ニネヴェ図書館の科学史漫画その2の余談
平方根の”根”とは一体なんだ?
平方という言葉は数学では2乗の数を表す。そして平方は英語では square すなわち正方形のことであった。正方形の面積は同じ辺同士を掛け合わせた数であり、この正方形が2乗を意味するとは、図形で計算を考えた古代ギリシャの名残りと理解できる。しかし、それなら平方根は平方辺と呼ぶべきではないだろうか? 一体、なぜ平方根は”根”と言うのだろう?
備考1:ニネヴェが言う”あたしたちは(平方根を)4のアムが2と言ってた”というこの証言。実はこれ、誤用である。メソポタミア文明とその数学を作ったシュメール人は平方根を表現する時
4 エ 2 アム イブシ (4に2が対応するのである)
と言っていた。アムはシュメール語で ”である” という意味になる。しかし最後のシュメール人王朝が前21世紀に滅びてしまうと、長い時の間にシュメール語を正確に理解する人はじょじょに消えていった。そして紀元前5〜6世紀にはアムが平方根を指し示す言葉であると勘違いされ、使われていたという。ニネヴェの時代(紀元前7世紀)はどうだったのかよく分からないが、時代がほとんど同じなので、この漫画ではニネヴェも以上の誤用を用いたことにしている(メソポタミアにおける平方根の表現は「バビロニアの数学」 室井 2000 の24ページや105ページを参考のこと)。
備考2:計算の表現に”根”という言葉を用いたアラブの数学者とは9世紀のアル=フワーリズミー(彼の名前はアルゴリズムの語源になった)。