120 お前には恥というものがないのか。 という穏やかでない言葉から始まったシリウスの話に、ルーピンは日頃の習慣で項垂れて御説拝聴仕りかけたのだが、よくよく詳細を聞いてみると「恥らっているところや、顔を赤らめているところや、適宜身体の一部分を隠そうと動揺しているところを見せてもよかろう」という趣旨の話だったので、彼は下がっていた眉を元の位置に戻して椅子に深く腰掛けた。 「私達のしていることはすべて合意の上で行っているし、私が困るような行為は申し訳ないけれど最初から断っている。その上で恥らったりする方が私は恥ずかしいと思うのだけど?」 首を斜めに傾けたままルーピンのした反論に、シリウスは深いため息をつく。 「それでも時々は恥らってみたりするのが生活の潤いというか、大人の楽しみ方ではないのか?」 そのシリウスの口調があまりに道理を諭す調子だったので、ルーピンは友人の為に自分が出来る事を、首を斜めにした状態のままで考えた。彼の思考がどう転がるのか、いつもの事ながら予測できないシリウスは固唾を呑んで成り行きを見守る。 「ああ、確かに」 ルーピンは何かに思い至ったのか突如として笑顔になった。 「君は時々恥らっているけどとても可愛い。そうか、言われてみれば大人の楽しみ方だね」 そのまったく悪気のない、ひたすら真面目な彼の表情にシリウスの拳が1度だけ震える。 「ああいう風にすればいいのかな。つまりはその、君をお手本に?」 シリウスは涙ぐまないように自制しながら、「自分の名誉の為に言わせてもらうなら、決して俺は大人の楽しみ方で恥ずかしがっている訳ではなく、リーマスお前が人を恥ずかしがらせる天賦の才を持っているのだ」とそれだけを辛うじて弁明した。 「俺の方こそ以後お前をお手本にさせてもらう」と付け加える事が、彼に出来る精一杯の抵抗だった。 まぞ でもなければ先生の恋人などやっとれん という話。 ……いや違うかな。違うといいね。 しかし サドの人には 空気と人の心を読む力、 反射神経、サービス精神、独創性 あらゆるものが求められるので 誰にでも出来る役割ではない。 先生には無理だ かといって、 繊細な感受性や 一般の人の征服欲を煽るような何かを 持っているわけでもないので マゾにも向いてない。 シリウスは両方に適正があると思う。 独りSM男。 (さみしい……) 短くてくだらないおまけ 御覧になりたい方だけドウゾ。 2006/01/19 |