう。
(3)「クーリング・オフなんて言わないで!」
また、筆者は、こんな相談も受けたことがあります。それは、クーリング・オフをした後に、やはり販売業者から電話があり、「クーリング・オフなんて言わないで。」「頼むからそのまま買ったことにして。」などと言われ、つい情にほだされ、「クーリング・オフをやめる。」と言ってしまった、というものでした。
そう言ったのに相談に来るのは、やはり買ったことに何か納得いかない、あるいは迷いのようなものがあるからでしょう。
さて、このような場合、筆者はこんな風に考えます。まず、一度適切にクーリング・オフ、すなわち契約を解除してしまった以上、その解除を撤回して再度売買契約を復活させるのはちょっと難しいと思います。売買契約をクーリング・オフした以上、それでその話は終わった、語弊を恐れずに言い換えると、クーリング・オフの撤回はできないと考えます。
そうすると、販売業者と購入者との間の法律関係はどうなったと考えるべきでしょうか。いろいろな考え方があるかもしれません。「クーリング・オフを妨害した」とも考えられます。ちなみに、筆者は、新たな売買の申し込みと承諾があったと考えます。
その結果、上述の相談のケースでは電話勧誘販売による新たな売買契約なので、販売業者は再び特定商取引法が定める事項を記載した書面を購入者に交付しなければならないでしょうし、購入者はその書面を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフができる、ということになるでしょうか。
(以下、次号に続く。)
6. 特定商取引法における訪問販売について〜クーリング・オフについてB〜 へ
8. 特定商取引法における通信販売について〜 へ
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